長野県の企業M&A|地域別M&A動向最前線(2025年)

長野県のM&A動向

 長野県の産業界では、業務提携、資本提携、M&A等の各種アライアンスが活発に行われている。以下、2023年以降に実行されたM&A事例8例を確認する。

①ナカノフドー建設が一般土木工事の㈱トライネットホールディングスの株式取得(子会社化)(2023年3月)(OUT-IN型)

概要

 ㈱ナカノフドー建設(東京都千代田区、東証STD1827、建設・不動産)は、一般土木工事、建築工事、不動産事業、リフォーム事業を営む㈱トライネットホールディングス(長野県飯田市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 トライネットホールディングスは、長野県飯田市を基盤として、土木事業を主要事業とする総合建設業、不動産事業、リフォーム事業を展開している。ナカノフドー建設は、トライネットホールディングスを買収することで、土木工事分野の技術力向上や競争力強化を目指す。

②エフビー介護サービスが小規模多機能型居宅介護・通所介護のスマートケアタウン㈱の株式取得(子会社化)(2023年7月)(IN-IN型)

概要

 エフビー介護サービス㈱(長野県佐久市、東証STD9220、福祉用具・介護)は、小規模多機能型居宅介護、通所介護を手掛けるスマートケアタウン㈱(長野県岡谷市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 スマートケアタウンは、長野県岡谷市において小規模多機能型居宅介護及び通所介護の事業所を2拠点運営している。エフビー介護サービスは、スマートケアタウンを買収することで、事業展開エリアを拡大し、人員配置の効率化等の相乗効果等により企業価値向上を図る。

③ウエルシアホールディングスがドラッグ併設型調剤薬局運営の㈱とをしや薬局の株式取得(子会社化)(2024年6月)(OUT-IN型)

概要

 ウエルシアホールディングス㈱(東京都千代田区、東証PRM3141、ドラッグストア)は、ドラッグ併設型調剤薬局を運営する㈱とをしや薬局(長野県安曇野市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 とをしや薬局は、薬の専門家として、地域の健康づくり・健康管理という点でよりサポートのできる環境を追求し、長野県の中信エリア(松本市を中心とした長野県の西部の北アルプスに接する地域)において、21店舗(2023年6月末時点、ドラッグストア併設型調剤薬局20店舗、調剤薬局1店舗)を展開している。ウエルシアホールディングスは、とをしや薬局を買収することで、これまでウエルシアホールディングスの店舗が少ない中信エリアにおいてとをしや薬局が培ってきた信用力を獲得する。

④エムスリーが日用品レンタルの㈱エランの株式取得(子会社化)(2024年10月)(OUT-IN型)

概要

 エムスリー㈱(東京都港区、東証PRM2413、医療従事者向け情報サイト)は、介護施設・病院の入所者に衣料等のレンタルや日用品を提供する㈱エラン(長野県松本市、東証PRM6099)の株式を取得し子会社化。

狙い

 エランは、病院に入院される方や、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホーム、ケアハウス等の介護施設に入所される方に対して、入院中や入所中に実際に利用する方が衣類・タオル類や日常生活用品を用意する代わりに、衣類・タオル類の貸与と日常生活用品の販売を組み合わせ、CSセットのサービス名で提供している。エムスリーは、エランを買収することで、両社の持つ取引先へ相互のサービスを提供、両社の事業の販売力強化を図る。

⑤守谷商会がユニットハウス製造の未来ネットワーク㈱の株式取得(子会社化)(2024年11月)(IN-IN型)

概要

 ㈱守谷商会(長野県長野市、東証STD1798、建設)は、ユニットハウス全般に係る製造・設計・企画・技術コンサルティングを手掛ける未来ネットワーク㈱(長野県佐久市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 守谷商会は、未来ネットワークを買収することで、新たな商品をグループのラインアップに追加、目まぐるしく変化する事業環境、多様化する顧客ニーズへの対応力を強化する。

