測量企業5社の経営戦略と今後の展望

概要

 日本の主要な測量企業(建設コンサルタント会社)である、アジア航測㈱(東証STD9233、2025年9月期純資産22,248百万円、総資産39,626百万円、売上高41,591百万円、営業利益2,856百万円)、㈱オオバ(東証PRM9765、2025年5月期純資産13,167百万円、総資産17,901百万円、売上高18,096百万円、営業利益1,936百万円)、㈱メイホーホールディングス(東証GRT7369、2025年6月期純資産2,188百万円、総資産6,601百万円、売上高13,007百万円、営業利益472百万円)、㈱ウエスコホールディングス(東証STD6091、2025年7月期純資産16,255百万円、総資産21,242百万円、売上高16,114百万円、営業利益987百万円)、E・Jホールディングス㈱(東証PRM2153、2025年5月期純資産34,053百万円、総資産52,011百万円、売上高42,705百万円、営業利益4,481百万円)、の5社は、それぞれ独自の経営戦略を展開している。5社の測量事業に関する戦略をまとめ、共通点と相違点を整理する。

アジア航測の経営戦略

 航空測量・空間情報大手。自社保有の航空機やヘリコプター、ドローン、衛星を活用し、レーザー計測や写真撮影を行う航空測量が強み。測量事業は、地表の3次元点群データを取得し、独自の「赤色立体地図」などの高度な画像処理技術を用いて、高精度な空間情報データ(デジタルツイン)を構築。近年頻発する巨大地震や豪雨災害に対し、斜面崩壊予測や河川の氾濫シミュレーションなど、防災コンサルティングを融合した高付加価値ビジネスを強化。計測データの処理・解析を自動化するAI技術への投資を拡大。更に、計測した3D空間データを自動運転用の高精度3次元地図、森林資源のカーボンクレジット(CO2吸収量)計測といった「グリーン×デジタル」の新領域へ展開する戦略を推進。

オオバの経営戦略

 民間区画整理・都市開発に強みを持つ総合コンサル。測量事業は、土地区画整理事業や民間デベロッパー主導の都市開発、大規模物流施設の建設などに付随する「地上測量」や「地籍調査(境界確定)」が中心。ICT施工に連動する3次元測量をいち早く現場に導入。ドローンやMMS(移動式計測車両)を用いた測量を標準化し、現場の省人化と納期短縮を徹底。民間デベロッパーの開発パートナーとしての強固な地位を構築。測量・設計で培ったノウハウを活かし、PPP/PFI(官民連携ビジネス)や自社での不動産開発、更には太陽光・風力発電所などのグリーンエネルギー開発に伴う調査・測量需要の取り込みに注力。

メイホーホールディングスの経営戦略

 地方の優良な測量・設計会社を束ねるM&Aプラットフォーマー。測量事業は、㈱メイホーエンジニアリング他傘下にある複数の地域密着型コンサルタント会社を通じて、各地方自治体発注の道路、河川、宅地などの地上測量・補償コンサルタント業務に注力。高齢化や後継者不足に悩む地方の優良な測量・設計会社を積極的にM&Aし、グループの規模を拡大。買収した地方子会社に対し、単体では投資が難しい最新の3Dレーザースキャナーやドローン測量機器をグループ共有資産として投入。機材とノウハウの共有により、地方の現場を急速にICT化・高利益率化させる戦略を推進。

ウエスコホールディングスの経営戦略

 西日本を地盤とする地域密着・総合コンサル。測量事業は、創業期の西日本測量設計㈱を源流に持ち、中核子会社の㈱ウエスコが関西・中国・四国地方を中心とした地上測量、MMS(車載計測)、深浅測量(海洋・河川の計測)に対応。自治体インフラ(橋梁、トンネル、上下水道)の維持管理等、西日本のインフラ老朽化対策に注力。高精度な3D点群測量によって構造物の変形や劣化をミリ単位で捉える構造物計測ビジネスを強化。測量・設計のフロー型ビジネスに加え、水族館(四国水族館等)の運営や指定管理者制度による公共施設の管理など、地域インフラに根ざした独自の安定収益源を拡大するハイブリッド戦略。

