測量業界における目下の経営課題
測量業界は、ビジネスモデルの歴史的転換期(サバイバル期)を迎えている。かつてのような「測量技術の正確さ」だけで差別化できる時代は終わりを告げ、今後は、「集めた膨大な地理・空間データをどう加工し、DXや防災、自動運転(高精度3次元地図)などの付加価値に変えてマネタイズできるか」というIT・テック企業としての側面が試され、期待される。測量企業各社の足元の業績は、国土強靱化予算等も助け、決して悪くはない。但し、そこで得られた利益を「目先の人材不足の穴埋め」だけに費やすのか、それとも「自動化・AI解析・新サービス開発」などの未来のデジタル投資に配分できるかで、数年後の経営や企業価値に決定的な差が生じると予想される。以下、測量業界における目下の経営課題と戦略的挑戦を確認する。

①深刻な技術者不足
測量業界は、少子高齢化の直撃を受けており、特に若手の測量士・技術者の確保が危機的な状況にある。更に、建設業界における時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)の適用以降、限られた人員で従来通りの案件を回すことが物理的に難しくなっている。人材獲得競争の激化は、採用・人件費コストの構造的な上昇要因となる。また、リソース不足による受注制限が発生すれば、そのまま機会損失に直結することとなり、経営への影響は極めて大きい。
②DX・「i-Construction」への投資と技術転換
国土交通省が進める「i-Construction 2.0(2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、即ち、生産性を1.5倍向上することを目指す取り組み)」やBIM・CIM(3次元モデルの活用)の原則化により、従来の「現地に行って測る」スタイルから、ドローン、レーザースキャナー、MMS(モービルマッピングシステム)、衛星データを駆使した「3次元空間データの取得・解析」への移行が必須となっている。測量企業各社にとっては、高額な先端機材・ソフトウェアへの継続的な設備投資が必要となり、また、それらを使いこなせる「データサイエンティスト」や「IT技術者」の育成・獲得が必要になるなど、資金面、人材獲得面の課題を生んでいる。
③「請負型」から「ストック型・サービス型」への脱却
国・地方自治体から受注する公共測量(地籍調査や道路・河川測量など)は、予算の波に左右される官公庁依存の一過性の請負ビジネス。測量企業各社が、今後持続的な高成長を維持するためには、取得した地理空間データ(GIS)をベースにした民間向けサービスや、インフラ維持管理の効率化システムの提供といったリターン率の高いリカーリング(継続課金)モデルの構築が急務となっている。無論、ビジネスモデルの転換が遅れると、競合(ITベンダーや大手建設コンサルタント会社のデジタル部門等)に市場を侵食され、低利益率の単純測量業務しか残らなくなるリスクがある。
④海外展開・新領域への投資
国内のインフラ新設需要はいずれ減少に転じることが見込まれるため、防災・減災(ハザードマップ高度化)や老朽化インフラのメンテ需要を確実に取り込みつつ、海外、特に、東南アジアなどの途上国におけるスマートシティ開発やインフラ整備への進出が課題となる。但し、海外事業は、為替リスクやカントリーリスク、現地パートナーとの関係構築など、国内とは異なる経営判断とリスクマネジメントが求められるため、その道のりは決して容易ではない。
以上
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