概要
㈱トランザクション・メディア・ネットワークス(東証GRT5258)は、2023年6月29日、事業計画及び成長可能性に関する事項を発表した。
事業内容
国内最大級の電子決済ゲートウェイ。
強み
- 国内初のクラウド型汎用電子マネーゲートウェイの商用化により、流通事業者のキャッシュレス導入の阻害要因となる課題を解決しキャッシュレス決済普及に貢献。
- 業界最多レベルのブランドに対応した1ストップソリューション。
- 強固な顧客基盤をもつ株主のクレジットカード会社(JCB、トヨタファイナンス、三井住友カード、UCカード、三菱UFJ銀行)と協力・連携体制を構築。
中期経営計画
2024年3月期の数値目標は、売上高9,423百万円(2023年3月期実績7,831百万円)、営業利益795百万円(同560百万円)、とした。
リスク
- 同社の主要な事業領域は、日本国政府のキャッシュレス推進の追い風により市場拡大が見込まれているが、市場の成長鈍化や政府方針の転換などにより縮小した場合、若しくは同社の成長予測を下回った 場合には、キャッシュレス決済の取扱高の減少や端末導入の鈍化等によって同社業績に影響を及ぼす可能性がある。また、同社の主要な事業領域は、情報サービス産業の中で成長分野であると見做されてお り、従来他業種であった企業が参入してきている。業界の地殻変動の中、これからのマーケットには 先行き不透明な部分があり、競合他社の積極参入による競争激化が同社業績に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社は、新型コロナウイルス感染症の2類から5類への引き下げにより、経済活動の正常化が進んでいると考えており、同社の事業及び業績への影響も軽微であると判断している。また、同社ではリモー トワーク制度を導入しており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大局面においても、事業を継続できる 体制を整備している。 しかしながら、今後、新型コロナウイルス感染症の変異による感染拡大や、同様の感染症発生に伴う外 部環境の変化が、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある。また、同社の役職員等に大規模 な感染が発生し、事業活動に支障が生じた場合には、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社は納期管理を徹底しており同社起因による納期遅延の事例は少ないものの、大型開発案件等で検収 時期が遅延し、計画通りに売上計上ができない場合がある。特に期末月の3月に予定されていた顧客 の検収時期に遅延が生じた場合には、売上計上月が翌期にずれ込むことにより、同社の業績に影響を及ぼ す可能性がある。
- 同社は、複数のメーカーと調達契約を締結することで、購買ルートの分散を図っているが、顧客の ニーズ等を勘案して取引先を選定した結果、特定の調達先からの仕入構成比が比較的高くなっている。2023年3月期においては、Pax Japan㈱からの仕入が台数ベースで41%、金額ベースで45%を占 めており、自然災害、感染症等の要因によりメーカーにおいて決済端末の生産体制に支障を生じるような 事態が発生した場合など、予期せぬ事象の発生によって決済端末の調達が困難になり、収益機会の損失等 により同社業績に影響を及ぼす可能性がある。また、仕入れた決済端末の不具合等によって同社責任の下交換が生じた場合や、仕入れる決済端末で予期せぬ問題等が発生した場合は、顧客からの信頼性の低 下により、同社業績に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社の事業を支える決済処理センターは、同社が契約するデータセンターで管理されており、複数の サーバーによる負荷の分散、定期的なバックアップの実施等を図り、システム障害を未然に防ぐべく取り 組みを行っている。障害が発生した場合に備え、リアルタイムのアクセスログチェック機能やソフト ウエア障害を即時にスタッフに通知する仕組みを整備しており、障害が発生したことを想定した復旧訓練 も実施しているが、特定のデータセンターを活用していることから、火災、地震等の自然災害や、外 的大規模通信障害、外的破損、人的ミスによるシステム障害、その他予期せぬ事象の発生により、万が 一、同社の設備及びネットワークの利用に支障が生じた場合には、サービスの停止等を余儀なくされるこ とによる収益機会の損失、顧客からの信頼性の低下等により、同社の業績に影響を及ぼす可能性がある。同社は2025年にデータセンターの移設を予定しており、既存データセンターの閉鎖時期も決定している。災害対策を考慮したデータセンターを選定し、仮想化技術に長け決済系に精通しているベンダー 選定、移行方式含めたアーキテクチャの第三者評価の実施、新データセンターを早期に構築し既存データ センターとの平行稼働することによる稼働確認期間と切替作業期間を十分に確保した移設計画と、バック アッププランを立て計画に基づき移設作業を行う予定でいる。しかしながら予期せぬ事象の発生等に より、一時的にサービスの停止等を余儀なくされるなどサービス提供に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社の決済サービスは、㈱エヌ・ティ・ティ・データが運営する「CAFIS」のネットワーク、㈱日本カードネットワークが運営する「CARDNET」のネットワーク及び三井住友カード㈱が運営する「stera」と連携するものもあり、今後これらのネットワークシステム障害等の理由により、同社のサービス提供が困難になる可能性がある。 また、㈱エヌ・ティ・ティ・データは「INFOX」、㈱日本カードネットワークは「JETS」、三井住友カード㈱は「stera」のサービス名称で、国内の主要な決済プラットフォームを提供 しており、同社の決済処理センターはそのすべてと接続されている。これらの接続に関する契約終了 等が発生した場合、同社の業績に対して影響を及ぼす可能性がある。
