ドローン企業3社の経営戦略と今後の展望

概要

 日本の主要なドローン企業である、Terra Drone㈱(東証GRT278A、2024年1月期純資産5,045百万円、総資産7,132百万円、売上高1,152百万円、営業利益3百万円)、㈱Liberaware(東証GRT218A、2024年7月期純資産865百万円、総資産1,517百万円、売上高815百万円、営業利益▲440百万円)、㈱ACSL(東証GRT6232、2024年12月期純資産194百万円、総資産4,563百万円、売上高2,655百万円、営業利益▲2,293百万円)の3社は、それぞれ独自の経営戦略を展開している。3社のドローン事業に関する戦略をまとめ、共通点と相違点を整理する。

Terra Droneの経営戦略

 Terra Droneは、主に産業向けドローンサービスを提供しており、労働力不足、人材コスト増加、危険作業等各種課題へのソリューションとしてドローンを活用、測量、点検、農業、監視など多岐にわたる分野で事業を展開している。特に、インフラやエネルギー分野での活用が進んでおり、国内外でのプロジェクト実績がある。また、ソフトウェア開発にも注力し、ドローンによるデータ収集と解析を効率化するプラットフォームを提供している。経営戦略としては、「新産業で、日本発のグローバルメガベンチャーを創出する」、「低空域経済圏のグローバルプラットフォーマー」を掲げ、グローバルな展開と技術革新を推進し、パートナーシップやM&Aを通じて事業領域の拡大を図っている。

Liberawareの経営戦略

 Liberawareは、屋内専用の産業用小型ドローン「IBIS」を自社開発、ドローン等のハードウェア技術と、撮影画像・映像等の加工・処理・管理といったソフトウェア技術を用いたインフラ施設等へのDXソリューション、狭小空間や危険な環境での点検業務に特化したサービスを提供している。「IBIS」は防塵性や耐熱性を備えており、従来の点検手法では困難だった場所でのデータ収集が可能。経営戦略としては、独自に開発した世界最⼩級の点検用ドローンやデータ編集・解析技術を通して、これまで困難とされていた「狭くて、暗くて、危険な」空間の点検を実現するとともに、従来の点検⼿法では気づくことのできなかった見えないリスクを徹底して可視化することで、屋内設備点検のあり⽅を根本から変革することを目指している。

ACSLの経営戦略

 ACSLは、産業用ドローンを顧客要望に応じてカスタム化・技術検証を実施し、量産型機体の生産、販売を行っており、特に物流やインフラ点検、災害対応などの分野での活用を推進している。高度な制御技術やAIを組みあわせて、人が指示することなくドローンが自ら考えて行動するという自律飛行技術に強みを持ち、GPSが利用できない環境でも高精度な飛行を実現する技術を開発している。経営戦略としては、「自律制御の力でロボットと人の共存を実現し社会インフラをバージョン・アップするグローバルメーカー」を掲げ、国内市場でのシェア拡大とともに、海外展開も視野に入れている。また、政府のドローン関連政策とも連携し、安全保障上の観点から国産ドローンの普及を目指している。

3社の共通点
  • 産業向けドローンの提供:3社とも産業用途に特化したドローンや関連サービスを提供しており、インフラ点検や測量、監視などの分野で活用されている。
  • 技術開発への注力:3社とも自社開発のドローンやソフトウェアを持ち、技術革新を経営の中心に据えている。
3社の相違点
  • ターゲット市場の違い:Terra Droneは幅広い産業分野でのサービス提供を行い、ACSLは物流や災害対応など特定の分野に注力している。一方、Liberawareは狭小空間での点検というニッチな市場に特化している。
  • 事業展開のスケール:Terra DroneとACSLは国内外での事業展開を進めているのに対し、Liberawareは主に国内市場での活動が中心となっている。
所感

 Terra Drone、Liberaware、ACSLのドローン企業3社は、自社の強みを活かした差別化戦略を採りつつ、新市場の開拓を進めている。ドローン企業3社の成果は、様々な産業の効率性を高めると共に、新サービスの勃興に貢献する可能性が高い。今後は、新規参入企業の増加と共に競争が激化することも予想されるが、ドローン企業3社が業界をリードすることで、市場規模の一層の拡大が進む。ドローン企業3社の製品開発や新サービス、M&A・アライアンスを含めた今後の取り組みが大いに注目される。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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