E・Jホールディングスの経営戦略

 官公庁向けインフラ設計を支える大手コンサルグループ。測量事業は、傘下の㈱エイト日本技術開発や日本インフラマネジメント㈱等が、国や地方自治体から発注される大規模インフラプロジェクト(道路・河川・環境)に付随する高精度な測量・地質調査を担当。国土交通省が推進するインフラの3次元化方針に対応し、ドローンやレーザースキャナーで取得した点群データを、設計・施工・維持管理まで一貫して活用できる体制を強化。グループ各社が持つ得意領域(環境、構造、都市計画など)と測量データを組み合わせ、一気通貫で自治体のグランドデザイン(都市計画)を受託する戦略。また、政府のODA案件を中心に、アジア諸国などの発展途上国におけるインフラ開発に伴う大規模測量・空間情報ビジネスの拡大にも注力。

5社の共通点
  • 「国土強靱化(防災・減災)」へのコミット:政府が進める国土強靱化実施計画(5か年加速化対策等)やインフラ老朽化対策は、5社共通の最大の追い風。どの企業も「防災・減災」、「インフラメンテナンス」を成長の最重点分野に掲げる。
  • 「3次元データ(点群)」を核とした現場DXと内製化:ドローン、MMS、レーザースキャナーによる3次元計測技術(点群データの取得)への投資と、その解析・設計を効率化するAI・CADシステムの導入。これにより、従来型の「人海戦術の地上測量」から「デジタル空間情報ビジネス」への脱皮を急ぐ。
  • 人的資本(採用・育成・技術継承)の強化:測量・建設コンサル業界は「技術士」や「測量士」などの有資格者が競争力の源泉。業界全体で団塊世代の引退と若手不足が進む中、一歩先を行く上場企業として、「初任給引き上げ」、「社内教育の充実(ベテランから若手への技術継承)」、「ウェルビーイング」を戦略に盛り込む。
5社の相違点
  • アジア航測は、空(自社航空機)・宇宙(人工衛星)から広くデータを収集。国土交通省、広域自治体、自動運転・森林分野がターゲット。「グリーン×デジタル」への投資、3D点群を活かした森林カーボンクレジット創出や、海外・新規事業へ積極投資。
  • オオバは、地上(ドローン・MMS・地上)からピンポイントでデータを収集。民間デベロッパー、大規模物流、製造業(半導体工場等)がターゲット。民間開発パートナー戦略と多角化に独自路線。熊本の半導体工場などの造成設計に強み。更に、自社不動産開発やグリーンエネルギー開発まで幅を広げる。
  • メイホーホールディングスは、地方子会社のネットワーク、地域密着に強み。地方自治体(市区町村レベル)がターゲット。従業員承継型M&Aを推進、後継者不足の中小測量・設計会社を連続買収。独自の「企業支援プラットフォーム」でグループ子会社の稼ぐ力を底上げ。
  • ウエスコホールディングスは、西日本深耕+3D計測に強み。関西・中国・四国・九州の自治体、民間がターゲット。地域密着×ストック型ビジネス、西日本エリアのインフラに特化。フロービジネス(測量設計)に加え、水族館運営などの安定的な管理運営事業で補完。
  • E・Jホールディングスは、インフラ設計一体型(総合建設コンサル)に強み。国、官公庁(大規模インフラ、環境)がターゲット。BIM・CIM一気通貫とODA展開、測量から都市全体のグランドデザイン、環境アセスまで一気通貫で受託。政府のODA案件を中心にアジア等の海外展開に注力。
所感

