警備業界における目下の経営課題
警備業界は、大手企業は「セキュリティを基盤とした社会インフラ企業への進化」を目指し、その他の事業者は「高い現場力・ニッチな強みと徹底した業務効率化」で勝ち残りを目指すなど、完全な二極化構造となっている。以下、警備業界における目下の経営課題と戦略的挑戦を確認する。

①人手不足解消と適切な価格転嫁
警備業界は「保安」の有効求人倍率が6倍を超えるなど、凄まじい採用難に直面している。更に、警備員の多くが60歳以上という超高齢化が進展。大手・中小を問わず、仕事を受注し、維持・拡大するための「人員の確保」が最大のボトルネックとなっている。短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大への対応や、若年層の採用・離職防止のためには、大幅な賃上げが必須の状況。これを実現するために、顧客単価(警備料金)への適切な価格転嫁(値上げ)を完遂できるかどうかが、足元の最優先課題となっている。尚、「常駐警備」や「交通誘導警備」は、中小零細企業を含め競合が多く、コモディティ化しやすい状況にある。そのため、建設会社や商業施設等発注元への値上げ交渉が長引いたり、競合に案件を奪われるリスクを常に孕んでいる。
②機械警備・DXへの転換
人手不足に対する根本的な解決策として、人が現場に立つ「常駐警備」や「交通誘導警備」から、最新テクノロジー等を活用した「機械警備」や「無人・省力化警備」へのシフトが急務となっている。労働集約型ビジネスモデルから脱却し、少ない人員で収益を最大化すべく、AI画像認識・カメラ、ドローン、遠隔監視システム、警備ロボット等の開発を進め、現場への導入・実用化と顧客への浸透スピードを一層加速させる必要がある。無論、これら投資に耐えうる資本力が必要であり、併せて、システム開発費やハードウェアの導入コストが一時的に利益を圧迫するジレンマも抱えている。尚、中小事業者にとっては、巨額の設備投資は現実的ではなく、既存のITツールを活用したシフト管理の効率化・管制業務のデジタル化等に留まるため、労働集約型ビジネスモデルからの完全脱却は容易ではない。
③資本効率(ROE)の改善
セコム㈱やALSOK㈱といった大手企業は、これまでに蓄積したキャッシュを抱えており、ROEが低迷しやすい構造にある。本業の営業利益率の向上(高付加価値なセキュリティサービスの提供)はもとより、余剰資金の積極的な活用(成長投資や株主還元)、政策保有株の縮減等を進める必要がある。その他の事業者は、国内の同業者のM&A(ロールアップ型M&A)を進めるなどして、ROEの維持拡大を目指すことが、一つの現実的な選択肢となる。
④周辺事業への多角化と海外M&A
日本国内の人口減少や建設投資の平準化等を見据えると、国内警備事業だけでの右肩上がりの成長には限界が見えている。そのため、非警備領域の強化、警備領域の枠を超えた「総合生活・安全インフラ」への進化が必須となる。具体的には、介護サービス、ファシリティマネジメント、防災・インフラ点検、医療・ヘルスケア、IT、BPO、金融・保険事業等への積極投資が進む。また、東南アジアや欧米市場等における、現地セキュリティー企業の積極的なM&A等も必要となる。
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