⑥マルイチ産商が養殖魚の㈱ダイニチの株式取得(子会社化)(2024年11月)(IN-OUT型)

概要

 ㈱マルイチ産商(長野県長野市、名証MN8228、水産物卸)は、飼料・資材事業、水産事業、水産養殖事業を手掛ける㈱ダイニチ(愛媛県宇和島市)の株式を取得し子会社化。

狙い

 主に甲信越および関東、中京エリアの量販店を主な販売先とし、水産物の販売に強みを持つマルイチ産商と、国内水産業界における将来的な成長ドライバーである国内業務筋市場と海外市場へのアクセス権を持つダイニチは事業の親和性が高い。マルイチ産商は、ダイニチを買収することで、事業シナジーの創出により協業型の国内養殖ビジネスモデルを強化、国産養殖魚の流通に革新をもたらすことを目指す。

⑦セイコーエプソンがデジタル印刷ソフトウェアのFiery, LLCの株式取得(子会社化)(2024年12月)(IN-OUT型)

概要

 セイコーエプソン㈱(長野県諏訪市、東証PRM6724、複合機等)は、デジタル印刷ソフトウェアソリューションを手掛けるFiery, LLC(米国カリフォルニア州)の株式を取得し子会社化。

狙い

 Fieryは、産業・デジタル印刷向けの印刷データを処理・印刷プロセスを管理するためのソフトウェアおよびハードウェアを指すDigital Front Endサーバーをはじめとした印刷向けの包括的なB to Bソフトウェアソリューション及びサービスを提供、オフィス用から商業・産業用までの幅広い顧客ニーズに対応し、デジタル印刷技術により生産性を最大限に引き出す支援を行っている。セイコーエプソンは、Fieryを買収することで、デジタル印刷分野の成長を加速させ、企業価値向上を目指す。

⑧産業革新投資機構がプラスチックラミネートパッケージの新光電気工業㈱の株式取得(子会社化)(2025年3月)(OUT-IN型)

概要

 ㈱産業革新投資機構(東京都港区、投資ファンド)は、プラスチックラミネートパッケージ、リードフレーム、ガラス端子、ヒートスプレッダー、セラミック静電チャックなどの製造・販売、ICアセンブリを手掛ける新光電気工業(長野県長野市、東証PRM6967)の株式を取得し子会社化。

狙い

 産業革新投資機構は、新光電気工業を買収することで、新光電気工業の各事業における本来の潜在成長力を最大限引き出し、ひいてはグローバルでもトップ水準にある新光電気工業の技術を維持・進化させながら、更なる日本の産業振興につなげる道筋作りを目指す。具体的には、新光電気工業製品は、半導体製造基盤強化の観点からも技術革新を支える部品・素材企業として重要な製品に位置付けられ、その事業及び技術は半導体プロセスの三次元実装を中心とした先端領域の技術開発、光電融合技術等の次世代半導体技術の実用化に大きく貢献するものと考えられる。そのため、今まで新光電気工業が築き上げてきた確固たる事業基盤を活かしつつ、産業革新投資機構が有する半導体・電子部品業界への豊富な投資実績を通じて得た知見・ネットワークを活かすことで、新光電気工業の更なる事業成長及び企業価値の向上を目指す。

所感

 長野県の産業界では、介護(エフビー介護サービス)や建設(守谷商会)等の分野においてIN-IN型(長野県下企業が長野県下企業を買収)のM&Aが実行された。また、マルイチ産商がダイニチを買収するなど、IN-OUT型(長野県下企業が長野県外企業を買収)の意欲的なM&Aもみられた。一方で、エラン、新光電気工業といった長野県下の上場企業に対して、OUT-IN型(長野県外企業が長野県下企業を買収)の株式公開買付け(TOB)が実施される等、大資本が目まぐるしく動く状況も在った。長野県の産業界は、日々猛烈なスピードで変化している。長野県のM&A動向から目が離せない。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務

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