アステラス製薬が米国Iveric Bio社買収(子会社化)に関する契約締結を発表

概要

 アステラス製薬㈱(東証PRM4503)は、2023年5月1日、米国のバイオ医薬品企業IVERIC bio, Inc.(NASDAQ上場、2022年12月期連結純資産534百万米ドル、連結総資産666百万米ドル、営業損失189百万米ドル)との間で、アステラス製薬の米国持株子会社アステラスUSホールディングInc.の100%子会社であるBerry Merger Sub, Inc.を通じて、一株当たり40.00米ドル、総額約59億米ドルの現金を対価としてIVERIC社を買収することで合意したと発表した。本件買収によって、IVERIC社はアステラス製薬が間接的に保有する100%子会社となる予定。

狙い

 アステラス製薬は、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでおり、現在、「遺伝子治療」、「がん免疫」、「再生と視力の維持・回復」、「ミトコンドリア」、「標的タンパク質分解誘導」という5つのPrimary Focusを特定し、優先的に経営資源を投下している。一方のIVERIC社は、地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性を対象とするリードプログラムAvacincaptad Pegol(ACP)をはじめとした有望なプログラム、および眼科領域におけるバリューチェーン全体に渡るケイパビリティを有している。本件買収によって、アステラス製薬は、fezolinetantやPADCEVとともに収益を生み出す柱として期待されるACPを獲得すると同時に、IVERIC社が有するコマーシャルチームや専門家との広範なネットワーク、医療機関とのパートナーシップを含む眼科領域における基盤ケイパビリティを獲得することになる。

所感

 加齢黄斑変性は高齢者における中等度から重度の中心視力低下の主な原因であり、地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性は患者の視力を不可逆的に低下させることから高いアンメットメディカルニーズがあるとされ、米国では約160万人が片目に地図状萎縮を発症しているとされる。IVERIC社はアンメットメディカルニーズの高い網膜疾患に対する新しい治療法の研究開発に注力するサイエンス駆動型バイオ医薬品企業。ACP等製品上市前のため、売上高計上実績は無いが、ACP はGATHER1,2 試験(無作為化二重盲検偽処置対照多施設共同の第 III 相試験)において主要評価項目を統計学的に有意に達成し、この適応症について米国食品医薬品局からブレークスルーセラピー指定 (重篤な疾患に対する治療薬の開発と審査の迅速化を目的とする制度。この指定を受けるためには、臨床的に意味のある評価項目について、既存治療と比較して顕著な改善を示す予備的な臨床エビデンスを有することが必要。)を受け、現在承認申請中(米国食品医薬品局による審査終了目標日は2023年8月19日)。総額約59億米ドルの大型買収となるが、買収及びACPの上市が実現すれば、同社の「再生と視力の維持・回復」分野の強化・拡大が期待される。

米国 Iveric Bio 社買収に関する契約締結のお知らせ

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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