配電盤・制御盤業界の戦略的M&Aから読み解くセクタートレンド

「キーコンポーネント」を押さえろ

 配電盤・制御盤業界は、あらゆる先端成長産業において活用される「キーコンポーネント」としての認識から、静かに、そして着実にM&A・アライアンスが進行している。以下、2016年以降に実行された、日本の上場企業が関わる意欲的なM&A・アライアンス事例9例を確認する。

①スズデンが配電盤・制御盤の愛知電機㈱の株式取得(子会社化)(2016年9月)

概要

 スズデン㈱(東証STD7480、FA用制御機器商社)は、配電盤、制御盤、操作盤及び付属部品の設計・製造・修理・販売を手掛ける愛知電機㈱(純資産▲3百万円、総資産56百万円、売上高111百万円、営業利益▲3百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 愛知電機は、自動車産業関連の大手企業を主力顧客に有している。スズデンは、愛知電機を買収することで、自動車産業市場への営業力強化を図る。

②藤井産業が電気設備工事の㈱サンユウの株式取得(子会社化)(2018年12月)

概要

 藤井産業㈱(東証STD9906、電設資材・電気機器商社)は、産業機械の電気設備工事、制御盤・分電盤の設計及び製作を手掛ける㈱サンユウ(純資産276百万円、総資産376百万円、売上高364百万円、営業利益76百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 サンユウは、埼玉エリアにおいて顧客密着型の営業を展開。藤井産業は、サンユウを買収することで、両社の経営資源や強みを相互活用し、顧客への提案の充実、技術力の向上、取扱商品の拡充、仕入の効率化を目指す。

③日東工業が電磁波環境コンポーネントの北川工業㈱の株式取得(子会社化)(2019年1月)

概要

 日東工業㈱(東証PRM6651、電設資材キャビネット、配電盤他)は、電磁波環境コンポーネント・精密エンジニアリングコンポーネントの製造販売を手掛ける北川工業㈱(純資産26,382百万円、総資産28,905百万円、売上高11,260百万円、営業利益1,026百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 北川工業は、エレクトロニクス機器の電磁波環境コンポーネント及び各種機器機構部品や生産性に貢献する精密エンジニアリングコンポーネント部品の生産・販売を行っている。また、精密エンジニアリングコンポーネント部品の生産によって培われた精密成形・金型技術の活用により、機能性を付加した電磁波対策コンポーネントの開発を行う等、より付加価値の高い製品開発にも取り組んでいる。日東工業は、北川工業を買収することで、両社の顧客基盤と商流及び営業拠点、商品紹介の製品カタログ、受発注システム、物流システムを相互活用、売上拡大、新規市場への参入を目指す。

④サカイオーベックスが制御盤・配電盤の攝津電機工業㈱の株式取得(子会社化)(2019年11月)

概要

 サカイオーベックス㈱(上場廃止、染色加工、制御機器他)は、制御盤、配電盤の設計製作及び施工を手掛ける攝津電機工業㈱(純資産359百万円、総資産1,219百万円、売上高1,824百万円、営業利益82百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 攝津電機工業は、制御機器の製造販売を行っている。サカイオーベックスは、攝津電機工業を買収することで、攝津電機工業の有する高圧制御盤関連事業の人材と技術ノウハウを新たに取得、制御機器事業自体の拡大はもとより、サカイオーベックス子会社で制御機器事業を担う㈱サカイエルコムとの協業・共創により、新規顧客の獲得や販路・チャネルの拡大、商品企画力の強化、新たなビジネス機会の創出を目指す。

⑤サノヤスホールディングスが電気機械器具のハピネスデンキ㈱の株式取得(子会社化)(2020年1月)

概要

 サノヤスホールディングス㈱(東証STD7022、製造・建設設備等)は、電気機械器具製造業、電気工事業を手掛けるハピネスデンキ㈱(純資産672百万円、総資産2,931百万円、売上高3,114百万円、営業利益185百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 ハピネスデンキは、1919年の創業以来、一世紀の間、動力制御盤・分電盤・配電盤等のメーカーとして官庁舎、大学をはじめ大型ビルや空港などの日本全国の大規模施設へ多数の納入実績を有し、電力の安定供給を支えている。サノヤスホールディングスは、ハピネスデンキを買収することで、サノヤスホールディングスの第二のコアビジネスであるM&T(Machinery & Technology)事業の基盤拡大を図り、中長期的な成長と収益の強化を目指す。

⑥サノヤスホールディングスが配電盤・分電盤の松栄電機㈱の株式取得(子会社化)(2022年8月)

