あいホールディングス㈱(東証PRM3076)のM&Aの特徴・傾向
- 成長分野への積極的な投資:半導体、IoT、データ分析など、今後の成長が期待される分野への投資を通じて、事業ポートフォリオの強化を図っている。
- 既存事業との連携:新たに取得した技術やサービスを、既存のセキュリティシステムやネットワーク技術と組み合わせることで、シナジー効果を追求している。
- 社会的課題への対応:環境問題や省エネルギー、地域インフラの効率化など、社会的課題への対応を意識した事業展開を進めている。
あいホールディングスのM&A実績
①ナノ・ソルテックの子会社化(2022年)
概要
半導体製造・検査装置の新製品・中古装置の国内外での売買、半導体製造・検査装置のパーツ(PCB)、消耗品の販売、半導体製造・検査装置の立上げ・メンテナンスを手掛けるナノ・ソルテック㈱(2021年3月期純資産609百万円、総資産1,387百万円、売上高963百万円、営業利益132百万円)を子会社化。
狙い
ナノ・ソルテックは、半導体製造・検査装置の中古装置を買取り、新品時スペックまで修復して販売するリファブ販売に強みを持つ半導体装置の販売会社で、中古半導体製造・検査装置に特化して販売・保守ビジネスを行っている。あいホールディングスは、ナノ・ソルテックを買収することで、収益性の高い半導体装置業界へ参入、ポートフォリオの強化を図ると共に、あいホールディングスの販売チャネルを活用することにより、国内外の大手半導体メーカー等への販路拡大・買取強化といったシナジー効果を創出し、ナノ・ソルテックの中古半導体装置事業の更なる成長を目指す。
②マギーと資本業務提携(2022年)
概要
パーソナルプロモーション事業、データ分析事業、リテールマーケティング事業に係る事業企画・販売、アグリ事業を手掛けるマギー㈱(2021年3月期純資産88百万円、総資産175百万円、売上高289百万円、営業利益▲128百万円)と資本業務提携。
狙い
マギーは、全国のスーパーマーケットやドラッグストア等の小売店のPOS端末から取得する購買データ(顧客の属性と紐づいたID-POSデータ)を活用し、個人の購買行動に合わせた商品・サービスのプロモーションを行うデータサイエンス企業。あいホールディングスは、主力のセキュリティシステム事業において、小売業を含む多くの法人顧客に監視カメラソリューションを提供しているが、監視カメラ業界においては、従来の防犯としての用途に加え、買い物客の店舗内での動きを分析するなど、マーケティングへの活用といった動きも広がっている。また、脱炭素システム事業における省エネ・節電システムは、業務用エアコンの室外機を制御することで使用電力量を削減できるシステムで、小売業の店舗やオフィスにおいても、コスト削減及び CO₂削減に効果を発揮する製品。あいホールディングスは、マギーと資本業務提携することで、両社の商流を活かしたクロスセル、また、映像ソリューションとしてのマーケティングと購買データ分析によるプロモーション、空調制御による使用電力削減といった小売店舗の効率化ソリューションとしての提案を行うこと等で、シナジー効果を創出、更なる事業拡大を図る。
③Innovation Farmの子会社化(2022年)
概要
IoT プラットフォームの提供及びロボット・IoT 関連分野の受託開発を手掛けるInnovation Farm㈱(2021年6月期純資産52百万円、総資産209百万円、売上高247百万円、営業利益12百万円)を子会社化。
狙い
Innovation Farmは、ロボット、ネットワーク、IoT技術に強みを持ち、ハードウェアからアプリケーションサービスまで一気通貫で提供するIoT Farm(IoT開発プラットフォーム)の提供及び、ロボット・IoT関連分野等での受託開発を行っている。あいホールディングスは、Innovation Farmを買収することで、あいホールディングスが培ってきたIoT技術との相乗効果による更なる開発力の向上を図ると共に、あいホールディングスの法人販路を活用したInnovation Farmのソリューション拡販によるシナジー効果実現を目指す。
④マイクロ・トーク・システムズの子会社化(2023年)
概要
RFID(IC タグ)を利用した電気・電子機器の開発・製造・販売、省エネルギー・環境改善機器の販売を手掛けるマイクロ・トーク・システムズ㈱(資本金11百万円)を子会社化。
狙い
マイクロ・トーク・システムズは、省エネ性と経済性に優れた次世代空調システムecowinの販売代理店事業を行っており、学校体育館空調のパイオニアとして、既に2018年より約50件の導入実績を持つ。あいホールディングスは、マイクロ・トーク・システムズを買収することで、加速する社会の脱炭素化に資する新たな製品ラインナップを拡充、学校及び自治体等の体育館へ向けて省エネ空調の更なる拡販を進める。
⑤岩崎通信機と資本業務提携(2023年)・子会社化(2024年)
概要
