コロナ禍を契機に業界再編・集約化が加速
フィットネスクラブ・スポーツジム業界は、「コロナ禍」を経て、①大企業によるノンコア事業の売却、②専業・隣接業界企業による事業集約、③異業種との融合、④24時間ジム・低価格業態へのシフト、という4つの流れを巻き込む形で、M&Aによる業界再編・集約化が進んでいる。以下、2021年以降に実行された象徴的なアライアンス事例9例を確認する。

①フィットイージーが24時間フィットネスクラブ「Fit&GO」の事業譲受(2021年2月)
概要
フィットイージー㈱(東証PRM212A、24時間ジム)は、24時間フィットネスクラブ「Fit&GO」の事業を㈱ファミリーマートより譲受。
狙い
Fit&GOはファミリーマートが展開する24時間フィットネスクラブ(全5店舗)。フィットイージーは、Fit&GOを買収することで、「顔パス認証」等最先端のシステムを活用したフィットイージーのフィットネスクラブノウハウを導入、展開地域をより広範囲に広げていくことを目指す。
②ナガセがスポーツクラブのブリヂストンスポーツアリーナ㈱の株式取得(子会社化)(2022年3月)
概要
㈱ナガセ(東証STD9733、大学・中学受験塾、水泳・ジム等)は、スポーツクラブ・スイミングスクール、スポーツ・文化教室、テニススクール、新体操教室、ジュニアサッカー教室等を運営するブリヂストンスポーツアリーナ㈱の株式を㈱ブリヂストン(東証PRM5108)より取得し子会社化。
狙い
ブリヂストンスポーツアリーナは、九州を中心にスイミングスクールを中心としたスポーツ施設の運営を主な事業としており、「スポーツを通し地域社会の幸せな生活づくりのお手伝い」という方針のもと、地域に密着した堅実な運営を通じて、高い顧客満足度を得ている。ナガセは、ブリヂストンスポーツアリーナを買収することで、ナガセの子会社である㈱イトマンスイミングスクールとブリヂストンスポーツアリーナの知見、ノウハウ、生徒指導面、募集施策面、校舎運営面で相互に融合、有効に活用することで、各地域において、よりブランド力、顧客満足度を高めた更なる発展を目指す。
③センコーグループホールディングスがフィットネスクラブの㈱オージースポーツの株式取得(子会社化)(2022年7月)
概要
センコーグループホールディングス㈱(東証PRM9069、物流一括受託)は、フィットネスクラブ・テニスクラブ等の経営およびスポーツ施設の運営受託等を手掛ける㈱オージースポーツの株式を大阪ガス㈱(東証PRM9532)より取得し子会社化。
狙い
オージースポーツは、1981年の設立以降、「コ・ス・パ」、「FITBASE 24」、「30peak」といったブランド名での直営フィットネスクラブ・スイミングスクール・テニスクラブ、行政等から受託している運動施設等、2022年4月現在で関西圏を中心に62施設を運営するとともに、ヘルスケア関連事業を展開している。センコーグループホールディングスは、オージースポーツを買収することで、センコーグループホールディングスの子会社である㈱ブルーアースジャパン(山梨、東京でフィットネスクラブ20施設を展開)を含めたフィットネス事業のエリア拡大や、介護事業と連携した新サービスの開発など、健康を領域とする事業の拡充で、人々の生活を支援するライフサポート事業の更なる成長を目指す。
④Fast Fitness Japanが24時間フィットネスジム「エニタイムフィットネス」の事業譲受(2022年9月)
概要
㈱Fast Fitness Japan(東証PRM7092(上場廃止)、24時間年中無休ジム)は、24時間フィットネスジム「エニタイムフィットネス」の事業を㈱ドゥワークより譲受。
狙い
ドゥワークは、Fast Fitness Japanと同様に、サブ・フランチャイジーの1社としてエニタイムフィットネスの店舗(FC店)を運営している(2021年12月末の店舗数は35店舗)。Fast Fitness Japanは、同33店舗を買収することで、エニタイムフィットネス事業(2021年12月末の店舗数は162 店舗、直営店)の更なる事業拡大を図る。
⑤カヤックがスポーツ総合サービスの㈱スクールパートナーの株式取得(子会社化)(2023年8月)
概要
㈱カヤック(東証GRT3904、ネット広告受託制作、eスポーツ大会の企画・運営等)は、スポーツ総合サービス事業を手掛ける㈱スクールパートナーの株式を取得し子会社化。
狙い
スクールパートナーは、埼玉西武ライオンズベースボールスクールをはじめとした幼児・小学生向けスクールから高齢者にターゲットを絞ったフィットネススクールまで、幅広い年代に向けてスポーツスクールを展開している。また、海外においても、ベトナム、シンガポールなど東南アジアを中心に独自の指導スタイルを展開している。更に、IT技術を駆使したスポーツソリューションや運用方法のコンサルティングなど、多岐にわたって事業を拡大、スポーツ総合サービス企業としてスポーツに軸足を置きながら「咲かせようスマイルつなげようスポーツで」を合言葉に、「日本発、世界に通用するスポーツ企業」を目指している。カヤックは、カヤックは、スクールパートナーを買収することで、既存のスポーツ領域のみならず、動画作成や配信、まんが、カードゲームなど、子どもたちの多様な関心領域やコンテンツをテーマに教育サービスの開発、提供を目指す。
⑥ルネサンスが会員制スポーツクラブの㈱東急スポーツオアシスの株式取得(子会社化)(2024年3月)
概要
