SNSマーケティング業界における目下の経営課題
SNSマーケティング業界は、「手離れの良いブームの支援者」から「泥臭い事業成長のパートナー」への変革を迫られる過渡期にある。数年前までは、プラットフォームの成長の波に乗り、「フォロワーを増やす」、「インフルエンサーに配る」だけで売上が立つイージーモードの市場であったが、現在は、コンテンツの大渋滞とアルゴリズムの激変により、その手法が完全に限界を迎えている。以下、SNSマーケティング業界における目下の経営課題と戦略的挑戦を確認する。

①AIによる差別化の困難性
これまでのSNSマーケティング支援企業は、投稿作成、画像制作、レポート作成、ハッシュタグ分析等、プロフェッショナル人材のスキル・経験を活かしたSNS運用代行サービスを展開してきた。しかし、AIの登場で、「バズ(一時的な拡散)」のハードルが向上し、企業自身が運用可能となり、広告代理店の工数削減が進み、参入障壁の低下が起きている。今後は単なる運用代行のみではなく、戦略設計、データ分析、インフルエンサーネットワーク、EC連携等までをも含めた総合力・コンサルティング力が求められるようになっている。
②プラットフォーム依存
SNSマーケティング支援企業は、「Instagram」、「TikTok」、「YouTube」、「X」等の他社プラットフォーム上でサービス提供を行っている。そのため、これらプラットフォームによる、アルゴリズム変更、API制限、規約変更等が実施された場合、収益性やビジネスモデルが大きく棄損する可能性がある。これは、業界構造上の永遠の宿命と言える。
③広告効果の可視化
SNSマーケティング市場が成熟化した結果、広告主は、「サービス提供を受けたことで実際に売上増に繋がったのか」、即ち、「ROI(投資対効果)」を厳しく見るようになっている。一方、SNSマーケティング支援企業が提供する各種SNS施策は、認知、好感度、エンゲージメント施策等が中心であり、また、SNSの効果は認知や好感度向上など中長期で現れるものが多いため、売上との因果関係を証明しづらい。そのため、データ分析、ROI測定、SNS→EC→購買までの因果関係を追える仕組みづくり、「SNSへの投資がどう利益に貢献しているかを可視化(データサイエンス化)するノウハウの確立」が急務になっている。
④法規制・ステマ規制対応
景品表示法の改正(ステマ規制の厳罰化)以降、消費者の「案件(PR投稿)」に対する目は年々厳しくなっており、「PR表記」、「広告表示」、「インフルエンサー管理」が厳格化している。そのため、インフルエンサーのキャスティング(仲介)を主軸とするSNSマーケティング支援企業については、単に「フォロワー数が多い人に頼む」という従来の手法のみでは通用しなくなりつつある。また、仮に不適切案件が発生すると、企業(広告主)のみならず、SNSマーケティング支援企業も信用を失うこととなるため、SNS広告市場の成熟に応じてコンプライアンスの重要性が高まっている。SNSマーケティング支援企業にとっては、ファンコミュニティの形成や、本当にブランドを愛しているインフルエンサーとのタイアップなど、「質とコンプライアンス」を両立したキャスティング体制の構築が必要不可欠となっている。
⑤利益率の低さ
多くのSNSマーケティング支援企業は、人月型・受託型のビジネスモデルを採っており、売上が拡大しても利益率の向上には繋がりにくい。そのためSNSマーケティング支援企業各社は、人材依存、特定プラットフォーム依存からの脱却を図ると共に、「SaaS」、「自社メディア」、「データ事業」等の高付加価値領域への展開を模索し、利益率の向上を目指す必要がある。
以上
