警備業界はM&Aが旺盛
警備業界では、業務提携、資本提携、M&A等の各種アライアンスが活発に行われている。以下、2023年以降に実行された意欲的なアライアンス事例8例を確認する。
①イオンディライトが清掃の㈱アスクメンテナンスの株式取得(子会社化)(2023年3月)
概要
イオンディライト㈱(東証PRM9787、施設・設備管理、警備、清掃等)は、清掃業をメインに建設・設備管理を行う㈱アスクメンテナンスの株式を取得し子会社化。
狙い
アスクメンテナンスは、清掃業をメインに設備管理、マンション管理、建設施工等を九州一円に展開し、商業施設や病院、官公庁といった様々な用途の施設へサービスを提供。イオンディライトは、アスクメンテナンスを買収することで、九州における事業基盤を拡大、両社が培ってきた技術やノウハウを融合し、更なる品質向上を図る。
②セントラル警備保障が警備の東亜警備保障㈱の株式取得(子会社化)(2023年4月)
概要
セントラル警備保障㈱(東証PRM9740、総合警備、ビル管理)は、常駐警備、機械警備、運輸警備等を手掛ける東亜警備保障㈱の株式を取得し子会社化。
狙い
東亜警備保障は、栃木県内を中心に常駐警備、機械警備、運輸警備等を展開。セントラル警備保障は、東亜警備保障を買収することで、支社・事業部の無いエリアへの進出を図ると共に、機械警備の強化を推進する。
③綜合警備保障㈱がインドネシア人材派遣・警備のPT.shield-On Service Tbkの株式取得(子会社化)(2023年6月)
概要
綜合警備保障㈱(東証PRM2331、警備サービス、総合管理、防災、介護)は、インドネシアで人材派遣・警備保障を手掛けるPT.shield-On Service Tbkの株式を取得し子会社化。
狙い
PT.shield-On Serviceは、人材派遣、警備、清掃、駐車場管理サービスを提供、インドネシア証券取引所に上場し、現地財閥Sinarmasグループを大口顧客に抱える。綜合警備保障は、これまで日系企業に提供してきた綜合警備保障の総合的な安心安全サービスをASEAN域内の経済を支えるインドネシア企業、金融機関等にも幅広く提供し、日本とインドネシアの緊密な2国間関係を活かした人材育成の互恵関係の構築及び安全安心サービスの水準向上を目指す。
④トスネットが施設警備のNEXT㈱の株式取得(子会社化)(2024年5月)
概要
㈱トスネット(東証STD4754、交通誘導警備、施設警備、ビルメンテナンス、メーリングサービス、電源供給)は、施設警備、交通誘導警備を手掛けるNEXT㈱の株式を取得し子会社化。
狙い
NEXTは、警備事業、ポスティング事業等を展開し、東京都多摩地区に顧客基盤を構築している。トスネットは、長年培ってきた警備事業の生産性の向上を軸にビルメンテナンス事業、メーリングサービス事業及び電源供給事業を展開、NEXTを買収することで、首都圏での更なるグループ間シナジーの創出を図る。
⑤東洋テックがイベント警備の関西ユナイトプロテクション㈱の株式取得(子会社化)(2024年6月)
概要
東洋テック㈱(東証PRM9740、常駐警備、機械警備、ビル管理)は、イベント警備を手掛ける関西ユナイトプロテクション㈱の株式を取得し子会社化。
狙い
関西ユナイトプロテクションは、業歴約50年の強固な経営基盤を有する警備会社で、特にイベント警備にかかる高度な スキル・ノウハウを有する。東洋テックは、関西ユナイトプロテクションを買収することで、サービスラインナップを拡充、顧客ニーズに沿ったサービス提供を目指す。
⑥アール・エス・シーが清掃の㈱クリーンフォースの株式取得(子会社化)(2024年12月)
概要
アール・エス・シー㈱(東証STD4664、警備、清掃、オフィスサービス、設備管理)は、ビル、店舗、マンションョン、住宅等の清掃を手掛ける㈱クリーンフォースの株式を取得し子会社化。
狙い
クリーンフォースは、東京都を中心にビル、店舗、マンションョン、住宅等の清掃業を提供。アール・エス・シーは、2024年にビルマネジメント事業部内に清掃事業を新設、売上拡大・品質改善などに伴う体制強化に取り組んでおり、クリーンフォースを買収することで、人事交流等による品質向上を図り、競争力強化と企業価値向上を目指す。
⑦共栄セキュリティーサービスが警備の㈱ネオ・アメニティーサービスの株式取得(子会社化)(2024年12月)
概要
共栄セキュリティーサービス㈱(東証STD7058、警備、マンション代行管理、建物・設備管理)は、警備業を手掛ける㈱ネオ・アメニティーサービスを取得し子会社化。
狙い
ネオ・アメニティーサービスは、千葉県千葉市を中心に商業施設等の施設警備や設備管理、清掃・ビルメンテナンス等、多彩な事業展開。共栄セキュリティーサービスは、ネオ・アメニティーサービスが有する施設警備やビルメンテナンス業の専門性の高いサービスを加えることで、収益機会の拡大のみならず、ビルメンテナンス業による付加価値創出を実現させ、利益成長を目指す。
⑧共栄セキュリティーサービスが警備の中国警備保障㈱の株式取得(子会社化)(2025年1月)
概要
共栄セキュリティーサービス㈱(東証STD7058、施設警備、交通誘導警備、建物・設備管理)は、警備業を手掛ける中国警備保障㈱の株式を取得し子会社化。
狙い
中国警備保障は、山口県を中心とし、医療機関等の施設警備や受付、 工事現場等の交通誘導警備を展開。共栄セキュリティーサービスは、未進出エリアであった中国地方へのアクセスが可能となり、さらなる収益機会の拡大及び利益成長を目指す。
所感
警備業界は、地域密着型かつ人的資本集約型ビジネスという特性から、地域特化型のプレーヤが多い業界構造となっており、地域補完やサービス補完を目的としたM&Aが行われる傾向にある。また、警備単体ではなく、警備と清掃・施設管理・ビルメンテナンス等の周辺業種との複合展開によって、「ワンストップ運用モデル」への転換を図る動きも活発化している。これは、ビルオーナーや施設運営者にとっての利便性向上と、業者側のLTV最大化を両立するものであり、M&Aによる水平統合の典型例といえる。
近年は人材確保や労務コスト上昇に直面する中で、人×ロボットを融合させた警備(ロボットとの協働警備)やサイバーセキュリティ対応といったDX・AIの導入を通じた省人化・高度化への対応も求められている。今後の業界成長は、単なる人員増強ではなく、「機械化・高付加価値化・複合サービス化」をどう実現するかにかかっており、M&Aはそれらを実現させるための有力な手段の一つである。業界再編が本格化する中で、先行して多角的なシナジーを形成できる企業が、国内ひいてはアジア、世界の市場をリードする可能性が高い。既存の警備事業を基軸にした新たなビジネスモデルの創出が大いに期待される。
以上
