概要
伊藤忠商事㈱(東証PRM8001)は、2024年8月5日、塩化ビニル・PC等の各種樹脂製品の製造・加工及び販売並びにこれらの製品に係る工事の請負・設計・管理を手掛けるタキロンシーアイ㈱(2024年3月期純資産97,046百万円、総資産156,194百万円、売上高137,581百万円、営業利益6,228百万円)を非公開化することを目的とする一連の取引の一環として、タキロンシーアイの普通株式を公開買付けにより取得することを決定したと発表した。
狙い
同社は、タキロンシーアイを買収し、グループ内の経営資源を最大限に活用することで、タキロンシーアイの競争力を強化し、事業拡大と収益性向上を図る。特に、M&Aや海外展開を通じた成長戦略を加速させ、合成樹脂加工業界におけるシェア拡大と技術力強化を図ることで、持続可能な成長を実現する。
- 同社の経営資源を活用したタキロンシーアイの事業領域の拡大と成長戦略の加速:同社は、市場環境・構造の急速な変化に対応するため、タキロンシーアイとの連携による営業力・販売力強化、M&Aを含む業界再編による非オーガニックな成長を目指す。同社の海外を含めた原料調達力を活かすことでコスト削減を進めるとともに、M&Aによる競合他社や川下流通網のロールアップ等、業界再編を通じた流通・販売改革によりさらなるシェア獲得、収益性改善を実現する。また、タキロンシーアイが属する合成樹脂加工業界においては、半導体業界や自動車業界向け製品等、今後の大きな伸長が期待される領域もある。これらの領域では、拡大する市場ニーズに対応する技術力及び供給力を確保することが肝要であり、タキロンシーアイが持続的な成長を実現するためには、設備投資や研究開発投資等の経営資源投入を積極的かつ機動的に実行していく必要がある。同社は非資源分野に強みをもつ総合商社として、化学品事業及びその中核である合成樹脂関連事業において、全世界で原料トレードから加工事業まで幅広く展開している。特に原料トレードにおいては、M&A等を通じてアジア・欧州・米国の海外主要エリアに5拠点の合成樹脂ディストリビューション会社を有し、世界第2位に位置する年間320万トンの合成樹脂販売量を誇っている。このように、世界第2位の合成樹脂販売量に裏付けされた圧倒的な顧客基盤と高い業界プレゼンスを確保すると同時に、事業活動を通じて培った豊富なM&Aに関する知見及びノウハウを有している。これらの知見やノウハウを活用することで、タキロンシーアイの事業領域の拡大及び関連領域の技術獲得に貢献し、既存事業の成長戦略を機動的に支援する。
- 同社の経営資源を活用したタキロンシーアイの海外展開の加速と次世代を担う新規領域への挑戦:同社は、タキロンシーアイが、成熟した国内市場だけではなく、人口増加とともに高い成長力を示す米国、中国及び東南アジア等の海外市場への展開を加速する必要があると考えている。その実現のために、同社が有する世界61カ国、約90拠点に及ぶグローバルネットワークを最大限活用し、タキロンシーアイの製品の海外販路開拓・拡販に向けたマーケティング活動を実施する。また、将来的には、地産地消を前提とした海外生産拠点の新設・増設、海外同業他社の買収等にも取り組んでいく。さらに、次世代を担う新規領域の開発も検討する。半導体業界や自動車業界における電気自動車等の成長産業においては、合成樹脂成形品に限らない様々な製品・技術への需要が拡大していくものと予測でき、従来の合成樹脂加工事業の枠に囚われることなく、成長領域への投資・技術開発を積極的に推進していくことが有効と考えている。同社は世界61カ国、約90拠点に及ぶグローバルネットワークを有する総合商社として、全世界を対象とした仕入・販売機能だけでなく、新規事業領域・先端技術に関する情報ネットワークを構築している。製造業として充実した研究開発機能を持つタキロンシーアイと、総合商社としてのアンテナ・ネットワークを有する同社が一体となることにより、新規領域のニーズ把握・シーズ探索を効果的に推進するとともに、ニーズ・シーズを価値ある商品開発、早期収益化に繋げていけるものと考えている。
- 同社の経営資源を活用したタキロンシーアイの最適な人材配置及び人材育成の強化:上記の成長戦略を実行するために、製造業の根幹でもある、「生産・技術・品質保証・研究開発人材」に加えて、「経営企画人材」、「購買・営業人材」、「M&A実務人材」、「海外事業人材」、「経営管理人材(財務・経理、法務等)」、「IT人材」等、多種多様な人材リソースを確保する必要があると認識している。同社としては、タキロンシーアイを非公開化することで、同社グループ全体で必要な人材リソースを確保し、タキロンシーアイの主要部署へ全面的に配置することを企図している。具体的には、これまでも、タキロンシーアイが購買する原材料・資材の調達や仕入先との関係構築・条件交渉等の実務に関して、タキロンシーアイと同社の間では一部取引関係があったが、現在の関係においては、タキロンシーアイの独立性を尊重し、同社とタキロンシーアイの少数株主との間の利益相反が生じることがないよう留意する必要があることから、積極的かつ機動的な購買戦略の実行に制約があった。タキロンシーアイを非公開化することで、同社の人材リソースを、タキロンシーアイの購買実務により効果的に活用することができ、世界第2位の合成樹脂ディストリビューターであり、世界 61カ国、約90拠点に及ぶグローバルネットワークを有する同社の調達力を生かした戦略的購買体制の構築が可能と考えている。また、同社は、業界再編や新規事業開発のためにタキロンシーアイが実行するM&Aに際して対象業界の市場調査や実務手続等を一部支援しているが、互いに独立した上場企業間の情報管理等の制約により、十分な人材リソースの提供ができていない状況にあると考えている。本取引によりタキロンシーアイを非公開化することで、タキロンシーアイによるM&Aの検討及び実行に際して、同社のM&A実務人材を全面的に活用できるものと考えている。さらに、同社の幅広い事業領域とグローバルネットワークを活用することで、タキロンシーアイの人材リソースの育成に貢献できるものと考えている。具体的には、同社の海外拠点での研修・駐在を通じた「海外事業人材」の育成、同社でM&A案件を担う組織との人材交流・協働を通じた「M&A実務人材」の育成、同社内のグループ会社への出向を通じて新規領域開発の経験を積む等、様々な人材育成策を講じていきたいと考えている。
所感
本公開買付けは、同社がタキロンシーアイの更なる成長と競争力強化を目指す戦略の一環として実行されるものである。急速に変化する市場環境の中で、非公開化により意思決定のスピードと柔軟性が向上し、経営資源を最大限に活用できる体制を構築することは、タキロンシーアイにとっても大きなメリットとなる。また、長期的には同社グループ全体の競争力強化にも寄与すると考えられる。本公開買付けを契機とする同社の更なる成長が期待される。
- 挑戦度☆☆
- 戦略度☆☆☆
- 期待度☆☆
タキロンシーアイ株式会社株式(証券コード:4215)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
以上