概要

 サノヤスホールディングス㈱(東証STD7022、製造・建設設備等)は、配電盤・分電盤等の製造販売を手掛ける松栄電機㈱(純資産581百万円、総資産998百万円、売上高665百万円、営業利益27百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 松栄電機は、1941年の創業以来80余年、配電盤・分電盤・制御盤メーカーとして長年に亘り顧客のニーズと信頼に応え、特に通信基地局等の通信インフラ向けに多数の実績を重ねている。サノヤスホールディングスは、松栄電機を買収することで、サノヤスホールディングス子会社のハピネスデンキ㈱との相乗効果を追求、営業面の相乗効果、技術・生産面の相互補完により、当該事業分野の更なる成長と収益の強化を目指す。

⑦ダイヘンが配電用変圧器・配電盤の東北電機製造㈱の株式取得(子会社化)(2023年10月)

概要

 ㈱ダイヘン(東証PRM6622、変圧器、溶接機、半導体製造装置向け電源製造等)は、配電用変圧器・配電盤などの製造・修理、販売、据付工事を手掛ける東北電機製造㈱(純資産9,500百万円、総資産11,548百万円、売上高8,327百万円、営業利益142百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 東北電機製造は、東北電力㈱(東証PRM9506、電力・ガス供給)の子会社として、配電機器、配電盤等の制御・保護装置等の開発・設計ならびに製造・販売、メンテナンスに至るまで、一貫した品質管理体制のもと、品質性・信頼性の高い製品の供給を行っている。ダイヘンは、東北電機製造を買収することで、東北地方での販売拡大を図るとともに、東北電機製造とのシナジーによる生産体制の強化を図る。

⑧八洲電機が電気器具の東京デンキ㈱の株式取得(子会社化)(2024年10月)

概要

 八洲電機㈱(東証PRM3153、企業向け電気機器商社)は、電気器具の製造及び販売、一般建築機械及び電気器具の賃貸、高低圧分電盤の製造販売を手掛ける東京デンキ㈱(売上高790百万円、当期純利益79百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 東京キデンは、電気器具の設計製造販売、一般建設機械及び電気器具のレンタルを主たる事業としている。八洲電機は、東京キデンを買収することで、八洲電機のコア技術(電源システム)の「進化と成長」の実現を目指す。

⑨サノヤスホールディングスが制御盤・操作盤の㈱ヤマガタ共同の株式取得(子会社化)(2025年7月)

概要

 サノヤスホールディングス㈱(東証STD7022、製造・建設設備等)は、各種制御盤・操作盤等の製造販売を手掛ける㈱ヤマガタ共同(純資産223百万円、総資産302百万円、売上高298百万円、営業利益10百万円)の株式を取得し子会社化。

狙い

 ヤマガタ共同は、各種制御盤・操作盤メーカーとして板金加工、組立配線、検査までを自社工場で一貫して手掛け、取引先の多様なニーズに応えながら信頼と実績を積み重ねている。サノヤスホールディングスは、ヤマガタ共同を買収することで、サノヤスホールディングス子会社のハピネスデンキ㈱、松栄電機㈱との相乗効果を追求、営業面での相乗効果に加え、技術・生産面での補完関係を活かし、当該分野における事業成長と収益力の強化を目指す。

所感

 配電盤・制御盤業界は、「顧客密着・地域密着型ビジネス」、「カスタム設計・個別対応が多い」、「売上規模が数十億円以下の企業が大半」といった業界特性から、大型再編ではなく、中堅・中小の配電盤・分電盤・制御盤メーカーを着実に取り込むロールアップ型M&Aが多くみられる。買い手企業は、三菱電機㈱、㈱日立製作所、㈱東芝といった大手電機メーカーよりも、準大手・専門商社・装置系上場企業等が中心。買収の狙いは、技術者(設計・配線・検査)の確保、特定業界(官公庁、データセンター、インフラ、FA)の実績獲得、短納期・多品種対応力の内製化等が挙げられる。今後の配電盤・制御盤業界は、「脱・単なる箱モノ」へ進む可能性が高い。M&A・アライアンスの視点としては、盤の設計・製作、板金・組立・配線といった領域から、監視制御ソフト、IoT・遠隔監視、データセンター・再エネ・EV関連対応、アフターサービス・保守といった領域の強化を目指したものに発展する可能性が高く、「制御盤メーカー」×「ソリューション」の組み合わせによるビジネスモデルの深化が期待される。配電盤・制御盤業界の今後のM&A動向から目が離せない。

以上

M&A・アライアンス組成の三澤公認会計士事務

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