日創プロニティ|M&A巧者の買収事例と成長戦略(2025年)

日創プロニティ㈱(東証STD3440)のM&A

①壹会の子会社化(2022年)
概要

建築金物・金属製建具工事を手掛ける㈱壹会(2021年12月期売上高705百万円、営業利益▲43百万円)を子会社化。

狙い

壹会は、各種建築物の内外装材として用いられる金属パネル、ルーバーなどの設計・施工を主業とする建築金物・金属製建具工事業者であり、設計施工能力や品質管理能力の高さを強みとしている。また、壹会の主力工事分野と日創プロニティが展開する金属パネル、内外装材などの製品分野は、同一のサプライチェーン上に位置づけられる。日創プロニティは、壹会を買収することで、業容を拡大、相乗効果の創出を目指す。

②ワタナベテクノスの子会社化(2023年)
概要

防音BOX・消音ダクト等の設計、製造、販売を手掛ける㈱ワタナベテクノス(2022年7月期売上高1,041百万円、営業利益120百万円)を子会社化。

狙い

ワタナベテクノスは、防音BOX・消音ダクト等の設計、製造、販売を行っている。防音BOX・消音ダクトの設計に強みを有していることに加え、優良取引先が多く、近年、データセンター等の発電機向け防音BOX・消音ダクトの案件増加に伴い業容が拡大している。日創プロニティは、ワタナベテクノスを買収することで、日創プロニティが得意とする板加工や形鋼加工に加え、新しく筐体の製作を強化することで、加工力を増強する。また、筐体の製作を強化することで、より最終製品に近い分野まで一貫生産できる体制を構築する。更に、製造面で相互に協力しグループ内製化を推進することでコスト競争力を強化、調達面でグループ間の材料・資材の調達を強化、営業面でグループの顧客基盤を共有することで相互に幅広い市場への対応を目指す。

③ニッタイ工業の子会社化(2023年)
概要

タイル製造・販売を手掛けるニッタイ工業㈱(2022年3月期売上高4,443百万円、営業利益52百万円)を子会社化。

狙い

ニッタイ工業は、タイルの製造・販売及び卸売を行う国内有数の老舗企業。日創プロニティは、ニッタイ工業を買収することで、営業協力を推進、これまで以上に幅広い市場対応が可能となり事業基盤の強化を図る。

④天神製作所の子会社化(2023年)
概要

畜産排泄物処理プラントの設計、製造、施工、メンテナンスを手掛ける㈱天神製作所(2022年9月期売上高571百万円、営業利益12百万円)を子会社化。

狙い

天神製作所は、畜産排泄物から堆肥を作る撹拌機や、堆肥をペレット状に成形するペレットマシーンなどの排泄物処理プラントを設計、製造、施工するメーカー。日創プロニティは、天神製作所を買収することで、相互の販売支援を進める他、グループ内製化、購買先や外注先の共有化を推進することで、コスト競争力を強化する。

⑤Japonlineの事業譲受(2023年)
概要

システム受託開発を手掛ける㈱Japonline(資本金7百万円)の事業譲受。

狙い

Japonline は、Webシステム開発を中心としたシステム受託開発を主業として展開しており、2021年には中小企業庁選出の「はばたく中小企業・小規模事業者300 社」に選ばれるなど、特にEC関連の開発力・技術力に定評がある。日創プロニティは、Japonlineの事業譲受により、Japonlineの強みである開発力・技術力やノウハウを活かし、ものづくりWebサービス「カナエテ」を早期に軌道に乗せることを目指す。

⑥マルトクの子会社化(2024年)
概要

内装用木材・集成材の加工・販売を手掛ける㈱マルトク(2023年8月期売上高600百万円、営業利益7百万円)を子会社化。

狙い

マルトクは、主に内装用木材・集成材を加工、販売。内装用木材・集成材の卸売を行う地域顧客に大切にされる老舗としての側面を保ちつつ、新しい取り組みとして、自社ECサイトを立ち上げ、木材を顧客指定のオーダーサイズにカットして出荷、直接販売する新しい販売網を確立し、独自の販売力・競争力を有している。日創プロニティは、マルトクを買収することで、カナエテが主体となって取り組むものづくりWebサービス「カナエテ」と、マルトクが有するECチャネルとの相互送客やアイテム数の共有化等の相乗効果を目指す。中長期的には、マルトクが熟知している木材という加工素材を新たに加えることによって、金属、ゴム、タイルといった、日創プロニティが既に有している素材との組み合わせが生まれ、グループを跨いだ新しい製品の企画開発を実施し、住宅市場・建設建材市場等へ展開することを目指す。

⑦シキファニチアの子会社化(2024年)
概要

洋家具の製造および販売を手掛けるシキファニチア㈱(資本金32百万円)を子会社化。

狙い

シキファニチアは、「SIKI」のブランド名にて家庭用、業務用のダイニング・チェアー、テーブル等を自社工場にて一貫して製造しているメーカー。日創プロニティは、シキファニチアを買収することで、カナエテが運営するものづくりWebサービス「カナエテ」を通じてシキファニチアが製作する家具を掲載、また、法人顧客向けには、内外装建材やリフォーム関連市場に明るいニッタイ工業やマルトクといったグループ企業と連携し、各種内装材、造作材、コントラクト家具等の空間デザインに関する提案力をグループとして向上させる。更に、製造面では、繊細なデザインを実現する高い加工技術を擁するシキファニチアの加工力をグループ内に取り入れる。

⑧大鳳の子会社化(2024年)
概要

ウレタン素材のパッキン・シール材の販売を手掛ける大鳳㈱(2024年3月期売上高2,715百万円、営業利益251百万円)を子会社化。

狙い

大鳳は、自動車、家電製品、住宅設備、土木などの各産業分野においてウレタン素材のパッキンやシール材を提供、技術志向の強い提案型営業を得意としており、盤石な営業基盤と高い競争力を有している。日創プロニティは、大鳳を買収することで、子会社の吾嬬ゴム工業㈱との相乗効果の創出を図る。

日創プロニティのM&Aの特徴・傾向

事業領域の選定: 自社の強みや知見を活かせる素材・加工分野を中心にM&Aを行い、新規事業として必要と判断される領域も検討対象としている。また、特色ある企業の選定に力を入れ、市場環境の変化に対応でき、特定の分野で強みを持つ企業を買収することで、グループ全体の競争力強化を図っている。

相乗効果:日創プロニティグループ全体を俯瞰する形で、かつ、中長期的な視点の元にグループ間の相乗効果を創出する姿勢を有しており、幅広い事業領域での成長を視野に入れたM&Aに取り組んでいる。

所感

日創プロニティのM&Aは、日創プロニティが定めた明確なM&A方針「日創M&Aセブンルール」の元に進められている。即ち、1.理解できる事業領域、2.特色ある企業、3.再生企業には取り組まない、4.スピードをもって判断する、5.現場・面談を重視する、6.グループとのシナジーを期待、7.プロパー人財を積極登用、の7つの方針に則って進められている。日創プロニティは、今後も積極的なM&Aを進め、更なる事業拡大と市場シェアの拡大を図ることが予想される。様々な素材、加工技術を有する製造業や、その周辺事業を中心に事業領域を拡大し、「創る」力で未来に挑む企業グループ、日創プロニティの今後のM&A戦略と取り組みが大いに注目される。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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