①不動テトラが地盤改良工事の愛知ベース工業㈱の株式取得(子会社化)(2020年10月)
概要
㈱不動テトラ(東証PRM1813、土木・地盤)は、住宅基礎の地盤改良工事、地盤調査他を手掛ける愛知ベース工業㈱の株式を取得し子会社化した。
狙い
愛知ベース工業は、愛知県岡崎市に本社を置き、愛知県を中心として主に戸建住宅基礎の地盤改良工事を手掛け、近年は戸建住宅からより規模の大きい建築構造物基礎の地盤改良工事へのシフトを目指している。不動テトラは、愛知ベース工業を買収することで、戸建住宅基礎から大規模土木・建築構造物基礎までの幅広い地盤改良工事を手掛けることが可能となり、収益基盤の多様化を目指す。
②サムシングが鉄道関連施工工事の㈱東名の株式取得(子会社化)(2022年2月)
概要
SAAFホールディングス㈱(東証GRT1447、地盤調査改良)の子会社で地盤調査の㈱サムシングは、鉄道関連施工工事(地盤改良工事、土木造成工事、基礎杭工事等)を手掛ける㈱東名の株式を取得し子会社化した。
狙い
東名は、鉄道関連施工工事を得意領域とし、他にも土木造成工事や基礎杭工法等の技術力を保有している。サムシングは、東名を買収することで、地盤関連サービスの拡充と事業規模および営業・技術面などの融合による事業機会の拡大を図る。
③ジェコス㈱が特殊コンクリート工事の㈱オトワコーエイの株式取得(子会社化)(2022年4月)
概要
ジェコス㈱(東証PRM9991、仮設鋼材リース)は、特殊コンクリート工事、杭打、基礎工事他を行う㈱オトワコーエイの株式を取得し子会社化した。
狙い
オトワコーエイは、静岡県沼津市を中心に地盤改良、本杭工事などの基礎工事や仮設工事、障害物撤去工事等の施工工事を手掛けている。また、オトワコーエイは、狭隘地や急傾斜地、空頭制限地、河川・海上などの特殊環境下における高い技術力を有している。ジェコスは、オトワコーエイを買収することで、「地下工事一式受注」の体制構築を進めると共に、オトワコーエイの高い施工技術力を活用することで、事業領域の拡大と収益力の強化を目指す。
④矢作建設工業が総合建設の北和建設㈱の株式取得(子会社化)(2023年3月)
概要
矢作建設工業㈱(東証PRM1870、土木・建築)は、東急不動産ホールディングス㈱(東証PRM3289)の子会社で、総合建設業、一級建築士事務所、宅地建物取引業を営む北和建設㈱の株式を取得し子会社化した。
狙い
北和建設は、京都府有数の建設会社としてマンション工事を中心に、ホテルや福祉施設等の建築工事を実施している。矢作建設工業は、北和建設を買収することで、地盤である東海圏にとどまらず、リニア(中央新幹線)経済圏での事業拡大を目指す。
⑤ナカノフドー建設が一般土木工事の㈱トライネットホールディングスの株式取得(子会社化)(2023年3月)
概要
㈱ナカノフドー建設(東証STD1827、建設・不動産)は、一般土木工事、建築工事、不動産事業、リフォーム事業を営む㈱トライネットホールディングスの株式を取得し子会社化した。
狙い
トライネットホールディングスは、長野県飯田市を基盤として、土木事業を主要事業とする総合建設業、不動産事業、リフォーム事業を展開している。ナカノフドー建設は、トライネットホールディングスを買収することで、土木工事分野の技術力向上や競争力強化を目指す。
⑥高島が地盤調査の岩水開発㈱の株式取得(子会社化)(2023年6月)
概要
高島㈱(東証PRM8007、建材・産業資材)は、地盤調査、地盤改良工事、土木工事を手掛ける岩水開発㈱の株式を取得し子会社化した。
狙い
岩水開発は、住宅市場及び安定した成長が見込まれる非住宅市場の基礎補強・地盤改良分野において、高い専門性に基づくハイレベルな技術・ サービスを軸として、岡山県をはじめとする中四国地方を中心にリーディングカンパニーの地位を確立している。高島は、岩水開発を買収することで、岩水開発が有する地盤改良工事における高い施工機能を取得、高島の建材事業とのシナジーを追求する。
⑦SAAFホールディングスが場所打ちコンクリート杭工事の㈱ユーシンの株式取得(子会社化)(2024年12月)
概要
SAAFホールディングス㈱(東証GRT1447、地盤調査改良)は、場所打ちコンクリート杭工事等を手掛ける㈱ユーシンの株式を取得し子会社化した。
狙い
ユーシンは、関東地区を中心に場所打ちコンクリート杭工事を展開しているまた、難度の高い工事の施工が可能なだけでなく、柔軟な施工体制を組むことができるため、取引先からの高い信頼を得ており、複数の大手の取引企業より専門施工会社としての認定を受けている。さらに、工事用治具、工法の特許の保有および日本において8社のみ施工が可能な「T-EAGLE杭工法」の認定会社であるなど、高い技術力を有している。SAAFホールディングスは、ユーシンを買収することで、ユーシンのノウハウを活用し、場所打ちコンクリート杭工事事業の拡大を目指す。
⑧日特建設が地盤改良の麻生フォームクリート㈱の株式取得(子会社化)(2025年1月、予定)
概要
日特建設㈱(東証PRM1929、基礎、地盤改良、法面等特殊土木工事)は、気泡コンクリートの現場施工等を手掛ける麻生フオームクリート㈱の株式を公開買付けにより取得し子会社化する。
狙い
麻生フオームクリートは、気泡コンクリートの現場施工、地盤改良工事の施工、その他工事の施工及び工事用資材(起泡剤等)の商品の販売等を主な内容として事業活動を展開している。日特建設は、麻生フォームクリートを買収することで、日特建設及び麻生フオームクリートが保有する情報収集網や採算性試算などのノウハウを共有、より効率的に案件情報を獲得することを目指す。また、技能労働者不足が建設業界を取り巻く喫緊の課題である中、人材採用・育成等分野で協力関係を構築し、技能労働者の確保・スキルアップを図る。
基礎工事業界のM&Aの特徴
規模の拡大
基礎工事業界では、M&Aを通じて企業規模を拡大し、施工能力や資材調達力を強化する取り組みが行われている。特に、大型プロジェクトを受注するためには、業務範囲を広げる必要があるため、同業他社の買収が行われる。
専門技術の取得
基礎工事業界には高度な技術力が求められるため、M&Aを通じて特定の専門技術を持つ企業を取り込むことが行われている。これにより、新技術や効率的な工法を迅速に取り入れることが可能となる。
地域・市場の拡大
地域別に市場の特性が異なるため、M&Aを利用して新たな地域や市場に進出する。特に、インフラ整備が進む地域での新規参入を狙った買収が行われることが特徴的。
所感
基礎工事業界は、建設工事件数の減少、建築費の高騰、後継者不在の要素が相まって業界全体としてM&Aの動きが活発になっている。建設業界は、重曹下請け構造であり、工事可能範囲の拡大やエリア拡大による企業発展を目的としたM&Aが今後更に増加することが予想される。
以上
