造園工事業界の戦略的M&Aから読み解くセクタートレンド

造園工事業界はM&Aが徐々に増加

 造園工事業界は、公共工事偏重からの脱却や収益基盤の多角化、ESG・グリーンインフラへの対応といったニーズを背景に、M&A・資本提携が徐々に増加している。以下、2019年以降に実行された象徴的なアライアンス事例4例を確認する。

①クミアイ化学工業が造園工事の㈱理研グリーンの株式取得(子会社化)(2019年6月)

概要

 クミアイ化学工業㈱(東証PRM4996、殺虫剤、殺菌剤、除草剤等の農薬、及び精密化学品、産業薬品等の化成品製造)は、緑化関連薬剤・資材の販売 製紙用・産業用薬剤の販売、緑化・造園工事を手掛ける㈱理研グリーンの株式を取得し子会社化。

狙い

 理研グリーンは、非農耕地分野のゴルフ場・高速道路等を対象にした緑化資材の販売、主に製紙会社に対する殺菌・防腐剤等の工程助剤及び剥離・コーティング剤等の機能性薬品の販売、造園工事・土木工事・緑地管理業務等を行っている。クミアイ化学工業は、理研グリーンを買収することで、農耕地・非農耕地全体で自社原体最大化に向けた戦略の継続的な立案・実行、非農耕地向け農薬の商品ラインナップ構築、販売力強化、化成品事業、緑化事業及び産薬事業の強化を目指す。

②積水ハウスが造園工事の㈱岐阜造園の株式取得(関連会社化)(2023年2月)

概要

 積水ハウス㈱(東証PRM1928、戸建住宅事業、賃貸・事業用建物事業、建築・土木事業、賃貸住宅管理事業、リフォーム事業、開発事業、国際事業等)は、公共施設・公園・ゴルフ場・リゾート施設等の造成・造園緑化工事、屋上・壁面緑化やビオトープ等の自然共生緑化工事を手掛ける㈱岐阜造園(東証STD1438)の株式を取得し関連会社化。

狙い

 岐阜造園は、創業以来95年で培ったエクステリアに関する工事監理・デザイン・知識や技能を強みとする外構造園を専業とした企業であり、個人住宅から公共空間まで人と自然の関わるあらゆる空間において、エクステリア・造園緑化を提供している。積水ハウスは、岐阜造園を関連会社化することで、大規模分譲地、都市再開発、大規模プロジェクト等における共同計画、魅力的な外構・造園・ランドスケープの提案力向上等における協力関係の更なる強化を目指す。

③アース製薬が園芸資材販・売造園工事の㈱プロトリーフの株式取得(子会社化)(2025年2月)

概要

 アース製薬㈱(東証PRM4985、虫ケア用品等の家庭用品事業と異物混入・汚染防止の総合環境衛生事業)は、園芸資材の製造・卸・小売及び造園の設計、施工、管理を手掛ける㈱プロトリーフの株式を取得し子会社化。

狙い

 プロトリーフは、園芸資材の製造・卸・小売並びに造園事業を展開し、家庭菜園向けの「土」のオリジナル製品を多数手掛けるなど、各種ミネラル、有機成分を混合した高品質の培養土を商品化しており、園芸用培養土では高い市場シェアを有している。アース製薬は、プロトリーフを買収することで、両社が有する経営資源(ブランド力・商品開発力・販売チャネル等)をよりフレキシ ブルに活用、今後の更なる発展を目指す。

④アートグリーンが造園工事の㈱アートグリーン溝口造園の株式取得(子会社化)(2025年3月)

概要

 アートグリーン㈱(名証NXT3419、胡蝶蘭を中心とした生花の卸売業)は、造園、外構(エクステリア)、庭園の設計と管理およびガーデン資材販売を手掛ける㈱アートグリーン溝口造園の株式を取得し子会社化。

狙い

 アートグリーン溝口造園は、一級造園技能士や一級造園施工管理士などの資格を持ち神奈川県を中心に造園事業を展開。神奈川県造園業協会の青年優秀技能者表彰や全国都市緑化よこはまフェア庭園出店コンテストで銀賞を受賞するなど、造園、庭園管理では一定の評価を得ている。アートグリーンは、アートグリーン溝口造園を買収することで、植物とふれあう機会の創出を手伝う屋外緑化や、オフィス、ショップ、商業施設などのひとの集まる場所に緑を提供すること強化、日々の生活空間の中に快適な空間を演出する屋内緑化の事業構築を目指す。

所感

 クミアイ化学工業およびアース製薬の事例はいずれも、「資材・薬剤メーカーによる園芸・造園企業の取り込み」であり、農耕地・非農耕地を通じた自社原体の販売最大化や、園芸市場におけるブランド・チャネル強化といったバリューチェーン統合を志向したM&Aである。積水ハウスの事例は、グリーンインフラや生物多様性・ランドスケープ設計といった政策及び市場トレンドを踏まえ、「住宅・開発・インフラ事業 × 造園・環境調査・ランドスケープ」の一体提案力を高める狙いがある。造園工事業界では、今後、住宅・インフラ・まちづくり・観光・スポーツ施設等のビジネスモデルの中で、造園機能を組み込む取り組み、企画・設計・施工・維持管理の一気通貫体制を強化する取り組み、同業によるエリア拡大・人材獲得を目指したM&A、が増加する可能性が高い。建設業界、住宅業界、エクステリア業界、化学業界等を含む造園工事業界の今後のM&A動向が大いに注目される。

以上

M&A・アライアンス組成の三澤公認会計士事務

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