㈱ルネサンス(東証PRM2378、総合スポーツクラブ)は、会員制スポーツクラブを手掛ける㈱東急スポーツオアシスの株式を東急不動産ホールディングス㈱(東証PRM3289)より取得し子会社化。
狙い
東急スポーツオアシスは、1985年に東急不動産㈱の子会社として設立され、首都圏及び関西圏を中心に32店舗(2023年1月末現在)を展開する会員制フィットネスクラブ「東急スポーツオアシス」の運営を中核として業容を拡大。近年では、社会全体の健康に対する関心の高まりを受け、企業ミッションとして「Well-being First!」を掲げ、フィットネスクラブの運営に留まらないウェルビーイング総合カンパニーを目指し、フィットネス関連商品の開発及び販売、アプリ等のデジタルツールを通じたエクササイズ機会の提供等の新たなサービスにより、健康に関心のあるあらゆる顧客を対象とした幅広い事業展開を進めている。ルネサンスは、東急スポーツオアシスを買収することで、両社合算で国内に直営約140 店舗の規模を有するフィットネス業界最大規模の企業グループを構築、両社のリソースやノウハウを相互活用することで事業の再成長を目指す。
⑦セントラルスポーツがフィットネスクラブのRefco㈱の株式取得(子会社化)(2024年8月)
概要
セントラルスポーツ㈱(東証PRM4801、総合スポーツクラブ)は、フィットネスクラブを手掛けるRefco㈱の株式を取得し子会社化。
狙い
Refcoは、香川、兵庫、岡山、熊本、大分の各県で「フィットネスクラブレフコ」5店舗を運営している。セントラルスポーツは、Refcoを買収することで、事業基盤の更なる拡大を図る。
⑧ナガセがスポーツ施設の㈱ダンロップスポーツウェルネスの株式取得(子会社化)(2024年12月)
概要
㈱ナガセ(東証STD9733、大学・中学受験塾、水泳・ジム等)は、スポーツ施設、ゴルフ練習場、テニスコート、ゴルフスクール、テニススクール等の経営並びにスポーツ機器及びスポーツ用品の製造、加工、修理及び販売またはそれらの受託等を手掛ける㈱ダンロップスポーツウェルネスの株式を住友ゴム工業㈱(東証PRM5110)より取得し子会社化。
狙い
ダンロップスポーツウェルネスは、「サービス事業を通じてスポーツといっしょに生きるライフスタイルを提案し、顧客の心と体の健康の増進に貢献する」という理念の下、関東圏を中心に、フィットネスジムの運営を主な事業としており、ジュニアからシニアまでの幅広い年代の会員層を有するとともに、各種インストラクターが提供する高品質のサービスを展開するほか、スイミングスクールとしてもジュニア日本代表選手を輩出する名門クラブとしての顔を持ち合わせている。ナガセは、ダンロップスポーツウェルネスを買収することで、ナガセの子会社である㈱イトマンスイミングスクールとダンロップスポーツウェルネスの知見、ノウハウ、生徒指導面、募集施策面、校舎運営面で相互に融合、有効に活用することで、各地域において、よりブランド力、顧客満足度を高めた更なる発展を目指す。
⑨ルネサンスが総合スポーツクラブ「アトリオドゥーエNex」等の事業譲受(2026年7月)
概要
㈱ルネサンス(東証PRM2378、総合スポーツクラブ)は、総合スポーツクラブ「アトリオドゥーエNext」等を東急㈱(東証PRM9005)子会社の東急スポーツシステム㈱より譲受。
狙い
東急スポーツシステムは、東急グループにおけるスポーツ事業を担う会社として、フィットネス、ゴルフ、テニス、スイミング、フットボール、指定管理・運営受託、その他法人・自治体での健康支援などの事業を展開。1994年には総合フィットネス事業をスタートし、「アトリオ」ブランドとして東急沿線の生活価値向上に貢献している。ルネサンスは、東急スポーツシステムが運営する総合スポーツクラブ5施設、小型業態2施設、スイミングスクール1施設を買収することで、効率的な事業規模拡大と顧客基盤の強化を実現、東急沿線の地域顧客の健康づくり及び地域の活性化への貢献を目指す。
所感
フィットネスクラブ・スポーツジム業界は、店舗を増やす産業から、会員・顧客接点を統合して「健康・スポーツ・教育・ウェルネス産業」へ進化する過渡期にある。特に、ナガセ、ルネサンス、Fast Fitness Japanの3社は、M&Aを単なる店舗数増加ではなく、それぞれ「教育」、「総合ウェルネス」、「24時間ジム」という自社の強みをさらに強化する手段として使っている点が非常に興味深い。フィットネスクラブ・スポーツジム業界は、事業価値そのものが低下しているのではなく、「誰が所有・運営するのが最適なのか」が大きく問われるフェーズに突入している。そして、フィットネスクラブ・スポーツジム業界は、今後、介護・医療・教育・不動産・コンビニといった異業種を巻き込んで、一段も二段も、更なる進化を遂げる可能性がある。フィットネスクラブ・スポーツジム業界各社の今後のM&A戦略から目が離せない。
以上
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- [②課題解決] フィットネスクラブ・スポーツジム業界の経営課題と戦略的挑戦(セクターチャレンジ)
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- [⑤企業価値] フィットネスクラブ・スポーツジム業界の企業価値の源泉と差別化ポイント(セクターバリュー)

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