ロボットメーカー3社の経営戦略と今後の展望

概要

 日本の主要なロボットメーカーである、㈱安川電機(東証PRM6506、2024年2月期資本合計408,018百万円、資産合計702,335百万円、売上収益575,658百万円、営業利益66,225百万円)、ファナック㈱(東証PRM6954、2024年3月期純資産1,719,200百万円、総資産1,926,037百万円、売上高795,274百万円、営業利益141,919百万円)、川崎重工業㈱(東証PRM7012、2024年3月期資本合計654,549百万円、資産合計2,680,176百万円、売上収益1,849,287百万円、事業利益46,201百万円)の3社は、それぞれ独自の経営戦略を展開している。3社のロボット事業に関する戦略をまとめ、共通点と相違点を整理する。

安川電機の経営戦略

 安川電機は、「i3-Mechatronicsソリューションによる価値創出」、即ち、integrated(統合・連携された生産現場)、intelligent(知能化された生産現場)、innovative(革新的な生産現場)の実現を目指した新たな産業自動化革命を標榜、産業用ロボットの分野で高い市場シェアを持ち、特に溶接や塗装などの自動化ソリューションに強みを持っている。安川電機は、製造業の自動化ニーズに応えるため、「安川テクノロジーセンタ」で業界をリードする製品・技術を創出し、ロボットの高性能化と多様なラインナップの拡充を進めている。また、AIやIoT技術を活用したスマートファクトリーの実現にも注力し、顧客の生産性向上を支援している。近年は、顧客のサプライチェーンへの戦略的なアプローチの強化を進め、エンドユーザ、装置メーカ、ロボットSIer等との連携強化を図り、最適なソリューションを提供するとともにビジネスの領域を更なる拡大を目指している。

ファナックの経営戦略

 ファナックは、「one FANUC」を合言葉に、FA分野での総合的なソリューション提供を目指し、CNC(Computer Numerical Control)システムやロボット、ロボマシンなどの製品群を一体展開している。ファナックは、製品の高信頼性と長寿命化を追求し、保守サービスと共に、顧客の設備投資効果を最大化することを重視、顧客の工場におけるダウンタイムを最小にして稼働率向上を図るため、「壊れない」、「壊れる前に知らせる」、「壊れてもすぐ直せる」ことを商品開発において徹底している。さらに、IoT・AI技術をFA・ロボット・ロボマシンの全ての分野に積極的に適用していくことを掲げ、IoTプラットフォーム「FIELD system」(製造業向けオープンプラットフォーム)を通じて、工場内の機器やシステムの連携を促進し、スマートファクトリーの構築を支援している。

川崎重工業の経営戦略

 川崎重工業は、医療・ヘルスケア、ものづくり、産業インフラなど様々な分野で、「ロボティクスとネットワークを活用した新しい価値の創出」を目指し、産業用ロボットの開発・製造に加え、医療用ロボットやサービスロボットなど、新規分野への展開を進めている。特に、医療分野では手術支援ロボットの開発に注力し、国産初の手術支援ロボットである hinotoriTMを投入、新たな市場創出を図っている。また、「新しい輸送システムで人とモノの移動を変革」することを目指し、自動配送ロボットなどの新しい輸送・移動手段を提案、屋内配送ロボット「FORRO」をサービスインするなどソーシャルロボット分野の事業化を推進している。ブランド力強化のため、ユニコーン企業とのスピード感のある協業を推進する他、グローバル展開を強化し、海外市場でのシェア拡大を図っている。

3社の共通点
  • 自動化ニーズへの対応: 3社とも、製造業の自動化・省人化ニーズに応えるため、産業用ロボットの開発・提供を強化している。
  • スマートファクトリーの推進: AIやIoT技術を活用し、工場の効率化や生産性向上を図るスマートファクトリーの実現に取り組んでいる。
  • グローバル展開: 海外市場でのシェア拡大を目指し、各地域のニーズに合わせた製品展開やサービス提供を行っている。
3社の相違点
  • 製品ラインナップの多様性: 安川電機は溶接や塗装ロボットに強みを持ち、ファナックはFA全般のソリューション提供に注力している。一方、川崎重工業は医療用ロボットなど新規分野への展開を積極的に進めている。
  • 技術開発の方向性: ファナックは「FIELD system」を通じた工場内機器の連携に注力し、川崎重工業は医療分野での手術支援ロボット開発に力を入れている。安川電機はAIやIoT技術を活用した高性能ロボットの開発に焦点を当てている。
  • 市場戦略: 川崎重工業は新規分野への進出を積極的に行い、ファナックは既存のFA分野でのシェア拡大を重視している。安川電機は多様な産業分野へのロボット適用を推進している。
所感

 安川電機、ファナック、川崎重工業のロボットメーカー3社は、共通して自動化やスマートファクトリーの推進に取り組みつつ、それぞれの強みや戦略に基づき、異なる方向性で事業展開を進めている。ロボットメーカー3社の成果は、様々な産業の競争力強化に直結する極めて重要かつ社会的意義の大きいものであると捉えることができる。ロボットメーカー3社の製品開発やM&A・アライアンスを含めた今後の取り組みが大いに注目される。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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