配電盤・制御盤メーカー4社の経営戦略と今後の展望

概要

 日本の主要な配電盤・制御盤メーカーである、日東工業㈱(東証PRM6651、2025年3月期純資産116,507百万円、総資産183,897百万円、売上高184,683百万円、営業利益13,432百万円)、戸上電機製作所㈱(東証STD6643、2025年3月期純資産22,652百万円、総資産32,402百万円、売上高27,648百万円、営業利益3,369百万円)、サノヤスホールディングス㈱(東証STD7022、2025年3月期純資産10,171百万円、総資産27,675百万円、売上高25,006百万円、営業利益1,065百万円)、寺崎電気産業㈱(東証STD6637、2025年3月期純資産51,432百万円、総資産73,896百万円、売上高56,404百万円、営業利益5,618百万円)、の4社は、それぞれ独自の経営戦略を展開している。4社の配電盤・制御盤事業等に関する戦略をまとめ、共通点と相違点を整理する。

日東工業の経営戦略

 配電盤関連機器の製造・販売、情報通信機器の仕入・販売 及び電子部品の製造・販売事業を中心に、事業活動を展開。配電盤、キャビネット、情報通信関連事業といったコア事業は、強い事業として盤石な基盤を構築 するとともに、先進技術を活用し収益性を高めることを目指す。2024年4月、瀬戸工場が稼働開始、「スマートオーダー」システムを活用した自立キャビネッ トの受注拡大。子会社化したテンパール工業㈱(配線用遮断器、漏電遮断器等製造販売)との協業開始により、「設計・開発・生産」における協力体制の構築を通じて、強固なビジネスモデルへの変革を目指す。 成長に向けた戦略投資・M&A強化。今後も、生産自動化やスマートファクトリーなど生産効率化の進展による収益性の強化、販売シス テムの更なる進化と市場浸透促進、グループ会社間の連携強化による事業体制の拡大および強靭化を図る。

戸上電機製作所の経営戦略

 産業用配電機器事業(電子制御器、配電用自動開閉器、配電盤及びシステム機器等の製造販売)、プラスチック成形加工事業、金属加工事業等を展開。戸上電機製作所グループの生産方式であるTPW(Togamigroup Production Way)を推進し、主力製品を中心にさらなるコストダウンや生産体制の最適化を図る。製品開発においても、設計ツールやノウハウを徹底活用し、効率化と迅速化を図る。また、直接部門・間接部門を問わず、AIの導入やDX推進に取り組むことにより、業務効率化と品質向上を目指す。「社会を、地球を、未来を豊かに。」という企業理念に基づき、配電・制御機器の総合メーカーとして築いてきた伝統のもと、事業活動を通じた社会課題の解決により、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価 値の向上に取り組む。

サノヤスホールディングスの経営戦略

 製造業向け事業(ブラストマシン、農機及び特装自動車用部品、乳化・攪拌装置、純水設備、排水処理設備及び膜分離装置、大型食品タンク等各種タンク等)、建設業向け事業(機械式駐車装置、建設工事用エレベーター、空調・給排水・衛生設備、動力制御盤・分電盤・配電盤・操作盤)等を展開。データ流通基盤の強化に対応すべく、 重要な社会インフラとなっているデータセンター向けに配電盤や分電盤を供給。将来に渡ってマーケットが拡大していくことが予想される産業インフラ関連・環境分野(データセンター向けソリューション、インフラ向け常設エレベーター、水処理システムソリューション)を注力分野に選定し、積極投資・M&Aを実行。新商品開発や差別化戦略の推進、メンテ・サービス事業の強化、新マーケットの開発や海外展開等新規事業分野への進出を目指す。

寺崎電気産業の経営戦略

 船舶、ビル、工場等を対象とする配電制御システム、機関監視制御システム、 集合始動器盤、コージェネレーションシステム、メディカルデバイス(医療機器及び臨床検査機器)等のシステム製品の製造販売、その構成部品でもある低圧遮断器(低圧配線用遮断器、低圧気中遮断器、漏電遮断器等)等の電気機器を中心とする機器製品の製造販売等を展開。産業用システム製品は、データセンタ市場、グリーン市場、分散型電源市場等を念頭に、配電制御システムや分散型エネルギーシステム向け製品を機軸として、脱炭素に向けた新エネルギー関連の制御システム、分散型電源市場や国内・海外の鉄道関連とプラント案件等の営業活動を強化し受注・売上増を目指す。

4社の共通点
  • 電気制御:電力インフラ・産業インフラの中核である「配電盤・分電盤・制御盤・操作盤」の設計・製造・販売に従事。社会インフラ・工場・建築設備等の電気制御に不可欠な機器を提供。
  • BtoB主体:官公庁・大手ゼネコン・プラント事業者・造船会社などとのBtoB取引が中心。公共施設、ビル・工場、再生可能エネルギー、船舶、プラント、鉄道等、インフラ全般への納入実績を持つ。
  • 自動化ニーズへの対応:スマートグリッドやIoT対応など、次世代配電・制御技術(リモート監視、IoTセンサー内蔵盤等)への取り組みを強化。
4社の相違点
  • 主軸:日東電工は、分電盤・制御盤・キャビネット等の国内最大手であり、全国ネットの営業網、標準品とカスタム製品のハイブリット展開等を駆使して、EV充電設備、データセンター、再エネなど新分野にも積極展開を進める。戸上電機製作所は、高圧・低圧配電制御機器に強みを有し、九州電力系統への納入実績が豊富、スマート配電・IoT対応盤開発にも注力。サノヤスホールディングスは船舶、レジャー向けに強みを有し、小ロットでの対応力が強み。寺崎電気産業は、船舶向けが特に強く、商船・官公庁船向けで世界的な実績。
所感

 日東工業、戸上電機製作所、サノヤスホールディングス、寺崎電気産業、の配電盤・制御盤メーカー4社は、それぞれに強みと課題を持ちつつ、スマート化、再エネ対応、グローバル化、という共通のテーマに取り組んでいる。電気設備業界全体は、配電・制御盤に対するデジタル対応・遠隔監視・見える化のニーズが急拡大。EV充電、太陽光、風力など再生可能エネルギーとの接続ニーズにも豊富。施工・保守人材の不足や、脱炭素・電力系統の分散化等により、配電・制御システムに求められる機能が今後増々高度化することも予想される。​M&A・アライアンス戦略を含め、各社の動向から目が離せない。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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