建設コンサルタント業界の戦略的M&Aから読み解くセクタートレンド

建設コンサルタント業界はM&Aが活発

 建設コンサルタント業界は、地域補完や垂直統合、技術革新による効率化、人材確保といったニーズを背景にM&Aが加速、加えて異業種からの新規参入も進み、業界再編の様相を呈している。以下、2023年以降に実行された意欲的なアライアンス事例13例を確認する。

①メイホーホールディングスが建設コンサルタントの㈱フジ土木設計の株式取得(子会社化)(2023年3月)

概要

 ㈱メイホーホールディングス(東証GRT7369、建設関連サービス事業、人材関連サービス事業、建設事業、介護事業)は、北海道を中心に建設コンサルタント、補償コンサルタント、測量を手掛ける㈱フジ土木設計の株式を取得し子会社化。

狙い

 メイホーホールディングスは、建設関連サービス事業セグメントの強化を図りつつ、地方に基盤を持つ企業グループとして地域社会の課題(インフラの老朽化、災害対応、地域経済の活性化等)に取り組み、技術革新を推進。地域の安全・安心の確保と雇用維持の実現を目指す。

②ERIホールディングスが建設コンサルタントのアジアコンサルタント㈱の株式取得(子会社化)(2023年10月)

概要

 ERIホールディングス㈱(東証STD6083、建築確認検査業務、建設コンサルタント)は、三重県を基盤に建設コンサルタントを手掛けるアジアコンサルタント㈱の株式を取得し子会社化。

狙い

 ERIホールディングスは、住宅・建築物に関する第三者検査機関としての検査事業に加え、建設コンサルタントや測量等のソリューション事業を展開。ERIホールディングスは、アジアコンサルタントを買収することで、近畿地方における土木インフラ関連事業の体制を強化し、地域基盤整備への貢献を目指す。

③DNホールディングスが建設コンサルタントの㈱ウエルアップの株式取得(子会社化)(2024年2月)

概要

 DNホールディングス㈱(東証STD7377、建設コンサルタント)は、奈良県で建設コンサルタント、地域包括事業、地元支援事業、住環境の提案及びデザイン、コンピューターを用いたソフトウエア設計、プログラム開発を手掛ける㈱ウエルアップの株式を取得し子会社化。

狙い

 DNホールディングスは、子会社である大日本ダイヤコンサルタント㈱を通じ、橋梁設計、地質・地盤の調査・解析のトップランナーとして「人と自然が微笑む社会」の実現を目指し、地質・地盤の調査・解析にとどまらず、道路やまちづくりに対する調査・計画・設計・監理業務、自然災害に関する防災・減災に関する業務、官民連携による事業促進PPPやPark-PFI、再生可能エネルギー分野のコンサルタント業務等、その業務領域の拡大に取り組む。受注獲得の機会増加が今後見込まれる発注者支援業務や施工管理業務に対し、ウエルアップがもつノウハウと、DNホールディングスの顧客基盤及び技術によるシナジー創出を目指す。

④NJSが建設コンサルタントの㈱ドートの株式取得(子会社化)(2024年3月)

概要

 ㈱NJS(東証PRM2325、上下水道コンサルタント)は、北海道における上下水道施設の調査、設計、測量等の技術コンサルティングを手掛ける㈱ドートの株式を取得し子会社化。

狙い

 NJSは、上下水道等のインフラのライフサイクルを通したコンサルティングとソフトウエアの開発・提供、調査・設計・施工管理・経営コンサルティング、防災減災対策、環境計画、環境アセスメント等の業務を提供。NJSは、水インフラのコンサルタント市場は1,500億円程度と、建設市場の約5%であるが、今後も老朽化対応や災害対応等でこの水準が維持され、災害対策、改築更新、DX対応、PPP事業等により拡大していくと見込む。NJSは、ドートの買収を通じ、コンサルタント市場の拡大とPPP市場の拡大に対応して成長を図る。

⑤建設技術研究所が建設コンサルタントの湯浅コンサルタント㈱の株式取得(子会社化)(2024年5月)

概要

 ㈱建設技術研究所(東証PRM9621、建設コンサルタント)は、京都市に拠点を置き、上水道部門や道路部門の建設コンサルタントを手掛ける湯浅コンサルタント㈱の株式を取得し子会社化。

狙い

 建設技術研究所は、河川、ダム、道路、環境、情報等の公共事業及び民間事業の社会資本整備に関する建設コンサルタント業を展開し、研究開発やM&A等を積極的に行うことにより、「事業プロセスの拡大」「事業分野の拡大」「市場(顧客)の拡大」を推進。本件M&Aにより、湯浅コンサルタントが有する地域基盤や技術力を取り込み、グループ内の技術・ノウハウの共有を進めるとともに、近畿エリアでの市場拡大を図る。これにより、グループ全体のとしての事業拡大と競争力強化を目指す。

