概要
テスホールディングス㈱(東証PRM5074)は、2024年8月14日、2030年6月期を最終年度とする5か年の中期経営計画「TESS Transformation 2030(2025-2030)」を発表した。
2030年6月期の数値目標は、売上高1,230億円(2024年6月期実績306億円)、営業利益134億円(同23億円)、ROE11%(同2.9%)、とした。
施策
- 系統用蓄電所の開発:FIT太陽光の開発で培ったノウハウにより開発パイプラインを拡大。開発した蓄電所についてEPCを受託する。現時点の開発パイプライン:容量約2,000MW(約30件)。長期脱炭素電源オークションや、インフラ会社等をオフテイカーとしたトーリング方式等の活用により、2030年までに700MW以上の案件組成を目指す。O&M及び運用管理までワンストップで受託することで、エネルギーサプライ事業の拡大にもつなげる。
- FIT太陽光のFIP転換+蓄電池併設(自社再エネ発電所向け):FIT制度による出力制御の多い九州エリアを対象に、自社再エネ発電所のFIP転換+蓄電池併設による売電収入向上を図る。自社案件によるFIP転換+蓄電池併設の実績をエンジニアリング事業の販売拡大に有効活用する。出力制御の想定シナリオによっては、九州エリア以外にも対象を拡大する。
- FIT太陽光のFIP転換+蓄電池併設(顧客向け):九州エリアを中心に、FIP転換+蓄電池併設の提案を25/6期~28/6期にかけて注力、EPCの売上拡大を図る。系統用蓄電所と併せて蓄電システム関連事業全体を拡大することで、蓄電池購買力の強化、仕様の平準化による効率化等を通じてコストダウンを図る。O&M及び運用管理まで一貫して受託することで、エネルギーサプライ事業の拡大につなげる。
- 資源循環型バイオマス燃料事業:自社グループの佐賀伊万里バイオマス発電所向け需要を背景に、積極的に仕入元を開拓・拡大。PKS燃料販売について、28/6期を目標に外部向け:20万t/年、佐賀伊万里バイオマス発電所向け:20万t/年に拡大する(合計40万t/年)。EFBペレットについては、25/6期中に小規模工場での生産・販売を開始し、量産化に向けた研究開発を継続。大規模商業化に向けて、中計期間に10万t/年の製造能力の獲得を目指す。EFBペレットは残渣物を有効利用するため木質ペレットと比較して環境負荷が圧倒的に低く、環境意識の高いユーザーに訴求。将来的に、様々な農業残渣物のバイオマス燃料への有効活用を検討する。
- 省エネ・再エネソリューション(太陽光・CGS等既存分野):ニーズは堅調であり、引き合いがリソースを上回る状況が継続採用の強化による人員増加により売上・利益の拡大を図る。利益率が高い案件を選別して受注する戦略にシフトする。導入方法(買取or PPA等)については、ユーザーのニーズを重視し、ニーズに合った形での導入を機動的に提案することで、全体としての導入数を拡大していく。豊富な導入実績による顧客基盤を活かし、既存ユーザーの更なる脱炭素ニーズを先回り。
所感
同社は、持続可能な社会の実現に向けて「Total Energy Saving & Solution」を経営理念として掲げ、都度受注(フロー)型ビジネスである「エンジニアリング事業」及びランニング収益(ストック)型ビジネスである「エネルギーサプライ事業」を展開。同社は、従来の省エネ・再エネソリューションに加えて、蓄電システムやバイオマス燃料事業を新たな成長分野として位置づけ、これらの分野への集中的な投資を通じて事業構造の転換を図る。また、FIT(固定価格買取制度)からFIP(市場連動型買取制度)への転換と、蓄電池システムの導入拡大によって電力の安定供給を実現し、収益性の向上を目指す。特に「蓄電所EPC」の開発による売上拡大や、蓄電池を併設した再エネ発電所の構築によって、エネルギー分野における持続可能な成長を目指している点が注目される。同社はこれまでにバイオマス発電所や太陽光発電所運営の強化を目的に、複数のM&Aを通じて継続的な成長を図っており、同社の今後のアライアンス政策を含む取り組みが注目される。
- 挑戦度☆☆
- 戦略度☆☆
- 期待度☆☆☆
以上