航空測量3社の戦略的M&A
航空測量3社(㈱パスコ、国際航業㈱、アジア航測㈱)は、いずれも異業種の大手企業との連携を通じて、ビジネスフィールドを拡大させている。航空測量技術は、あらゆる先端ビジネスのキーソリューションとなるものであり、航空測量3社の今後のM&A・アライアンス及び価値創出から目が離せない。
㈱パスコ(東証STD9232)の取り組み
セコムと伊藤忠商事が公開買付けを実施(2024年)
概要
警備首位のセコム㈱(東証PRM9735)と総合商社の伊藤忠商事㈱(東証PRM8001)が、共同公開買付契約を締結し、パスコの普通株式を公開買付けにより取得。
狙い
伊藤忠商事は、パスコの取扱う地理空間情報は技術発展に伴い情報が高度化され、今後民間や海外へと拡大可能な分野であり、伊藤忠商事の進めるDX事業や宇宙・衛星事業との連携によるシナジーを追求する。また、伊藤忠商事のICT分野における開発体制や販売網、並びにサービス提供や協業の実績を活用して、パスコの保有する地理空間情報を活用した新規ソリューションの開発支援を行うことを目指す。
国際航業㈱の取り組み
ミライト・ワンが子会社化(2023年)
概要
通信工事大手の㈱ミライト・ワン(東証PRM1417)がカーライル(グローバル・プライベート・エクイティ他)より国際航業の普通株式を取得し子会社化。
狙い
国際航業が有する高度な空間情報技術を基盤とした多数の自治体等に対する街づくり/里づくり・DX/GX 分野等における調査・コンサルティング、業務実行支援、インフラ設計・マネジメント支援等の上流工程の企画提案・設計能力と、ミライト・ワンのエンジニアリング能力を相互に補完・共有・活用することで、「縦の統合」の強化を図る。また、国際航業が有する充実した空間情報データ基盤やデータ解析エンジニアリング人材がミライト・ワンのリソースと一体となり、様々なエンジニアリング分野においてコンサルティング提案から設計・施工・運用までのフルフェーズでデータを活用した付加価値の高い事業を推進する。
アジア航測㈱(東証STD9233)の取り組み
グリッドスカイウェイ有限責任事業組合への参画(2023年)
概要
アジア航測は、東京電力パワーグリッド㈱(東証PRM9501東京電力ホールディングス㈱子会社)、㈱NTTデータ(東証PRM9613㈱NTTデータグループ子会社)、㈱日立製作所(東証PRM6501)、東日本旅客鉄道㈱(東証PRM9020)等13社が参加するグリッドスカイウェイ有限責任事業組合に参画。
狙い
グリッドスカイウェイでは、ドローンが安全に飛び交うための航路として有力視されている電力設備の上空等を中心とした全国共通の「ドローン航路プラットフォーム」を構築。新たな空のインフラとして提供することを目指す。具体的には、物流や農林水産業など今後ドローンの利活用が期待される様々な事業者と、ユースケース実証を通して新たなビジネスモデルの検証を目指す。また、地域防災やインフラ維持管理、災害対策等へのドローン利活用に向け、技術面・制度面双方からドローンの目視外飛行を支援する航路プラットフォームに求められる要件の整理・検討を行う。更に、ドローンや空域に関する情報を集約して一元管理し、運航者に安全かつ効率的な飛行を支援するシステムを中心に、ドローンの飛行をサポートする気象センサーやドローンポートなどの機器を備えたプラットフォームの構築を目指す。
各社の類似点と相違点
類似点
航空測量3社共に、航空測量技術の活用範囲を広げるためのM&A・アライアンスを積極的に推進。単なる測量に留まらず、環境、都市計画、災害対策、インフラ整備など成長分野への事業拡大を進めている。また、デジタル技術やAI、ビッグデータ解析などの技術を取り入れる動きも見られる。これにより、航空測量データの付加価値を高め、顧客ニーズに応える高度なサービスの提供を目指している。
相違点
航空測量3社の取り組みには異なる側面がある。パスコは、衛星データやリモートセンシング技術に注力し、宇宙産業とのシナジーを重視、これにより、地理空間情報の高度化を推進。国際航業は、環境分野やインフラ開発、特に防災、地盤調査、環境モニタリング関連の事業強化を推進。アジア航測は、防災や災害復興分野、特に災害時の測量データ活用や、自治体支援事業の拡大を進めている。
所感
航空測量3社は、いずれも異業種の大手企業との連携を通じて、ビジネスフィールドを拡大させている。パスコ、国際航業の2社は、非公開化の道を進んだが、アジア航測は引き続き上場を維持しており、アジア航測の筆頭株主である西日本旅客鉄道㈱(東証PRM9021)の今後の動向も注目される。航空測量技術は、あらゆる先端ビジネスのキーソリューションとなるものであり、異業種との連携を通じて社会の利便性向上に資するサービスを生み出す可能性が高い。航空測量3社の今後のM&A・アライアンス及び価値創出から目が離せない。
以上