⑥ERIホールディングスが建設コンサルタントの㈱福田水文センターの株式取得(子会社化)(2024年5月)

概要

 ERIホールディングス㈱(東証STD6083、建築確認検査業務、建設コンサルタント)は、北海道札幌市に拠点を置き、水環境の調査・分析やインフラの計画設計等を手がける㈱福田水文センターの株式を取得し子会社化。

狙い

 福田水文センターは、北海道や東北を中心に河川環境の建設コンサルタント、環境調査測量、環境分析試験業を提供。本件M&Aは、ERIホールディングスにとって北海道エリアにおける5社目の建設コンサルタントの買収にあたり、グループ内の連携を通じて、地域に根差した土木・環境事業をより一層推進する方針。福田水文センターが有する水環境領域の知見と、グループのインフラ検査・評価技術を組み合わせることで、社会の安全・安心に資する統合的なソリューションの提供を目指す。

⑦E・Jホールディングスが建設コンサルタントの日栄プランニング㈱の株式取得(子会社化)(2024年5月)

概要

 E・Jホールディングス㈱(東証PRM2153、総合建設コンサルタント)は、福岡市に本社を置き、建設コンサルタントとして技術者派遣を中心に九州地域を主な営業基盤とする日栄プランニング㈱の株式を取得し子会社化。

狙い

 E・Jホールディングスは、官公庁の公共事業等において、企画から施工監理までを一貫して提供できる総合建設コンサルタント事業を展開。九州地域での業容拡大を課題とし、日栄プランニングをグループ化することで、九州地域における事業基盤の一層の強化と事業規模拡大を目指す。

⑧ERIホールディングスが建設コンサルタントの国土工営コンサルタンツ㈱の株式取得(子会社化)(2024年6月)

概要

 ERIホールディングス㈱(東証STD6083、建築確認検査業務、建設コンサルタント)は、大阪府大阪市に本社を置き、橋梁他構造物の設計、点検調査、補修・補強設計を手掛ける国土工営コンサルタンツ㈱の株式を取得し子会社化。

狙い

 本件M&Aは、関西地域で3社目の建設コンサルタントの買収にあたり、国土工営コンサルタンツとの連携により、地域における土木インフラ関連事業を力強く推進するとともに、国土工営コンサルタンツのBIM/CIMモデリングに関する専門性を活かして、グループ内のBIM/CIM活用の一層促進を図る。

⑨E・Jホールディングスが建設コンサルタントの㈱東京ソイルリサーチの株式取得(子会社化)(2024年9月)

概要

 E・Jホールディングス㈱(東証PRM2153、総合建設コンサルタント)は、地質調査を軸に地盤構造調査・解析、耐震診断、土木設計等を手掛ける㈱東京ソイルリサーチの株式を取得し子会社化。

狙い

 東京ソイルリサーチは、地盤の構造的な観点から建造物の安全性を担保する提案を強みとし、民間の大規模プロジェクトを中心に確かな技術力と豊富な実績、強固な顧客基盤を有している。E・Jホールディングスと東京ソイルリサーチは、事業領域、顧客基盤ともに重複が少ないことから、東京ソイルリサーチがE・Jホールディングスに加わることで、双方の強みを補完し合い、新たな価値の創造・技術力拡大が期待され、相互の顧客基盤に対して従来以上の多様かつ高度な技術サービスを提供する体制の構築を目指す。

⑩建設技術研究所が建設コンサルタントの広建コンサルタンツ㈱の株式取得(子会社化)(2024年10月)

概要

 ㈱建設技術研究所(東証PRM9621、建設コンサルタント)は、広島県福山市に本社を置き、1978年の設立以来、建設コンサルタント、測量調査、地質調査等を手掛ける広建コンサルタンツ㈱の株式を取得し子会社化。

狙い

 広建コンサルタンツは、広島県を中心に農林土木分野も含めた広い顧客基盤を有する。建設技術研究所は、「事業プロセスの拡大」「事業分野の拡大」「市場(顧客)の拡大」を推進し、特に、地域の持続可能な発展に寄与するべく、地方自治体との関係強化を重視しており、本件M&Aはその一環。広建コンサルタンツのグループ参画により、グループ全体として地方自治体等への事業展開を加速するとともに、人材及び技術交流を通じて、双方の事業分野を拡大し、サービス品質や業務効率の向上を図る。

