群馬県の企業M&A|地域別M&A動向最前線(2025年)

群馬県のM&A動向

 群馬県の産業界では、業務提携、資本提携、M&A等の各種アライアンスが活発に行われている。以下、2023年以降に実行されたM&A事例8例を確認する。

①オーシャンシステムが食材宅配の㈱ヨシケイ両毛の株式取得(子会社化)(2023年4月)(OUT-IN型)

概要

 ㈱オーシャンシステム(新潟県三条市、東証STD3096、食品スーパー)は、「ヨシケイ」ブランドによる夕食材料セット等の宅配を手掛ける㈱ヨシケイ両毛(群馬県桐生市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 オーシャンシステムは、ヨシケイ両毛を買収することで、食材宅配事業の群馬県南東部・ 栃木県南西部(両毛地区)の営業エリア拡大とキャッシュ・フローの創出を目指す。

②ジンズホールディングスがメガネフレーム製造の㈱ヤマトテクニカルの株式取得(子会社化)(2023年11月)(IN-OUT型)

概要

 ㈱ジンズホールディングス(群馬県前橋市、東証PRM3046、眼鏡販売)は、各種眼鏡の製造販売を手掛ける㈱ヤマトテクニカル(福井県越前市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 ジンズホールディングスは、メガネフレームの射出成形生産のノウハウを有するヤマトテクニカルを買収することで、国内フレーム生産拠点を保有、生産拠点の分散化及び為替変動等のリスクに対処するだけではなく、生産拠点から店頭までのリードタイム短縮を目指す。

③岡本工作機械製作所が産業機械製造の大和工機㈱の株式取得(子会社化)(2023年11月)(IN-OUT型)

概要

 ㈱岡本工作機械製作所(群馬県安中市、東証PRM6125、平面研削盤)は、産業機械・生産設備の製作、メンテナンス等を手掛ける大和工機㈱(宮崎県都城市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 岡本工作機械製作所は、大和工機を買収することで、半導体関連装置の新たな製造拠点と開発ラボとして活用、今後の半導体ニーズに対応する。また、両社の技術・ノウハウをはじめとする事業リソースを組み合わせることで、大和工機の更なる発展に資すると共に、岡本工作機械製作所の主力事業領域である半導体関連装置の開発・設計・製作・販売にかかる一連の機能強化、提供価値の更なる向上を目指す。

④信越化学工業が半導体材料加工の三益半導体工業㈱の株式取得(子会社化)(2024年11月)(OUT-IN型)

概要

 信越化学工業㈱(東京都千代田区、東証PRM4063、半導体シリコンウエハ)は、半導体材料加工販売、計測器、試験機、情報機器、自動制御装置その他精密機器、自社開発製品並びにこれらに関連するシステムの販売、各種製造、検査、試験システムの設計・製作・販売、および純水製造装置、排水処理設備など各種プラントの設計・製作・販売を手掛ける三益半導体工業㈱(群馬県高崎市、東証PRM8155)の株式を取得し子会社化。

狙い

 信越化学工業は、三益半導体工業を買収することで、ウエハー生産能力のより円滑な適時適所配置、人員確保及び人材相互活用、人員確保及び人材相互活用、スピンプロセッサー(表面処理装置)の販路拡大を実現、両社がより強固な協力体制を構築することで企業価値向上を目指す。

⑤遠藤製作所が精密型打鍛造の日亜鍛工㈱の株式取得(子会社化)(2024年12月)(OUT-IN型)

概要

 ㈱遠藤製作所(新潟県燕市、東証STD7841、ゴルフクラブヘッド製品、鍛造部品、医療機器の製造・販売)は、タービン用部品、建設機械用部品、鉄道用部品等大型鍛造品の製造を手掛ける日亜鍛工㈱(群馬県富岡市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 遠藤製作所は、日亜鍛工を買収することで、両社のコアコンピタンスを活かしつつ新たな価値を創造、事業領域を拡大するとともに鍛造製品市場での確固たる地位確立を図る。

⑥ヤマトが土木工事の上毛建設㈱の株式取得(子会社化)(2025年3月)(IN-IN型)

概要

 ㈱ヤマト(群馬県前橋市、東証STD1967、空調衛生設備工事)は、土木工事業を営む上毛建設㈱(群馬県利根郡みなかみ町)の株式を取得し子会社化。

狙い

 ヤマトは、上毛建設を買収することで、地域共生を目的として、特に群馬県内に於いては県内全体でのネットワークの構築を目指す。

⑦藤田エンジニアリングが建築工事の㈱群工の株式取得(子会社化)(2025年3月)(IN-IN型)

概要

 藤田エンジニアリング㈱(群馬県高崎市、東証STD1770、設備工事)は、建築工事の設計監理並びに請負・ビル、住宅外装建材工事、屋根、基礎、柱結合工事を営む㈱群工(群馬県高崎市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 藤田エンジニアリングは、群工を買収することで、藤田エンジニアリングの主力事業である建設事業に新領域を確保、藤田エンジニアリング建築部門とのシナジーにより施工の拡大を目指す。

⑧あいホールディングスが情報通信機器の㈱ナカヨの株式取得(子会社化)(2025年4月)(OUT-IN型)

概要

 あいホールディングス㈱(東京都中央区、東証PRM3076、防犯カメラ)は、情報通信機器の開発、製造及び販売を営む㈱ナカヨ(群馬県前橋市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 あいホールディングスは、ナカヨを買収することで、開発体制の一本化によるビジネスホン開発の効率化及び投入リソースの再配分、生産拠点の統廃合による生産設備稼働率の向上、ビジネスホン営業体制の再構築及び投入リソースの再配分、資材調達機能の一本化、物流ネットワークの統合を進め、持続的成長と企業価値の向上を目指す。

所感

 群馬県の産業界では、IN-IN型(群馬県内企業同士によるM&A)からIN-OUT型(群馬県内企業が県外企業を買収)、OUT-IN型(県外企業が群馬県内企業を買収)に至るまで、多様な形態のM&Aが活発に実行されている。とりわけ、ジンズホールディングスや岡本工作機械製作所による県外企業の買収、ヤマトや藤田エンジニアリングによる県内企業の統合など、県内企業による戦略的M&Aが目立つ。一方で、三益半導体工業やナカヨといった県内の有力企業に対して、東京都本拠の上場企業によるOUT-IN型の買収も進んでおり、県外資本による技術・販路の統合が加速している。県内における製造業を中心とした再編は、地域経済の構造変化を示唆しており、群馬県のM&A動向は今後の産業の再構築を占う重要な指標といえる。群馬県のM&A動向から目が離せない。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務

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