日本郵船が海運のNSユナイテッド海運㈱に対する公開買付けの開始を発表

概要

 日本郵船㈱(東証PRM9101)は、2026年7月31日、海運業及び海運附帯事業を手掛けるNSユナイテッド海運㈱(東証PRM9110、2026年3月期純資産187,200百万円、総資産296,361百万円、売上高229,784百万円、営業利益20,529百万円)を非公開化することを目的とする一連の取引の一環として、NSユナイテッド海運の普通株式を公開買付けにより取得することを決定したと発表した。

狙い

 NSユナイテッド海運は、外航海運事業、内航海運事業、その他の事業を展開している。日本郵船は、NSユナイテッド海運を買収することで、両社の企業価値最大化に向けて、以下のシナジーの実現を目指す。

  • 規模の拡大による配船効率の改善とコストの低減:NSユナイテッド海運は、グループ運航船舶 211 隻(2026年3月現在)を擁し、世界各地をつなぐ輸送ネットワークを有するグローバルなドライバルク船社。更に前中期経営計画期間において、高コスト船舶の売却や定期用船契約の期限前解約等の構造改革を断行するとともに、40万重量トン型鉄鉱石運搬船を含む新造船を中心とした船隊整備を進めてきたほか、現中期経営計画でも既存事業の船舶のリプレース投資を計画するなど、コスト競争力と高品質な船隊の維持・拡大に継続して注力してきた。こうしたNSユナイテッド海運の船隊と日本郵船のドライバルク事業における運航船舶 414 隻(2026年3月現在)からなる船隊を組み合わせることにより、より大きな船隊規模を前提とした強固な輸送ネットワークを構築することで、これまでの事業活動に加えて、配船最適化や、燃料や船舶、資金等の調達面でのスケールメリットを追求する。具体的には、①両社の運航船舶・荷主ポートフォリオ全体を考慮した最適配船による稼働効率向上、②グローバルな輸送ネットワーク強化による顧客提案力の向上を通じた更なる案件獲得、③燃料・船用品・修繕・保険等の一括調達・条件見直し・横断的な費用削減活動によるコスト圧縮、④信用力向上による資金調達条件の改善等を目指す。また、現時点で具体的に決定している事項はないものの、両社のコーポレート部門について、一部シェアードサービス化することによるコストメリットの追求も検討する。
  • 脱炭素化に伴う新たな輸送需要の獲得:NSユナイテッド海運は、長年にわたり鉄鋼原料をはじめとする幅広い貨物の海上輸送を手掛けてきた実績を通じて、顧客ニーズに柔軟に対応し得る高度な専門性及び高品質な海上輸送サービスを提供する能力を確立するとともに、顧客及び社会からの要請が強まっている脱炭素化に対応すべく、環境対応投資を積極的に進めている。また、2030年に目指す姿として掲げる「クリーンでサステナブルな海上輸送における必要不可欠な存在」の実現に向け、メタノール二元燃料船をはじめとする環境対応投資の推進に加え、アンモニア、水素等の次世代エネルギー分野における輸送事業の拡大を進めている。具体的には、「次世代燃料獲得プロジェクトチーム」の立ち上げや、アンモニア積載可能な液化石油ガス(LPG)二元燃料VLGC(Very Large Gas Carrier)の建造契約の締結等、脱炭素化及び次世代エネルギー分野に向けた施策を着実に実行している。一方、日本郵船においても、社会の脱炭素化の要請や変化する市場の要望に応えるべく、環境対応投資を積極的に推進している。また、新規事業の一つとして水素・アンモニアバリューチェーンへの参画を掲げ、エネルギー事業で蓄積してきた輸送に関する知見・ノウハウを活用しながら、次世代エネルギー分野での事業拡大を目指している。今後、還元鉄、スクラップ、液化 CO2、アンモニア、水素等の脱炭素関連貨物輸送分野においては、市場の成長が見込まれる一方で、高度な技術力、輸送ノウハウ、専用アセット及び顧客基盤が競争力の源泉になる。このような分野において、NSユナイテッド海運及び日本郵船がそれぞれ培ってきた技術力、輸送ノウハウ、アセット及び顧客基盤を結集することで、①荷主に対する協調営業を通じた案件数・案件パイプラインの増加、②単独では取り組みが困難な大型案件や他社とのパートナーシップへの参画可能性の向上、③船舶管理の共通化を通じた保守・運用コストの低減等を目指す。