概要
日本の主要な靴企業である、㈱エービーシー・マート(東証PRM2670、2025年2月期純資産369,747百万円、総資産額418,725百万円、売上高372,202百万円、営業利益62,550百万円)、㈱チヨダ(東証PRM8185、2025年2月期純資産額52,031百万円、総資産額79,076百万円、売上高91,835百万円、営業利益2,193百万円)、㈱リーガルコーポレーション(東証STD7938、2025年3月期純資産額12,758百万円、総資産額26,269百万円、売上高23,558百万円、営業利益397百万円)、ヒラキ㈱(東証STD3059、2025年3月期純資産額6,564百万円、総資産額15,070百万円、売上高12,960百万円、営業利益▲3百万円)、東邦レマック㈱(東証STD7422、2024年12月期純資産額4,669百万円、総資産額6,105百万円、売上高4,757百万円、営業利益6百万円)の5社は、それぞれ異なる領域で独自の経営戦略を展開している。5社の靴事業に関する戦略をまとめ、共通点と相違点を整理する。
エービーシー・マートの経営戦略
靴の専門小売チェーン。国内外で「ABC-MART」店舗を展開し、スニーカーやカジュアルシューズを中心に販売。ナイキなど有名ブランドの販売に加え、自社企画ブランド(VANS、HAWKINS等)も展開。海外にも出店(アジア・米国等)。大規模な直営店舗網を基盤に、カテゴリー最適化(ランニング等の成長領域集中)と海外展開強化、デジタル&業務効率化で生産性を高める。売上好調店舗へ経営資源を集中投下する選択と集中の出店戦略を進めている。海外(台湾・米国・フィリピン等)展開も継続。
チヨダの経営戦略
靴の量販小売チェーン。「東京靴流通センター」「SHOE PLAZA」などを全国展開。スポーツ、ビジネス、カジュアルなど幅広い靴を販売。PB(プライベートブランド)商品や自社企画品も扱う。小売主体だが、他社製品の仕入販売も多い。東京靴流通センター、SHOE PLAZA等を核に、店舗網とPB・自社企画商品の強化、マーケティングで集客を図る。物流・在庫管理による低コスト運営と、オンライン(公式EC)との連携も進めている。
リーガルコーポレーションの経営戦略
靴メーカー兼小売・卸売。紳士靴・婦人靴の高品質ブランド「REGAL」で有名。自社で企画・製造を行い、全国の直営店・百貨店・靴専門店に卸売。ECサイトや直営店舗での小売も強化。高付加価値なビジネスシューズを中心に展開。ブランド価値向上と高付加価値商品での差別化に注力。直営+ECの「リアル×デジタル」連携を強め、商品開発力と販売戦略の強化、データ活用・構造改革による収益性改善を柱にしている。会員基盤拡大や高付加価値ソール等の商品イノベーションも重点施策。
ヒラキの経営戦略
靴を中心とした生活関連商品の通販・店舗販売・卸売。カタログ通販やECで低価格帯の靴を大量販売。自社企画・直輸入を行い、低価格商品を強みに展開。神戸市に大型店舗「ヒラキ」も運営。靴以外に衣料品や雑貨も販売。自社企画・直輸入商品を低価格帯で提供することを軸に、通販+店舗+卸の複合チャネルで稼ぐモデル。商品企画→直輸入→流通(自社物流拠点)でコスト管理し、価格競争力を確保するのが特徴。低価格セグメントでの強みがある。
東邦レマックの経営戦略
靴の企画・卸売を主力とする靴専門商社。婦人靴・紳士靴・子供靴を幅広く取り扱い、全国の靴専門店・量販店・GMS・百貨店・通販業者に供給。海外の提携工場と連携し、OEM・企画商品を展開。近年は直販(D2C)や自社ブランドの育成にも注力。靴の企画・卸売を中核に、販路は専門店・量販店・GMS・EC等多チャネル。企画力と海外生産連携(提携工場)を活かしつつ、近年は直販・D2Cの強化や社内体制整備(経営戦略室設置など)で事業基盤の強化を図っている。卸売中心の事業構造である点が特徴。
5社の共通点
- マルチチャネル対応(実店舗+EC・直販+卸)を強化:実店舗ネットワークを持つエービーシー・マート、チヨダ等も、ECや会員施策を併用。卸主体の東邦レマックやヒラキ等も直販・通販チャネルや卸先多様化を進めている。
- 商品企画力・PB(自社企画・自社ブランド)に注力:価格帯は異なるが、各社とも企画や自社ブランドで差別化し、マージンや顧客ロイヤルティの確保を図っている。
- 物流・在庫管理・生産連携(海外生産含む)を重要な競争要因と認識:低コスト調達(直輸入・海外提携)と効率的物流は、ヒラキ・東邦レマック・エービーシー・マート等の共通する強み。
- デジタル化・データ活用の推進:会員データ活用、EC強化、労働生産性向上のための業務自動化などを実行。特にエービーシー・マートやリーガルコーポレーションは明確な投資テーマ。
5社の相違点
- 事業タイプ:エービーシー・マートとチヨダは小売に強み。大規模な直営販売網と購買データを利活用。東邦レマックとヒラキは卸売に強み。企画→卸売→小売向け供給が中心(但し、ヒラキは直販通販も強い)。リーガルコーポレーションはブランド・メーカー寄り。自社ブランドの価値化と高付加価値商品が主戦場。
- ターゲット顧客層と価格帯:リーガルコーポレーションは高付加価値(ビジネス・プレミアム)。エービーシー・マートとチヨダはミドル〜カジュアル、幅広い価格レンジ。ヒラキは低価格ボリュームゾーン。東邦レマックは卸を通じた幅広いチャネルで各種価格帯を扱う。
- 成長ドライバー:エービーシー・マートは店舗最適化・海外出店・カテゴリー強化。チヨダは店舗網活用による集客とPB推進。リーガルコーポレーションはブランド強化・付加価値創出。ヒラキはコスト競争力(直輸入)+通販。東邦レマックは卸チャネルの深耕とOEM企画力。
所感
エービーシー・マート、チヨダ、リーガルコーポレーション、ヒラキ、東邦レマック、の靴企業5社は、「商品企画力」「チャネル多様化」「物流・デジタル投資」を共通の競争軸に据えているが、事業モデル(小売・ブランド・卸売)とターゲット価格帯で明確に差別化を図っている。量販・小売モデル(エービーシー・マート、チヨダ等)はデータ活用による品揃え最適化と店舗生産性向上が重要。ブランドモデル(リーガルコーポレーション等)はブランド価値の維持・育成が重要。卸売モデル(ヒラキ、東邦レマック等)は、直販化と付加価値化(企画力強化)でマージンと顧客ロイヤルティを高めることが鍵となる。M&A含む靴企業5社の今後の経営戦略が大いに注目される。
以上
