物流各社の戦略的アライアンスと宇宙事業への取り組み(2024年)

㈱日本郵船(東証PRM9101)の取り組み

アストロケールとパートナーシップ契約締結(2022年)
概要

郵船ロジスティクス㈱は、人工衛星の製造・開発を手掛ける㈱アストロスケールと、商業デブリ(宇宙ゴミ)除去実証衛星「ADRAS-J」に関するマーケティングパートナーシップ契約を締結。放置されたデブリの運動や損傷・劣化状況の撮影を行うADRAS-J事業への支援を行う。

狙い

同社は、サプライチェーン・ロジスティクスの需要が今後は宇宙にも広がると見込み、将来的な宇宙事業への展開と、同社のサステナビリティ実現を目指す。

宇宙関連事業へ参入(2023年)
概要

先端事業・宇宙事業開発チームを発足させ、2023年度からグループ中期経営計画にも、新規事業の1つとして宇宙関連事業への挑戦を明記。すでに国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の開発プログラムや、デロイトトーマツグループが立ち上げた宇宙アクセラレーションプログラムを通じたオープンイノベーションにも取り組んでいる。

狙い

同社の海運業を主とする総合物流のノウハウと宇宙産業とを掛け合わせた新規事業として、海運ロケットの洋上打ち上げ、洋上回収事業、衛星データの利活用の実現を目指す。洋上であればロケットの打ち上げ場所が固定されないため、ロケット打ち上げ需要に柔軟に応えることができ、また陸上に比べて周辺環境への影響が少ない。また、衛星を理想的な軌道に乗せるのは、洋上からの打ち上げが相応しいことなどから、同社ならではの宇宙関連産業の強みが発揮できる。さらに、同社は世界で800隻以上の船舶を運航しており、海上での衛星データの活用を目指す。

NIPPON EXPRESSホールディングス㈱(東証PRM9147)の取り組み

デジタルブラストおよびその関連会社とパートナーシップを強化(2024年)
概要

衛星等の輸送サービス提供に実績のある日通 NEC ロジスティクス㈱は、宇宙産業の活性化や宇宙業界の新事業創出をサポートする㈱DigitalBlastおよび宇宙やDX領域でのコンサルティング・メディア・イベント事業を行う㈱DigitalBlast Consultingとパートナーシップを強化し共同でサービス開発を進める。

狙い

増大する宇宙輸送へのニーズに応えるため、人工衛星をはじめとした物品を宇宙までスムーズに輸送するためのワンストップサービス構築を目指す。

ヤマトホールディングス㈱(東証PRM9064)の取り組み

GITAI Japanへの出資(2023年)
概要

宇宙空間向け汎用作業ロボットを開発するGITAI Japan㈱へ出資。

狙い

難易度の高い作業の自動化や効率化に関する最先端技術の知見を深め、新たな価値提供に取り組む。

アクセルスペースホールディングスへの出資(2023年)
概要

小型衛星の開発・量産・運用と地球観測衛星データ画像やそれを解析するソリューションを提供する㈱アクセルスペースホールディングスへ出資。

狙い

アクセルスペースが製造する小型衛星と衛星データ販売ビジネスを通じて、産業・社会における宇宙利用の促進が期待される。宇宙産業に関わるサプライチェーンの知見を深め、新たなビジネスの可能性を探索する。

SGホールディングス㈱(東証PRM9143)の取り組み

Yspaceと共同研究契約締結(2023年)
概要

SGムービング㈱は、衛星データを用いた月面データプラットフォーム事業と月・地球間における輸送事業を手掛ける㈱Yspaceと、月面輸送におけるロジスティクスサービスに関する共同研究契約を締結。

狙い

地球と月の間の輸送を題材とし、地球から月の居住者へ日用消費財を届けると仮定して、物流市場規模を推算し、ロジスティクスサービスを導入した場合のコストやリスクを探る。

各社の類似点と相違点

類似点

物流各社は既存の技術やノウハウを活かして、宇宙関連事業に取り組んでいる。特に、この1~2年は、先端技術等を有する宇宙関連企業とのアライアンスが活発化しており、物流各社は宇宙事業に先鞭をつけるべくしのぎを削っている。

相違点

各社の取り組みには異なる側面がある。日本郵船は海運技術を活かし、洋上からのロケット打ち上げと回収、衛星データの利活用を重視している。NIPPON EXPRESSホールディングスはワンストップの宇宙輸送サービスを構築し、特に人工衛星の輸送に焦点を当てる。ヤマトホールディングスは作業ロボットや小型衛星の活用を推進。SGホールディングスは月面輸送に特化し、物流市場の拡大を狙う。

所感

物流各社の宇宙事業は、緒に就いたばかりであり、未知数の部分も多い。但し、近い将来、宇宙事業の成否が業界内のポジショニングに大きな影響を与えることが予想され、今後、物流各社が更なる投資やアライアンス・M&A実行に踏み込む可能性も高い。物流各社の先端技術利用による新たな価値創出から目が離せない。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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