ロボットシステムインテグレーター業界の企業価値の源泉と差別化ポイント

高い「企業価値」を有する企業とは

ロボットシステムインテグレーター(ロボットSIer)業界は、「労働集約的な町工場型SIer」と「知識集約的なテック型SIer」への二極化が急速に進んでいる。無論、M&Aの世界において圧倒的な高バリュエーションがつくのは、後者。彼らはロボットを「鉄の塊(ハード)」としてではなく、「ソフトウェアを動かすためのインターフェース」として捉えている。ロボットSIerは、受託開発比率を下げ、パッケージ販売や自社ソフトを強化、保守・ストック比率を高めることで、資本効率を劇的に向上させることが可能。以下、ロボットSIer業界の企業価値の源泉と差別化ポイントを確認する。

①標準化・パッケージ化能力

ロボットSIer業界で最も資本効率が高く、高い企業価値評価が期待できるのが、一品一様(オーダーメイド)の受託型から脱却し、「標準化・パッケージ化」に成功している企業やビジネスモデル。案件ごとゼロから設計するロボットSIerは、労働集約型から抜け出せず、エンジニアの稼働時間が売上の天井になる。一方で、特定工程(例えば、パレタイジング、溶接、外観検査等)のシステムをパッケージ化(モジュール化)し、共通のハード・ソフトを横展開できる企業は、仕掛工数が劇的に減るため利益率が爆発的に向上する。「この工程なら、当社の標準パッケージを少し調整するだけで2ヶ月で稼働できます」と提案できるようなロボットSIerは、競合より短納期かつ高粗利で案件を回すことが可能であり、高い企業価値評価が期待できる。

②独自のソフトウェア・知財(IP)の保有

ロボットSIerは、ロボットアームなどのハードはメーカーから仕入れるため、ハードのインテグレーションだけでは価格競争に巻き込まれやすい。一方で、独自のAI画像認識アルゴリズム、高度な3Dビジョン(バラ積みピッキング技術等)、独自の制御ソフト等、競合が真似できないデジタル資産(知財)を持つ企業は、模倣困難性が高く、M&Aの世界では技術プレミアムとしてのれん価値が付きやすい。即ち、ハードウェアの仕入れマージンではなく、自社ソフトのライセンス料や開発費で高い付加価値(粗利率)を稼ぎ出す企業は、高い企業価値評価が期待できる。

③上流工程のコンサルティング・グランドデザイン力

単に指示された通りのロボットラインを組むだけでなく、顧客の工場全体のDXや生産性向上のグランドデザインを描ける能力も有望。超上流の「構想設計」から参画できるため、価格交渉権を握りやすく、競合との相見積もりを回避できる。顧客の設備投資の予算自体をコントロールする立場になり得る点も強み。「ロボット設置業者」ではなく「経営課題を解決するパートナー」として位置づけられるため、案件単価と粗利率が格段に向上し、高い企業価値評価が期待できる。

④顧客基盤の質と保守・アフターサービス

自動車や半導体、食品・医薬品(三品産業)等、投資余力があり継続的に自動化を進める大手企業との強固なリレーションがあるか、そして、納入後の保守ビジネスを獲得できているかもポイント。M&Aの世界において、売上の再現性・予測可能性は非常に重視される。景気の波に左右されやすい設備投資(フロー型)のみならず、納入したロボットのメンテナンス、定期アップデート、リプレイス(更新)需要を囲い込み、ストック収入の比率が高い企業は、将来キャッシュフローが安定しているとみなされ、高い企業価値評価が期待できる。

⑤属人性を排除した組織的開発体制

優秀なカリスマ創業者や一部の天才エンジニアだけに依存していない、組織的開発体制を有する企業も魅力。M&Aの買い手が最も恐れるのは、「買収後にキーマンが辞めてしまい、案件が回らなくなること」。設計プロセス、プログラミング、ノウハウがライブラリ化・標準化され、組織として教育・開発できる体制が整っているロボットSIerは、事業継続性のリスクが低いと評価される。属人性が排除できている企業は、人員増強による売上拡大(スケールアップ)も容易なため、高い企業価値評価が期待できる。

以上

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