概要
ミネベアミツミ㈱(東証PRM6479)は、2025年4月10日、サーミスタ、温度・湿度・風速センサ等の製造販売を手掛ける㈱芝浦電子(東証STD6957、2024年3月期純資産35,162百万円、総資産43,574百万円、売上高32,401百万円、営業利益5,104百万円)を完全子会社化することを目的とする一連の取引の一環として、芝浦電子の普通株式を公開買付けにより取得することを決定したと発表した。
狙い
- 技術革新と高付加価値製品の開発:ミネベアミツミは、モーターや電源等のパワーエレクトロニクス製品の使用限界は「温度」であるとの認識のもと、今後の「4高」製品においては今まで以上に温度管理の重要性が増すと考えている。電源製品、バッテリー関連製品、主機モーターを始めとする各種モーター等、ミネベアミツミの様々な製品において温度管理はキーファクターとなり、芝浦電子のサーミスタの搭載機会、搭載数は大いに増加すると見込んでいる。また、ミネベアミツミは、「8本の槍」の一つであるパワー半導体を含めたアナログ半導体事業にも注力している。サーミスタは温度変化によって抵抗値が変化する素子であり、抵抗値の変化を電圧や電流に変換し、温度値を測定する等、温度制御を行うためにはアナログ半導体が必須であり、また、抵抗値出力が非線形の特性であるため、温度補正に関してもアナログ半導体のシナジーがある。さらに、ミネベアミツミが強みとするモジュール化技術により、芝浦電子のNTCサーミスタをミネベアミツミが有する半導体製品に組み込み、ミネベアミツミの強みである垂直統合で生産することで、より付加価値の高い温度制御ソリューションの提供が可能になると想定している。上記のように、ミネベアミツミはモーター、半導体、コネクタ等の温度センサと親和性のある電子部品を数多く手掛けており、それらを組み合わせた技術・製品開発の機会を創出することでミネベアミツミの掲げる相合を芝浦電子との間でも実現する。
- ミネベアミツミの販路を活用したグローバル展開:ミネベアミツミはグローバルに多くの営業拠点を有し、2,000名の営業・マーケティング担当者が日々世界中の顧客に対して幅広く製品及びソリューションを提供している。ミネベアミツミの販路を活用することで、芝浦電子の既存エリアでの市場シェア拡大及び新規エリアの開拓が見込まれると想定している。具体的には、芝浦電子は国内のほか、中国・タイを中心としてアジア地域における売上比率が高く、一方でミネベアミツミは世界101か所の営業拠点を基に国内のほか、アジア、米国、欧州を中心に世界28か国においてグローバルに強固な顧客基盤を有している。ミネベアミツミの各種センサやアナログ半導体、モーター等、芝浦電子のNTCサーミスタと親和性のある製品群において、ミネベアミツミのグローバルでの販売網を活用したクロスセルが期待できる。
- オペレーションの効率化:ミネベアミツミ及び芝浦電子のグローバルでの製造・営業拠点を相互活用することで、製造や物流コストの低減を実現できると考えている。ミネベアミツミは、温度センサのニーズが今後増していくと考え、部材の安定調達及び調達コストの削減が重要課題になると認識している。ミネベアミツミの調達網を生かした共同調達や、物流等サプライチェーンの統合を促進すること、上記のミネベアミツミの販路を活用することを通じ、芝浦電子事業における収益性の更なる向上が見込まれる。加えて、ミネベアミツミが強みとする大量生産の製造ノウハウや工場オペレーションのノウハウを活用し、芝浦電子の生産効率も大きく向上することが期待できる。
所感
ミネベアミツミは、精密部品メーカーとして、自動車、スマートフォン・タブレット、航空機、オフィスオートメーション機器、家電、医療機器等の産業に製品を供給、祖業のベアリングのように、様々な機器に必要な核製品で、絶対になくならない事業をコア事業と定義している。中でも、高シェア・高収益をあげ、競争優位性を発揮できるニッチセグメントを今後の重点分野と見極め、「8本の槍」(①ベアリング、②アナログ半導体、③モーター、④アクセス製品、⑤センサ、⑥コネクタ/スイッチ、⑦電源、⑧無線/通信/ソフトウェア)と位置付けている。本件M&Aは、ミネベアミツミの重点分野であるセンサ領域の強化に資する戦略的M&Aであり、ミネベアミツミの更なる飛躍が期待される。
- 挑戦度☆☆
- 戦略度☆☆☆
- 期待度☆☆☆
株式会社芝浦電子(証券コード:6957)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ
以上