概要
2025年1~3月期のM&A・アライアンス「創造度」ランキングTOP5を発表する。(選定は三澤公認会計士事務所選定委員。対象は上場企業が当該期間にプレスリリースしたM&A・アライアンス案件。)
第5位
ベルテクスコーポレーションがコンクリート製品の㈱IHI建材工業の株式取得(子会社化)
㈱ベルテクスコーポレーション(東証STD5290)は、トンネル・橋梁・プラント等のコンクリート製品を中心とした土木・建築資材の設計・開発・製造販売等を手掛ける㈱IHI建材工業(2024年3月期純資産3,679百万円、総資産13,844百万円、売上高12,613百万円、営業利益▲10百万円)の株式を取得し子会社化。豪雨対策において、ベルテクスコーポレーションは雨水排出用の管きょや地下式雨水貯留施設の技術に優位性を確立しているが、そこにIHI建材工業の保有する合成セグメントをはじめとするセグメント製品群が加わることにより、地下トンネル式調節池や地下河川事業への参画が可能になる。
第4位
三菱UFJフィナンシャル・グループが家賃債務保証の全保連㈱の株式取得(子会社化)
㈱三菱UFJフィナンシャル・グループ(東証PRM8306)は、家賃債務保証及び賃料管理リスクヘッジ業務を手掛ける全保連㈱(東証STD5845、2024年3月期純資産4,759百万円、総資産21,793百万円、売上高24,510百万円、営業利益2,224百万円)の株式を取得し子会社化。全保連の提供する家賃債務保証サービスに、三菱UFJフィナンシャル・グループの三菱UFJニコスが発行・提供するクレジットカード払い、三菱UFJ銀行・三菱UFJファクターが提供する多様な決済手段を活用することで、家賃債務保証サービス利用者にとって利便性・利得性のあるサービス提供を図る。
第3位
データセクションがAIクラスターの英国CUDO Ventures Ltd.と業務提携
データセクション㈱(東証GRT3905)は、AIクラスター、データセンターインフラ、マーケットプレイスの提供・管理を手掛ける英国CUDO Ventures Ltd.(資本金2,032米ドル)と業務提携。データセクションは、NVIDIA認定のAIパートナーとしてAIクラウドスタックとデータセンターインフラに関する高い技術力を有するCUDO Venturesと業務提携することで、両社のAIデータセンター事業の一体化を進め、AIデータセンターの潜在的なプロジェクトに対して、共同参画する。
第2位
NJSが上下水道アウトソーシングのCDCアクアサービス㈱の株式取得(子会社化)
㈱NJS(東証PRM2325)は、上下水道事業に係るアウトソーシングサービス、上下水道関連ソフトウェア(料金管理、各種申請、ポータルサービス等)の開発・保守等を手掛けるCDCアクアサービス㈱(2024年3月期純資産22百万円、総資産72百万円、売上高15百万円、営業利益4百万円)の株式を取得し子会社化。NJSのコンサルティング及びソフトウェアサービスと、CDCアクアサービスの上下水道事業に関する料金管理・各種申請・コールセンター等のカスタマーサービスを融合、更なるカスタマー価値の創出と地域の上下水道事業の進展を推進する。
第1位
エーザイが睡眠・生活習慣ビッグデータ解析のエコナビスタ㈱の株式取得(子会社化)
エーザイ㈱(東証PRM4523)は、睡眠・生活習慣ビッグデータ解析による健康状態の推移を予測するAIアルゴリズム開発、睡眠解析技術とセンサフュージョン技術を駆使した見守りシステム提供、自社開発によるソフトウェア・ハードウェアに独自のAIアルゴリズムを実装することで実現した各種ソリューション提供を手掛けるエコナビスタ㈱(東証GRT5585、2024年10月期純資産3,272百万円、総資産3,486百万円、売上高1,351百万円、営業利益469百万円)の株式を取得し子会社化。エコナビスタの「ライフリズムナビ+Dr.」を通じて蓄積したデータとエーザイが蓄積したデータを活用することで、MCI・認知症の課題解決に繋がる新たなソリューションの開発や、睡眠データを活用した不眠症・てんかん等に貢献できるソリューションの開発等、複数の疾患領域で新たなサービスの提供を図ると共に、次世代の創薬と新たな治療体系の考案に活かす。
2025年1~3月期のM&A・アライアンス「創造度」ランキングTOP5
- 第1位:エーザイが睡眠・生活習慣ビッグデータ解析のエコナビスタ㈱の株式取得(子会社化)
- 第2位:NJSが上下水道アウトソーシングのCDCアクアサービス㈱の株式取得(子会社化)
- 第3位:データセクションがAIクラスターの英国CUDO Ventures Ltd.と業務提携
- 第4位:三菱UFJフィナンシャル・グループが家賃債務保証の全保連㈱の株式取得(子会社化)
- 第5位:ベルテクスコーポレーションがコンクリート製品の㈱IHI建材工業の株式取得(子会社化)
総評
2025年1~3月期のM&A・アライアンス「創造度」ランキングは、戦略的かつバリューチェーンを意識した革新的な取り組みが目立った。第1位:エーザイ。製薬メーカーが、ビッグデータ解析等を手掛けるソフトウェア企業を傘下に収めビジネスモデルの高度化を目指す、極めて意欲的な取り組み。第2位:NJS。上下水道に関するコンサルティング企業が、ビジネスモデルを拡張し、圧倒的な差別化と高い参入障壁を築く。第3位:データセクション。AIデータセンターをハイパースケーラーと同様に運用可能とするための、スピード感のあるアライアンス。第4位:三菱UFJフィナンシャル・グループ。三菱UFJフィナンシャル・グループの総力を結集し、債務保証領域の高度化及び圧倒的な利便性の向上を狙う。第5位:ベルテクスコーポレーション。技術及び製品群の連携が緻密に計算された、戦略的アライアンス。各社の取り組みは、業界内における競争優位を目指す取り組みであると共に、産業界全体にニューウェーブをもたらす可能性がある。上記M&A・アライアンスを受け、同業他社の動向も要注目。各社の今後の動向と更なるM&A・アライアンス施策から目が離せない。
以上