概要
㈱アクセルスペースホールディングス(東証GRT402A)は、2025年8月13日、事業計画及び成長可能性に関する事項を発表した。
事業内容
- AxelLiner:顧客向け小型衛星の設計・製造・打上げ・運用を提供。
- AxelGlobe:自社運用衛星(光学衛星)にて撮影した画像データの販売及び衛星画像を使ったサービスを提供。
強み
- 蓄積された技術力で短期・低コストでのサービス提供を実現:開発・製造・運用の各プロセスにおいて創業以来、蓄積したノウハウ・技術を元に、自社のみならず外部顧客向けの小型衛星コンステレーションの開発から運用までを低コストで実現。
- 独自の設計基準と製造体制:開発工数や試験工数を削減・簡素化。宇宙空間での利用を前提としていない部品も採用を検討し開発コストを削減しつつ、商用に耐え得る品質を維持する開発手法を確立。内製化するコア技術と外部調達部品を組み合わせ競争力と低コスト化を両立。
- 独自のサプライチェーン網の構築:宇宙空間でも活用できる民生部品を独自に選定。外部機器の調達と自社開発を使い分け。高額な調達機器も、外部メーカーと共同開発に取り組み、原価低減を図る。
- 自動運用システム:運用にかかる手間・ミスを避けるため、無人化・自動化を目指した運用システムを開発。2018年に打上げた「GRUS-1A」より適用。現在ではクラウド上の自動運用システムが人工衛星の監視・運用の大半を無人で実施している他、人工衛星に送付するコマンドは事前に設定された運用計画に基づき全てプログラムが生成するなど、運用ミスを防ぐ工夫を実装。軌道上の衛星に発生した軽微な不具合は自動復旧することができる他、他物体との衝突リスクが顕在化した時には自動で衝突回避運用を実行する機能の実装も開発中。
- 光学衛星×中分解能領域の競合との違い:アクセルスペースホールディングスは、タスキングベースで画像提供しており、顧客ニーズに応じて柔軟に対応することが可能。また、アーカイブを中心とした事業モデルではないため、撮影データのストレージ費用などを抑制できる。
- AxelLiner事業における他の小型衛星開発事業者との比較:国内の専用衛星開発事業者は主力の開発衛星サイズに違いがある。アクセルスペースホールディングスは50−200kg級の超小型・小型衛星の開発での実績を有する。このほか大手企業と海外バスメーカーが連携を加速しており、競争環境は今後激しくなる見込み。
中期経営計画
2026年5月期の数値目標は、売上高3,646百万円(2025年5月期実績1,586百万円)、営業利益▲3,999百万円(同▲2,495百万円)、とした。
リスク
- 衛星画像サービス市場の成長鈍化。
- 競合の存在。
- AxelLiner事業における民間案件の受注見込みの遅延。
- 顧客と締結する基本合意内容の認識の相違。
- 政府機関の顧客に依存。
- 事業の特性による外的要因、予期せぬ問題の発生可能性。
- 開発遅延。
- サプライチェーンのリスク。
- 衛生の打上げ失敗のリスク。
- 軌道上の衛星の故障。
- AxelGlobeウェブサイトの安全性を損なうリスク。
- 黒字化を達成及び維持できないリスク。
所感
アクセルスペースホールディングスは、「Space within Your Reach 〜宇宙を普通の場所に〜」をビジョンに掲げ、超小型・小型衛星の設計から打ち上げ・運用までを手掛ける独自のビジネスモデルを展開している。地球観測衛星の市場規模は2029年までの5年間で約4.4兆円に拡大すると見込まれており、同社は中分解能に加え、開発中の高分解能衛星によって累計約3.5兆円規模をターゲットとする戦略を掲げている。今後はアライアンス施策の取り組みと、衛星データ事業の収益化及び安定的な成長基盤の確立実現が注目される。
- 挑戦度☆☆☆
- 戦略度☆☆
- 期待度☆☆
以上