情報通信、印刷システム、電子計測分野における機器の開発、製造、販売及びサービスの提供、不動産の賃貸等を手掛ける岩崎通信機㈱(2023年3月期純資産24,176百万円、総資産35,316百万円、売上収益22,903百万円、営業利益▲983百万円)と資本業務提携、後に子会社化。
狙い
岩崎通信機は、「スピードと創意、そして対話を何よりも重んじ、明るく活力のあるチャレンジ精神に溢れた会社」を経営基本として掲げ、情報通信、印刷システム、電子計測の各事業分野で、顧客の多様なニーズに対して個性的で品質の優れた商品及びサービスを提供している。あいホールディングスは、岩崎通信機と資本業務提携(買収)することで、あいホールディングスを発注者、岩崎通信機を受託者とする受託生産事業の拡大、両社の受託生産事業に関連する共同研究開発、あいホールディングス子会社のグラフテック㈱の計測機器事業を岩崎通信機に譲渡すること等による経営リソースの最適化、計測機器事業及び受託生産事業におけるリソース及びノウハウの相互提供等を進める。
⑥ティエスティの子会社化(2023年)
概要
フィールドサポートサービス(各種技術サポート)、中古装置関連業務(リファビリッシュ及びインスタレーション、部品販売)を手掛ける㈱ティエスティ(2022年9月期純資産275百万円、総資産346百万円、売上高331百万円、営業利益96百万円)を子会社化。
狙い
ティエスティは、半導体製造・検査装置のフィールドサポートサービスを主要事業とし、装置の延命化やメンテナンス費用のコストダウンという市場の課題に対して、装置の改善対応、予防保全の推進や中古装置の導入支援などに取り組んでいる。あいホールディングスは、ティエスティを買収することで、あいホールディングス子会社のナノ・ソルテック㈱とのシナジー効果を追求、ナノ・ソルテックが自社開発した半導体異物検査装置「WiN-10」の拡販を進める上で増強が必要となるサポートサービスをティエスティが行うことに加えて、中古装置の売買においても取り扱い範囲を拡大させる。
⑦ミークと資本提携(2024年)
概要
IoTサービス事業者及びDXを推進する企業向けに、NoCode IoT/DX Platform「MEEQ(ミーク)」を展開するミーク㈱と資本提携。
狙い
ミークは、IoT プラットフォーム「MEEQ」を通じてIoT化・DXに必要となる通信、ハードウェア、ソフトウェア、AIなど様々な機能をワンストップで提供し、企業のDX推進を支えている。あいホールディングスは、ミークと資本提携することで、ミークの持つIoTに関する技術力・知見と、あいホールディングスの提供する IoTデバイス、サービスを連携、IoTをより身近なものにし、DXを実現することで、社会課題解決への貢献を目指す。
⑧Spakonaと資本業務提携(2024年)
概要
法人向けソフトウェアサービスの企画・開発・運営を手掛ける㈱Spakonaと資本業務提携。
狙い
Spakonaは、「世界を最適に設計する」をミッションに掲げる、2020年設立の AI開発企業。生成AI、画像処理、3次元形状処理、音声処理といった「ディープラーニング(深層学習)」などの最先端の機械学習技術とシステム開発能力を有し、小売業、金融業、化学メーカー、運輸業界をはじめとする多様な業界の顧客向けに、AIを活用したシステムを提供している。あいホールディングスは、Spakonaと資本業務提携することで、Spakonaが持つ強みである画像処理AIや VLM(Vision Language Model)などの生成AI技術を組み合わせ、あいホールディングスの生産性の向上及び商品の競争力強化に取り組む。
⑨ナカヨの株式取得(子会社化)(2025年)
概要
ビジネスホン等情報通信機器の開発、製造及び販売を手掛ける㈱ナカヨ(2024年3月期純資産15,784百万円、総資産21,287百万円、売上高17,220百万円、営業利益▲660百万円)を子会社化。
狙い
ナカヨは、「良き企業市民として、時代のニーズを先取りした価値を創造し、社会の発展に貢献します」を企業理念とし、主力のIPテレフォニーシステムを中心に、情報通信分野で顧客のニーズに応える製品を提供している。あいホールディングスは、ナカヨを買収することで、あいホールディングス子会社の岩崎通信機㈱との間における開発体制の一本化によるビジネスホン開発の効率化及び投入リソースの再配分、生産拠点の統廃合による生産設備稼働率の向上、ビジネスホン営業体制の再構築及び投入リソースの再配分、資材調達機能の一本化、物流ネットワークの統合等を推進する。
所感
あいホールディングスは、既存事業とのシナジー効果を重視するM&Aを展開。加えて、緻密かつ戦略的なM&Aによって、新規分野へも積極的に進出している。近年は、岩崎通信機やナカヨを相次いで買収するなど、M&Aディールの大型化もみられる。先端技術を取り込みつつ、複数の事業領域において産業の深耕を進める、あいホールディングスの今後の更なる飛躍が大いに期待される。
以上