造園工事会社に選択肢
造園工事業界は、「グリーンインフラ」、「ESG・ウェルビーイング」、「まちづくり・リニューアル」といった新しい文脈の中で、その役割とポジションを変えつつある。造園工事会社各社にとっては、単なる受注の積み上げに留まることなく、自社がどのバリューチェーンに属し、どのような市場ポジションを獲得するのかを意識した「戦略的M&A・アライアンス」が、重要な経営テーマとなりつつある。

造園工事業界は拡大局面
国土交通省「建設工事受注動態統計調査」によると、造園工事業界の足元の市場規模は概ね6,000億円程度。市場規模は、2017年には4,023億円まで縮小するも、2023年には6,037億円へと回復、6年間で約1.5倍、年平均7%程度の成長率を記録している。造園工事業界は、国土交通省や環境省によるグリーンインフラ・ネイチャーポジティブ等の政策的な後押しに加え、都市公園や道路関連投資等の堅調な推移を背景に、市場規模が着実に拡大している。道路等大規模改修プロジェクトの一部として造園工事が組み込まれるケースも増加しており、従来の「造園単体工事」から「まちづくり・インフラ更新プロジェクトの一要素」として位置づけられる場面も多くなっている。近年は、単なる景気循環ではなく、都市再生・防災・環境政策・ESG投資といった複数の潮流が重なった「構造的な回復局面」にあるとみて良いだろう。

公共・民間双方の需要
2024年の発注者別内訳を見ると、公共1,539億円に対し、民間1,749億円となっており、3年連続で民間が公共を上回っている。造園工事業界は「公共依存のニッチ市場」というイメージもあるが、実際には、オフィスビルや商業施設、工場・物流施設、住宅開発など、民間需要が大きい。造園工事業界は、公共・民間双方の需要に支えられた、裾野の広い市場であると言えよう。

大手グループ企業が存在感
造園工事会社を、建設業許可における経営事項審査の総合評価値(P点)に基づきランキングすると、以下のような顔ぶれとなる。上位には、大手不動産、鉄道、化学メーカー等のグループ企業が名を連ねており、「グループの一ソリューションとしての造園工事事業」というビジネスモデルが定着していることが分かる。上位企業は、建築・土木・設備・造園を含めた一括受注体制や、設計〜施工〜維持管理までをパッケージ化した提案力を有しており、公共だけでなく、民間の外構・ランドスケープ需要も取り込む体制を構築している。昨今の民間需要が牽引する市場環境においては、親会社絡みの不動産・インフラ案件を確実に取り込みつつ、グループ外案件も獲得できる体制を有する造園工事会社が、存在感を高めていると言えよう。

戦略的M&Aで更なる成長へ
造園工事業界におけるM&A戦略としては、概ね以下のような類型が想定される。
- ボルトオン型M&A:オフィス・商業施設・ホテル・工場・物流施設等では、ESG・サステナビリティ、従業員・利用者のウェルビーイング、ブランディング・顧客体験価値の向上、といった観点から、ランドスケープ・屋上壁面緑化等への投資が続いている。即ち、今後は、ハウスメーカー、ディベロッパー、ビルメンテナンス会社等が、「新たな付加価値」として造園工事会社を取り込む動きが考えられる。無論、造園工事会社側から見れば、こうしたプレイヤーのサプライチェーンを活かすことで、継続的な民間案件へのアクセスや上流段階からの関与が可能となり、高付加価値案件獲得機会の拡大が期待できる。
- バリューチェーン強化型M&A:造園工事ビジネスは、設計、現場施工・植栽・外構工事、引き渡し後の維持管理・更新、が連続するバリューチェーンであり、どの工程を内製化し、どの工程を外部連携するかによって、その収益性が大きく左右される。一部の大手不動産会社グループ等は、既に設計・施工・維持管理の一貫体制を自グループ内で完結させている。一方で、未だ造園工事機能の強化に踏み込んでいない不動産会社や建設会社も多数存在しており、外構・ランドスケープを含めた一括提案力を高めたいこれら企業が、造園工事会社をM&Aで取り込むという動きも十分に予想される。無論、造園工事会社が、設計事務所・維持管理会社等を取り込み、バリューチェーンを強化するといった動きも考えられよう。
- 広域アライアンス型M&A:造園工事業界は、歴史的に「エリアのすみわけ意識」が強く、特定自治体・特定顧客との関係を重視するローカルビジネスとして発展してきた。その一方で、昨今は、人手不足や技能者不足、公共入札の規模・要件の高度化、広域での維持管理ニーズの増加等の環境変化が進展し、中小事業者が一地域だけで従来型のビジネスを続けることには、一定の課題も見え始めている。今後は、近接エリアの造園工事会社同士が、技能者・資格者の確保、得意分野(公園、街路樹、スポーツターフ、屋上緑化等)の更なる強化等を目指して、合従連衡する動きも予想される。中堅・中小の造園工事会社にとっては、従来のエリア意識を一歩超え、「広域×専門性」をキーワードにした統合戦略を描けるかどうかが、自社の将来を左右すると言っても過言ではない。
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