㈱ユカリア(東証GRT286A)のM&Aの特徴・傾向
- デジタルヘルス領域への注力:医療DX、AI検査技術等、技術・ノウハウの導入を目的としたデジタルヘルス領域への戦略的出資・業務提携に注力している。
- 地域包括ケアシステムの強化:相続支援・不動産サービス等を含む高齢者・家族を対象とした地域包括ケアシステム・ワンストップサービスの強化を目指した戦略的出資・業務提携を進めている。
- マイノリティ出資:ケア提供者支援、ケア業務効率化・負担軽減等を目的としたスタートアップ企業等との連携に積極的であり、100%子会社化のみならず、マイノリティ出資等を含め、柔軟な提携戦略を進めている。
ユカリアのM&A実績
①DFreeと資本業務提携(2025年)
概要
排泄の悩みや負担を軽減するソリューション「DFree」の企画・開発・販売を手掛けるDFree㈱(資本金64百万円)と資本業務提携。
狙い
DFreeは、超音波センサーを用いて膀胱の変化を捉えることで排尿のタイミングを予測するIoTウェアラブルデバイス「DFree」の開発・販売を行っている。「DFree」で膀胱内の尿のたまり具合を可視化し、収集したデータを分析することで、利用者に合わせたパーソナライズケアをサポートし、利用者のQOL向上と職員の業務負担軽減に貢献している。ユカリアは、DFreeと資本業務提携することで、ユカリアのバリューチェーンにある医療現場や介護現場に「DFree」を展開する。また、「DFree」の利用データをはじめ、ユカリアが有する知見やネットワークを活用することで、ともに医療・介護現場のあるべきオペレーションの実現や医療・介護サービスの質の向上を目指す。
②ミツカリと資本業務提携(2025年)
概要
ひとりひとりの性格や相性を理解・分析して個と組織の力を最大化するHR Tech「ミツカリ」の開発・運営を手掛ける㈱ミツカリ(資本金100百万円)と資本業務提携。
狙い
ミツカリは、採用・配置・マネジメントに活用できる「適性検査」と「エンゲージメントサーベイ」の提供を通じ、一人ひとりの性格や人物像を明らかにすることで、企業や配属先、業務内容とのミスマッチ防止に貢献している。ユカリアは、ミツカリと資本業務提携することで、ミツカリの「適性検査サービス」を活用、提携医療法人及びコンサルティングサービスを提供している医療機関で働く看護師、グループ会社である㈱クラーチが運営する介護施設の介護士の採用や配置の最適化を目指す。また、両社が有する知見・ネットワークを掛け合わせることで、「人事制度策定」「人材採用」に係るソリューションをさらに拡充し、看護師をはじめとする病院関係者や介護士が働きやすく、また働きがいを感じられる職場環境の実現、医療・介護サービスの質の向上に寄与することを目指す。
③Boston Medical Sciencesと資本業務提携(2025年)
概要
非侵襲的大腸がんスクリーニングAIシステムの開発と臨床展開を手掛けるBoston Medical Sciences㈱(資本金220百万円(資本準備金含む))と資本業務提携。
狙い
Boston Medical Sciencesは、「早期発見・予防の力で世界から大腸がん死を根絶する」という理念の下、下剤を服用することなく撮影したCT画像をAIが解析する「無下剤バーチャル内視鏡検査システム」の2026年の臨床実装を目指している。ユカリアは、Boston Medical Sciencesと資本業務提携することで、「無下剤バーチャル内視鏡検査システム」を提携医療法人をはじめとする国内医療機関に導入するほか、「スマートドック(グループ企業の㈱スマートスキャンが提供する、脳ドックなどをウェブ上で気軽に予約し、短時間かつ安価に受診できるサービス)」の大腸がん検診のメニューとして広く提供することを目指す。
④スーパーナースと資本業務提携(2025年)
概要
看護師紹介・派遣業務、訪問看護(在宅看護)サービス業務、健康管理・疾病管理およびその支援事業、外国人患者受入業務を手掛ける㈱スーパーナース(2024年3月期純資産163百万円、総資産1,835百万円、売上高7,762百万円、営業利益20百万円)と資本業務提携。
狙い
スーパーナースは、「ナース×医療、を変革し、不安とリスクのない社会を目指す」という理念の下、「必要な看護人材を、必要な時に、必要なだけ供給する」ため、また「看護師の新たな活躍の場をつくる」ため、公的保険制度の下で看護を行う「パブリック看護人材事業」と、公的保険制度が適用されない領域で看護を行う「プライベート看護事業」を展開している。ユカリアは、スーパーナースと資本業務提携することで、スーパーナースが提供する看護師派遣専門サービスとユカリアの病院運営ノウハウを融合させ、医療・介護の現場が抱える課題の解決に寄与する新たな仕組みの構築を目指す。