⑪東京海上ホールディングスが建設コンサルタントのID&E㈱の株式取得(子会社化)(2025年2月)

概要

 東京海上ホールディングス㈱(東証PRM8766、損害保険、生命保険、金融)は、建設コンサルタント首位のID&E㈱の株式を取得し子会社化。

狙い

 東京海上ホールディングスは、「災害レジリエンスの向上」や「気候変動対策の推進」に向けた事業の拡大と顧客への価値創造を目指しており、その実現には、社会の強靭化に直結するような工学技術に基づいた計画・企画、評価、設計、調査、監理、維持管理、マネジメント、コンサルティング等の経営資源(人財、実績、実務経験、ノウハウ、技術力、研究開発力等)が不可欠であると認識。本件M&Aにより、これらの経営資源と保険事業を組み合わせることで、災害リスクの評価・把握や温室効果ガスの排出量の可視化といった「現状把握」、都市計画・防災設計・ハード対策(物理的な自然災害対策)やエネルギー最適化といった「対策実行」、財物・工事・利益補償といった「経済的補償(保険金支払い)」、被災からの早期復旧再建・ビルドバックベター・再発防止や施設の運営維持管理といった「復旧・維持管理」という、社会の強靭化に関わる4つの各領域においてソリューションを一体的に顧客へ提供することを目指す。

⑫日本エコシステムが建設コンサルタントの㈱三進の株式取得(子会社化)(2025年3月)

概要

 日本エコシステム㈱(東証STD9249、公営競技場の運営受託、高速道路の維持管理、水質管理)は、岐阜県大垣市に本社を置き、建設コンサルタント・補助コンサルタント業務を手掛ける㈱三進の株式を取得し子会社化。

狙い

 三進は、岐阜県をはじめとする地方公共団体や高速道路事業者を主な取引先として、40年を超える取引実績を有する県内の地場有力企業。河川・道路設計、維持管理業務に強みをもつほか、UAV(小型無人航空機)を活用した航空写真測量技術や橋梁・構造物の点検技術等の先進技術のノウハウも有する。本件M&Aにより、日本エコシステムは、総合建設コンサルタント業務に本格参入し、岐阜県で建設コンサルタントを手掛ける子会社㈱日新ブリッジエンジニアリングとの連携により、既存顧客の相互活用や受注可能な業務の規模と範囲の拡大を目指す。

⑬西松建設が建設コンサルタントの扇コンサルタンツ㈱の株式取得(子会社化)(2025年3月)

概要

 西松建設㈱(東証STD1820、総合建設)は、兵庫県神戸市で土木設計、測量、地質調査等を手掛ける扇コンサルタンツ㈱の株式を取得し子会社化。

狙い

 扇コンサルタンツは創業40年の実績を持つ、土木設計、測量、地質調査の総合的なサービスを提供する建設コンサルタント。本件M&Aにより設計部門を強化し、高度経済成長期に建設された道路インフラの老朽化対策、床版取替工事をはじめとする大規模修繕工事を推進する。

所感

 建設コンサルタント業界における典型的なM&A事例は、地場に根差した企業を取り込むことでエリアを拡大し、官公庁や自治体との関係を深める「地域補完・営業基盤の拡充」型。地場企業が有する顧客ネットワークを活かして、グループ全体の受注力強化を図る。次に多いのは「技術獲得」型。建設コンサルタント業界では技術が企業価値の中核であり、M&Aによって、環境・上下水道・耐震・BIM/CIM・UAV測量等特定の技術領域で優位性を持つ企業を買収する。更に、建設会社等が買い手となるM&Aでは、「上流工程への垂直統合」型がみられる。プロジェクトの上流から下流までの一貫受注を狙い、設計・計画段階等の上流工程の強化を狙う。その他、自社が未進出だった領域(再生可能エネルギー、PPP/PFI、防災、航空測量等)に買収先企業のノウハウを活用して参入する「新市場・新セグメントへの新規参入」型や、ESG対応等で保険会社・管理会社等のプレイヤーが新規参入する「異業種プレイヤー新規参入」型がみられる。

 建設コンサルタント業界におけるM&Aは、単なる規模の追求ではなく、地域×技術×業務領域×人材×ESG対応といった多面的な観点から、グループ全体の補完・拡張を目的とする戦略的なものが多いのが特徴。今後も、防災・レジリエンス関連の需要拡大、地方自治体からの包括的受託ニーズの高まり、技術者の高齢化・人材確保競争、といった構造変化に対応する形で、中堅・中小建設コンサルタントの再編が加速するものとみられる。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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