概要
㈱ステムセル研究所(東証GRT7096)は、2024年6月27日、事業計画及び成長可能性に関する事項を発表した。
事業内容
再生医療・細胞治療を目的とした、へその緒や胎盤の中に含まれている赤ちゃんの血液である「さい帯血」や「さい帯」等の周産期組織由来の細胞バンク事業及び、それらの細胞を利用した、新たな治療法、再生医療等製品の開発、そしてこれらの事業基盤をベースにした再生医療・不妊治療・出産・子育て等の領域での事業開発及び投資等の事業を展開。「細胞バンク事業」では、顧客(妊婦等)と「さい帯血分離保管委託契約」を締結した上で、国内さい帯血採取協力病院(大学病院、産科クリニック等)において採取されたさい帯血を回収し、自社の細胞処理センター(東京都港区及び横浜市保管区)に搬入、さい帯血に含まれる幹細胞を分離・抽出・調製する作業を行なった後、自社の細胞保管センター(横浜市保管区)において、超低温下にて長期保管。「さい帯血分離保管委託契約」に基づき、顧客よりさい帯血にかかる分離料、検査料、登録料及び細胞保管料を収受。
強み
- さい帯血新規保管数シェア99.9%:さい帯血を保管する「さい帯血バンク」には、「公的さい帯血バンク」と「民間さい帯血バンク」があり、同社は、「民間さい帯血バンク」に該当する。公的さい帯血バンクでは、造血細胞移植法に基づき「無償」でさい帯血の提供を受け、自血病等の病気で移植治療を必要とする患者(第三者)のために保管している一方、民間さい帯血バンクでは、「本人や家族」が、将来何らかの治療(主に脳性麻痺や目周症等の再生医療)に使うことができるよう、自分のためにさい帯血を保管することを目的とする。民間さい帯血バンクは、厚生労働省へ「臍帯血取扱事業の届出」の提出を要請されており、2023年3月31日現在、同届出を行っている民間さい帯血バンクは同社を含め2社のみであり、国内のさい帯血新規保管数シェア99.9%、累計保管数シェアは99%を占める。
- 市場拡大余地:法律などの社会的な基盤がなく、臨床研究が進めにくい環境だったことや、産科施設でのリアルマーケティング重視であることから日本のさい帯血の採取率は1%にとどまっている。一方、他国では医療+美容目的でも利用されている。他国に比べて低い率であることから、今後市場が拡大することが見込まれる。
中期経営計画
2025年3月期の数値予想は、売上高3,000百万円(2024年3月期実績2,481百万円)、営業利益600百万円(同413百万円)、とした。
リスク
- 「さい帯血」の再生医療分野での研究成果が想定通り進捗しない場合やその他の新たな治療法が出現した場合などは、同社の経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
- 細胞バンク事業に係る法規制の改正・強化、新たな法規制が制定された場合、あるいはこれらの法規制を遵守できない場合、追加的な対応や事業への何らかの制約が生じることにより、同社の事業や業績に影響を及ぼす可能性がある。
- 細胞培養加工施設における「特定細胞加工物製造許可」の取消等があった場合には、主要な事業活動に支障をきたすとともに同社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
- 細胞の分離・処理作業に必要な試薬や長期保管用タンクの冷却用液体窒素の供給が滞ったり、必要な設備が正常に稼動しないなど細胞の輸送、分離、保管の品質維持に支障を来した場合には、同社の事業や業績に影響を及ぼす可能性がある。
M&Aニーズ
- 細胞バンク、クリニック(アジア)
所感
同社は、さい帯血及びさい帯の民間バンクとして独占的事業を展開している。さい帯血保管のオプション契約として、2021年4月より日本初のさい帯保管サービスを開始、2023年6月1日に「ファミリー上清(さい帯由来幹細胞培養上清液)」製造サービスを開始し、さい帯保管者及びさい帯血保管者が相乗的に増加するスキームを構築している。今後は、保管した細胞が美容を含む再生医療以外でも希望に応じて利用できる時代となることが予想され、市場の拡大が期待される。同社は、これまでに卵子凍結保管サービスの㈱グレイスグループや妊婦向けサービスの㈱ベビーカレンダー、乳幼児の頭の形のゆがみを強制するヘルメットを開発販売する㈱ジャパン・メディカル・カンパニーとの資本業務提携をしており、今後はシンガポール・台湾・インドネシアを中心としたアジア地域での細胞バンク・ヘルスケア事業・クリニック展開を検討するなど、ビジネスフィールドの強化拡大を進めている。同社の今後のアライアンス戦略が注目される。
- 挑戦度☆☆☆
- 戦略度☆☆☆
- 期待度☆☆☆
以上