概要
日本電信電話㈱(東証PRM9432)は、2025年5月29日、モバイルアプリ・インターネットをチャネルとした預金業務・貸出業務等の銀行業務、デビットカード業務、BaaS(Banking as a Service)事業等の金融サービス等を手掛ける住信SBIネット銀行㈱(東証STD7163、2025年3月期純資産169,921百万円、総資産11,236,958百万円、経常収益146,521百万円、経常利益38,189百万円)を非公開化することを目的とする一連の取引の一環として、住信SBIネット銀行の普通株式を公開買付けにより取得することを決定したと発表した。
狙い
- デジタルバンク事業における口座数伸長、メインバンク化に伴う預金残高拡大による成長:日本電信電話はdポイントクラブ約1億会員、携帯電話サービス約9,000万契約、dカード約1,800万会員等の顧客基盤を有しており、これらの顧客に対して住信SBIネット銀行の銀行口座の開設を促すことにより、口座数の獲得を支援する。またドコモサービスの利用状況に応じたdポイント還元やdカード・d払いやマネックス証券等のドコモサービスとの連携を通じて利便性・利得性を向上することにより、住信SBIネット銀行のメインバンク化の推進及び預金残高の拡大を支援する。
- モーゲージプラットフォーム領域における顧客基盤の拡大及び収益性の向上による成長:日本電信電話の顧客を対象に日本電信電話の提供するサービスの利用状況に応じて金利を優遇する等の新たな特典設計やドコモショップを運営する代理店とのネットワークを活用することで住信SBIネット銀行の銀行代理事業者が運営するローンプラザ拠点のさらなる拡大を支援する。また、日本電信電話の保有する顧客データ等を活用したAI審査モデルの高度化に取り組むことで、信用コストの低下や審査オペレーションの効率化を実現し、住信SBIネット銀行の住宅ローン商品の収益性の向上を支援する。その他にも、ドコモ・ファイナンスが保有する全国の住宅ローン販売網にて、現在ドコモ・ファイナンスの主力商材であるフラット35に加え、新たに住信SBIネット銀行の提供する変動金利型住宅ローンを取り扱うことで、住信SBIネット銀行の住宅ローン販売機会を増大(ドコモ・ファイナンスの販売手数料の増大にも寄与)する。
- BaaS事業のプラットフォーム及びケイパビリティ拡大:日本電信電話は法人事業において主要な大企業や全国47都道府県の中堅企業といった顧客とのネットワークを有しており、当該法人顧客に対して、住信SBIネット銀行のBaaSプラットフォームを提案し、BaaS事業のさらなる拡大を支援する。さらに、日本電信電話がこれまで培ってきたDX支援のノウハウの活用により、住信SBIネット銀行のコンサルティング能力及びシステム開発力を強化し、提携パートナーの顧客課題解決力の向上を図る。
- THEMIX事業の進化を通じた銀行を越えたテックカンパニーへの深化:日本電信電話・NTTグループは、ICT分野を中心に幅広い事業に取り組んでおり、大規模データ収集・分析技術、AI・機械学習技術等を有しているため、住信SBIネット銀行の提供するTHEMIX事業との融合により、マーケティング施策や予測モデルの精度向上を含む新たな価値創出に貢献するとともに、住信SBIネット銀行のめざす、銀行を超えた「テックカンパニー」への進化を支援する。
所感
日本電信電話は、グループビジョン「テクノロジーと人間力で新しいつながりを生み、心躍る価値創造で、世界を豊かに、幸せに。」を掲げ、通信事業(携帯電話サービス、光ブロードバンドサービス、衛星電話サービス、国際サービス、各サービスの端末機器販売等)、スマートライフ事業(動画配信・音楽配信・電子書籍サービス等のdマーケットを通じたサービス、金融・決済サービス、ショッピングサービス、生活関連サービス等)及びその他の事業(補償サービス、法人IoT、システム開発・販売・保守受託等)を展開。本件M&Aは、通信事業と銀行業を組み合わせたシナジー創出に向けた強力なアライアンスであり、日本電信電話の今後の取り組みが注目される。
- 挑戦度☆☆☆
- 戦略度☆☆☆
- 期待度☆☆
日本電信電話がインターネット専業銀行の住信SBIネット銀行㈱に対する公開買付けの開始を発表
以上