⑤Gplusの子会社化(2025年)
概要
不動産相続コンサルティング、不動産売買仲介、不動産買取再販売、収益不動産の賃貸管理、損害保険代理業務を手掛けるGplus㈱(資本金9.5百万円)を子会社化。
狙い
ユカリアは、Gplusを買収することで、高齢者やその家族が所有する不動産に関する課題の解決に向け、より包括的で手厚いサポートの提供を目指す。特に、高齢者の住み替え支援や資産の有効活用といった面でより包括的で手厚いサポートが提供可能になり、「介護の悩みのない社会の実現」に貢献する。また、Gplusは、ユカリアの医療・介護領域の専門知見を活用することで不動産サービスの付加価値を高め、顧客のより多様なニーズに応えることを目指す。
⑥JALUXトラストのシニア事業の吸収分割(2025年)
概要
㈱JALUXトラストが運営するサービス付き高齢者向け住宅及びデイサービス事業(2025年3月期売上高426百万円(見込み))を吸収分割。
狙い
ユカリアは、JALUXトラストのシニア関連事業を買収することで、医療と介護の連携をより一層強化、サービス付き高齢者向け住宅の入居者、病院の患者、さらには地域の高齢者が、継続的にケアが受けられ、適切な運動等による健康増進ができるサービスの提供を目指す。
⑦ゼロメディカルの子会社化(2025年)
概要
医療・福祉・介護分野等に係る経営コンサルティング等を手掛ける㈱ゼロメディカル(2024年3月期純資産30百万円、総資産711百万円、売上高889百万円、営業利益▲92百万円)を子会社化。
狙い
ゼロメディカルは、「社会に必要とされ、社会に存在する価値を持ち、社会に調和する」という企業理念のもと、主に、ウェブマーケティングツールの販売を主軸とするウェブクリエーション事業、メディア発信等を通して経営支援を行う医療コンサルティング事業、訪問介護事業所等を運営する福祉関連事業を推進している。ユカリアは、ゼロメディカルを買収することで、ユカリアが推進する医療経営総合支援事業や、高齢者施設の入居相談・紹介や施設運営を行うシニア関連事業において、ゼロメディカルが持つ営業機能やノウハウを活用することにより、ユカリアグループ全体の営業機能を強化するとともに、医療機関に対する支援の充実や高齢者施設におけるサービス向上を目指す。
⑧Hippocratic AI, Inc.と資本業務提携(2025年)
概要
ヘルスケア分野における安全性を重視した大規模言語モデルの開発・対話型生成AIヘルスケアエージェントの販売事業を手掛ける米国Hippocratic AI, Inc.(資本金278百万ドル)と資本業務提携。
狙い
Hippocratic AIは、世界中で進行する医療従事者不足の解消を使命として設立され、医療分野における大規模言語モデルの開発及び、安全性を重視した世界初の診断を伴わない患者と対応する生成AIヘルスケアエージェントの世界展開を進めている。Hippocratic AIが展開する最先端の生成AIヘルスケアエージェントは、実際現場で必要となる患者の診療予約、問診、退院後のフォローなどを、医療従事者の代わりに行う。既に米国で先行導入されているHippocratic AIの生成AIヘルスケアエージェントの応答品質は、米国のトップレベルのヘルスケア機関に在籍する300名超の医師及び6,000名超の看護師の検証を行ったもので、その誤答率は人間の医療従事者よりも低く、対話の質は患者のニーズに添った、思いやりが感じられる水準に達するなど、実際の現場で通用する質が担保されている。米国外ではシンガポールをはじめとする複数の国で導入が進んでおり、英語以外にも、これまでにスペイン語、ベトナム語、アラビア語などのバージョンが開発されている。ユカリアは、Hippocratic AIと資本業務提携することで、医療現場における検証・実装など、日本語での対話が可能な生成AIヘルスケアエージェントの開発を支援する。また、ユカリアが有するネットワークを利用して全国の医療機関にHippocratic AIの生成AIヘルスケアエージェントを導入することで、日本のヘルスケア業界全体の質の向上、業務の効率化、これらを行うためのヘルスケア業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進を目指す。
所感
ユカリアは、高齢化・人材不足といった医療・介護分野の社会課題に対応すべく、DXを核とした提携戦略を強化、100%子会社化にこだわらず、段階的な出資や業務提携で技術・サービスを取り込み、ケア現場の効率化と地域包括ケア体制の強化をスピード感を以って推進している。ユカリアは、今後も社会課題の変化に即応した機動的なパートナー戦略を打ち出していくものとみられ、ユカリアの今後のM&A・資本業務提携戦略が大いに注目されると共に、ユカリアの飛躍的な成長が期待される。
以上