- 同社は新技術の積極的な投入を行い、適時に独自のサービスを構築していく方針ではあるが、技術 革新等への対応が遅れた場合や、予想外に追加の設備投資等が発生した場合には、同社の業績に影響を及 ぼす可能性がある。 また、事業の拡大に応じて、システムインフラ等への投資を実施、計画しているが、同社の想定を 超える急激なユーザー数やアクセス数の増加、インターネット技術の急速な進歩に伴い、予定していない ハードウエアやソフトウエアへの投資等が必要となった場合、同社業績に影響を及ぼす可能性がある。一般的に、高度なソフトウエアは不具合の発生を完全に解消することは不可能であるとも言われており、同社のアプリケーション、ソフトウエアやシステムにおいても、各種不具合が発生する可能性がある。今後も信頼度の高い開発体制を維持・構築するために投資の実施を計画しているが、同社事業 の運用に支障をきたす致命的な不具合が発見され、その不具合を適切に解決できない場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社は、「情報プロセシング企業」への進化を標榜しており、当該事業は既存のキャッシュレス決済 サービス事業のアセットを有効に活用して展開をはかることで最大限効率的に立上げを行う予定だが、 未だ先行投資のフェーズであり、新規事業の側面があることから事業の立ち上がりの遅延やシステムへの 先行投資の発生によって、利益率が低下する可能性がある。また、展開した新領域への事業拡大・成長や、新組織が当初の予測通りに進まない場合、投資を回収できず、同社業績に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社のクレジットゲートウェイを利用する場合、クレジットカード番号を同社のコンピュータシステム に送信する必要がある。また、プリペイドサービスにおいてはクレジットカード番号のほかに氏名・ 住所・電話番号・メールアドレス等の個人情報の登録を求める場合があり、登録された情報は同社の管理 下にあるデータベースにて保管している。昨今、企業が保有する個人情報の漏洩が相次ぐ中、個人情 報の扱いに対する社会的関心が高まっている。2017年5月に改正個人情報保護法が全面施行され、今 後益々個人情報管理の徹底が必要となる。 このような中、同社は一般社団法人日本クレジット協会へ加入し、同協会で義務化されている個人情報 保護指針に基づく個人情報管理の運用を実施している。クレジットカード情報及び個人情報を守るため に、プライバシーマークやPCI DSSの認定(有効期限2023年9月、1年更新でPCI SSCが認定する審査機関による監査に基づき更新されるもの)を取得し、個人情報の漏洩を未然に防止するよう努めている。 PCI DSSは同社のクレジットサービスゲートウェイ提供の前提となっており、取り消し事由は明確に定め られていないが、万が一、重大な個人情報漏洩等によりPCI DSSの認定がPCI SSCによって取り消され た場合は認定再取得の期間において一部のサービス提供が困難になる可能性があり、同社の強みであるワ ンストップサービスを提供する同社の業績に影響を及ぼす可能性がある。なお、本日現在で許認可が 取り消されるような事象は生じていない。 また、同社は、取引先情報等、様々な企業情報を保有している。同社では、情報セキュリティの基本 方針を定め、外部及び内部からの不正なアクセスを防止する対策を行い管理している。社内の情報セ キュリティの状況を常に把握し、必要な対策を迅速かつ円滑に実施すべく情報セキュリティ委員会を設置 し管理している。クレジット決済サービス提供部門については、情報セキュリティにおける国際標準規 格であるISO27001(ISMS認証)の認定を受け、情報漏洩を未然に防止するよう努めている。しかし、 人為的なミスや、外部及び内部からの何らかの不正な方法により、クレジットカード情報や企業情報等の 重要な情報が外部に流出した場合には、セキュリティインシデントに対する対応コストの発生や、同社へ の社会的信用の失墜が当社の業績に影響を及ぼす可能性がある。
所感
同社は、決済ゲートウェイに求められる機密性と可用性を実現する技術力と継続的なデータセンター投資を背景に、端末台数の面的拡大と同社ネットワーク上での決済量を拡大させ、業容が拡大している。今後は、POS等の流通関連サービスを展開するなど電子決済ゲートウェイ企業から情報プロセシング企業へと進化することで、同社の更なる飛躍が期待される。
以上
株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所