ロボットシステムインテグレーター業界と戦略的M&A「エンジニアの確保がカギ」

小規模事業者からの脱却なるか

 ロボットシステムインテグレーター企業(ロボットSIer企業)は、その多くがエンジニア数10人以下の小規模事業者とみられ、ロボットメーカーとエンドユーザーの狭間にあってバーゲニングパワーを確保しづらい状況にあるとみられる。ロボットSIer企業が高収益を確保し更なる飛躍を遂げるためには、ロボットSIer企業同士の連携や企業統合などのM&Aを通じて、企業規模を一定程度以上にまで引き上げ、受注を平準化し、内製化率を高め、ノウハウを横展開し、優秀なエンジニアに支持される総合力と経営体力と知名度を確保できるかどうかが今後の飛躍のための試金石となる。

ロボット産業は拡大が見込まれる

 日本ロボット工業会のロボット産業需給動向調査(図表1)によると、リーマンショック以後、日本のロボット産業の市場規模は右肩上がりに拡大している。足元では、中国において投資低迷も見られるが、欧米を中心に人件費高騰・労働力不足を背景とした生産の高度化・自動化投資が底堅く推移、日本、韓国におけるEV関連投資、半導体関連投資などの需要も高まりをみせており、日本のロボット産業は中期的にも好調を持続するものとみられる。日本のロボット産業は、高い品質管理水準に加え、新興国の人件費高騰などから、相対的にも国際競争力を有している状況とみられ、今後もCAGR二桁以上の成長が期待される。

 

 ロボット産業は、これまでの主力であった自動車業界や電機業界に加え、三品産業(食品業界・化粧品業界・医薬品業界)などのより幅広い製造分野、多種多様で非定型なプロセスを含むサービス分野、中小企業などにまで、その裾野を広げつつある。特に、中小のロボットSIer企業においては、相対的に三品産業からの受注割合が高いとみられ、同産業の生産性向上などに大きく貢献していると考えられる。

ロボットSIer企業の最大の課題「人材不足」

 ロボットSIer企業の最大の課題は、「人材不足」にある。特に、中小のロボットSIer企業は、採用に課題を抱え、慢性的な人材不足の状況にあるとみられる。経済産業省・NEDOが2013年7月に公表した「ロボット産業市場動向調査」(図表2)では、ロボット市場は2025年には5.3兆円に達すると予想されていたが、足元の市場規模は1兆円規模に留まっている。この要因の一つに、ロボットSIer企業の多くが、人材不足などを背景に、エンドユーザーからの仕事の依頼に応えきれないなど、ビジネス機会を逸失している状況が挙げられる。 

 

 中小のロボットSIer企業にとって、指導者の確保や教育プログラムの拡充など育成基盤を整えることは容易ではないが、今後、競争力のあるロボットエンジニアを継続的に増やしていくためには、キャリアパスの整備とエンジニアの早期育成体制の確立が望まれる。また、ロボットSIer業界全体としても、優秀な人材を確保するために、ロボットSIerの社会的認知及び地位向上、エンジニアの待遇改善、スキル・実績などの見える化、規模拡大などによるバーゲニングパワー(価格交渉力)確保などが望まれる。

ロボットSIer企業の利益率改善への課題

 ロボットSIer企業の多くは、受注ごとに設計するオーダーメイド型ビジネスモデルを採用している。そのため、納品した同じモデルを横展開して量産体制とすることとは相性が悪く、投資回収に課題を抱えている。また、経済産業省と日本ロボット工業会による「ロボットSI導入プロセス標準(RIPS)」の策定・導入が進むも、多くの案件で手戻りや再構築などの仕様変更が発生しており、ロボットSIer企業の利益圧迫要因の一つとなっている。中小のロボットSIer企業においては、同業他社やロボットメーカー、装置メーカーなどとの連携などを通じた受注機会・横展開力の強化、エンドユーザーの複雑な要求に応え得るPMクラス人材の確保などを図ることで、非効率で不安定な事業体制からの脱却が重要な課題となる。

 ロボットSIer企業の専門性や提供する品質に対し、対価が見合わないという課題も存在する。特に、設計終了フェーズにおいて検収・請求できる商習慣がなく、設計・デザインに対して対価が支払われないことを課題として掲げるロボットSIer企業も多い模様。中小のロボットSIer企業においては、エンドユーザーの分散やサービスの多様化などを図ることで赤字受注などを回避すると共に、同業他社などと連携するなどして、エンドユーザーに対して一定程度の啓蒙活動を展開する必要がある。

M&Aを駆使して企業規模を拡大し交渉力を確保

 ロボットSIer企業は、その多くがエンジニア数10人以下の小規模事業者とみられ、現状においては、ロボットメーカーとエンドユーザーの狭間にあってバーゲニングパワーを確保しづらい状況にあるとみられる。企業成長の鍵を握るエンジニアの採用・育成についても、限られた人材リソースや単発的な受注機会では一定の限界がある。ロボット産業においてロボットSIer企業は欠かすことのできない重要な存在であるが、ロボットSIer企業が高収益を確保し更なる飛躍を遂げるためには、社会にロボットSIerの価値を認知・浸透させる、規格の標準化を図る、商慣習を見直すなどの取り組みを、業界を挙げて進める必要がある。また、個々のロボットSIer企業にとっては、ロボットSIer企業同士の連携や企業統合などのM&Aを通じて、企業規模を一定程度以上にまで引き上げ、受注を平準化し、内製化率を高め、ノウハウを横展開し、優秀なエンジニアに支持される総合力と経営体力と知名度を確保できるかどうかが今後の飛躍のための試金石となる。 

 ロボットSIer業界は大きな転換点にある。ロボットSIer業界におけるM&Aの取り組みは、今後加速することが予想される。

以上

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