また、環境対応については、メタノール二元燃料船やアンモニア二元燃料船等の次世代船に関する両社の技術知見・ノウハウを結集し、相互に活用することで、投資効率の向上及び環境対応需要の取り込み加速を図る。具体的には、①次世代燃料船の共同開発や仕様・技術的知見の集約による初期投資額の圧縮、②環境対応を重視する荷主案件の受注増加等が想定されます。環境対応投資は、業界全体としても新しいテーマであり、多額の投資を要する領域であることから、両社の知見を集約することで、より効率的かつ確実に次世代船への投資を推進する。
  • 内航事業を起点とした物流基盤・次世代海運基盤の強化:NSユナイテッド海運は、鉄鋼原料、エネルギー、資源等の輸送において長年にわたり実績を積み重ねてきたことに加え、内航事業においても国内トップクラスの事業基盤を有している。特に内航事業は、日本国内の基幹産業を支える重要な物流インフラであり、NSユナイテッド海運は、顧客との長期的な取引関係を通じて、高い輸送品質、安定的なオペレーション能力及び顧客ニーズに即応する運航ノウハウを蓄積してきた。一方、日本郵船は、外航輸送を中心とする海上輸送ネットワークに加え、陸上輸送、倉庫管理等を含む幅広い物流機能を有しており、国内外における顧客の多様な物流ニーズに対応。日本郵船の外航輸送・陸上輸送・倉庫管理等の物流機能と、NSユナイテッド海運の内航事業基盤を融合することで、外航輸送から内航輸送、国内配送、保管に至るまで、顧客のサプライチェーン全体を一体的に支える総合物流サービスの提供力を一層強化する。また、NSユナイテッド海運が内航事業を通じて培ってきた顧客との信頼関係や現場に根差した運航ノウハウは、既存顧客との関係強化及び新規需要の獲得に資する重要な経営資源となる。更に、内航事業は、次世代技術の実装及び海技人材育成の観点からも重要な役割を果たす。内航船は、国内の安定した運航環境の下で、自律運航船、環境対応船、省エネルギー技術、デジタル技術等を段階的に導入・検証する場として活用しやすく、将来的な外航船への展開を見据えた実証・ノウハウ蓄積のプラットフォームとなり得る。また、内航事業における運航管理、船舶管理、安全管理等の現場経験は、海技人材の育成及び技能承継にも有用であり、日本郵船の船舶運航力及び安全管理能力の向上に寄与する。
  • 人材の相互融通による海外拠点含む人員最適配置と成長に向けた人材確保の促進:近年、海運業界において船員不足は深刻な問題となっており、今後も同傾向が継続すると想定される中、持続的な輸送の実現に加え、今後の新規事業分野での成長を確かなものとするためにも、船員の安定確保と効果的な活用の重要性は一層高まっている。また、インドや東南アジア等の経済成長に伴う需要地の変化に対応するためには、迅速かつ効率的な海外拠点の整備も求められている。このような事業環境の下、両社における船員を含めた人材基盤を相互補完的に活用することで、国内外拠点を含む最適配置の実現及び成長領域に必要な人材確保の強化を図ることを想定すると同時に、両社人材のスキルと運営効率の向上を目指す。
所感

 日本郵船は、2023年3月に中期経営計画「Sail Green, Drive Transformations 2026 – A
Passion for Planetary Wellbeing -」を策定し、2030年に向け新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画に基づき事業を進めている。本件M&Aは、日本郵船の競争力強化に資する戦略的M&Aであり、日本郵船の更なる飛躍が期待される。

  • 挑戦度☆☆☆
  • 戦略度☆☆☆
  • 期待度☆☆☆

NSユナイテッド海運株式会社株式(証券コード:9110)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ

以上

M&A・株価算定で全国対応の三澤公認会計士事務所

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