 測量業界各社は、測量ビジネスを、「土地の広さや高さを図る裏方業務」から「現実世界をデジタル上に再現(デジタルツイン)するための最上流データ収集ビジネス」として再定義。集めた3D点群データを元に、AIが土砂崩れの危険を予測したり、自動運転の地図を作ったり、インフラの劣化をミリ単位で診断したりする「高付加価値コンサル」へとシフトしつつあり、㈱パスコ(セコム㈱子会社)や国際航業㈱(㈱ミライト・ワン子会社)含め、業界全体の利益率が向上する基盤が整いつつある。測量業界は、国策(国土強靱化)に守られたディフェンシブな側面を持ちながら、3DデータやAIを活用するテック企業としての成長性を内包している点が、興味深い。また、アジア航測、オオバ、メイホーホールディングス、ウエスコホールディングス、E・Jホールディングスの測量企業5社は、それぞれが独自のポジショニングを徹底して深掘りしており、いずれも強固な参入障壁を築きつつある。測量企業5社のM&Aアライアンス施策含む今後の取り組みが大いに注目される。

以上

あわせて読みたい測量業界関連コンテンツ

測量業界の最新トレンドを、更に深く、立体的に知りたい方は、こちらの関連コンテンツをご覧ください。

「自社の今の価値はどのくらいだろう?」
「将来的なM&Aを見据えて、現在の立ち位置を知っておきたい」

M&Aに精通した公認会計士・証券アナリストが、プロの視点で簡易株価算定(無料)を承ります。

  • 完全無料:算定費用は一切かかりません。
  • 実践的:測量業界の最新の株価倍率(売却・買収マルチプル)の動向や、貴社の財政状態及び経営成績等を加味した「実践的な解」を提供します。
  • 秘密保持:当事務所は、公認会計士法第27条(秘密を守る義務)により秘密保持義務を負っており、伺った情報・データが漏洩することはございません。秘密保持契約(NDA)締結前の段階でも、ご提供頂いた情報・データが漏洩することはございません。
  • 攻めの経営の第一歩に:今すぐのM&Aを検討していなくても問題ありません。自社の「通信簿(現在の価値)」を知ることで、今後の成長戦略やM&A・事業承継の選択肢も見えてきます。

3〜5年後の会社売却・M&Aに向けて「今」簡易株価算定・企業価値評価をすべき理由とは?

M&A・株価算定で全国対応の三澤公認会計士事務所

関連記事

Random

  1. Cominixが生産財総合卸の㈱KamogawaHDの株式取得(子会社化)を発表

  2. オープンハウスグループが不動産売買の㈱永大ホールディングスの株式取得(子会社化)を発表

  3. ショーボンドホールディングスが「中期経営計画2027」を発表

  4. 共栄セキュリティーサービスが警備の㈱セキュリティの株式取得(子会社化)を発表

  5. ナ・デックスが「NADEXグループ中期経営計画(2024~2026)」を発表

  6. 朝日インテックが金型設計のニッタモールド㈱の株式取得(子会社化)を発表

  7. メイホーホールディングスが事業計画及び成長可能性に関する事項(2024年9月)を発表

  8. リゾートトラストが新中期経営計画Sustainable Connect~To Wellbeing~(2023年4月~2028年3月)を発表

  9. スカイマークが事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年6月)を発表

  10. 西本Wismettacホールディングスがアジア食卸売のイタリアUniontradeS.p.A.の株式取得(子会社化)を発表

Random

  1. セカンドサイトアナリティカが事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年6月)を発表

  2. ツナググループ・ホールディングスが営業・事務派遣のAIGATEキャリア㈱の株式取得(子会社化)を発表

  3. DMG森精機が工作機械の宮脇機械プラント㈱の株式取得(子会社化)を発表

  4. 綜研化学が新中期経営計画「Advance 2025」を発表

  5. 鉄人化ホールディングスが一般労働者派遣の㈱ヴァンクールプロモーションの株式取得(子会社化)を発表

TOP