概要
㈱ケアネット(東証GRT2150)は、2023年8月14日、事業計画及び成長可能性に関する事項を発表した。
事業内容
医師・医療従事者向けの医療コンテンツサービス。製薬企業向けの医薬営業支援サービス。
強み
- 医師プラットフォームを有していること。同社は21万人超(2023年2月)の医師会員を有しており、日本の全医師の60%以上をカバーしている。これら医師会員から情報提供の許諾(医師に医薬品等の情報を提供すること、医師の視聴行動を製薬企業に報告することへの許諾)を受けて事業を行うのが医師プラットフォーム事業者の特徴であり、国内には、M3、Medpeer、同社等限られた数のプレーヤーしか存在しない。
- 医師教育メディアを運営していること。同社は医師向けの医学教育動画コンテンツを作成しており、現在、常時2,000以上のプログラムが視聴できる国内最大級の医学教育メディア“CareNeTV”を運営している。同社が制作・発信する情報の品質、信頼性の高さから、医師向け教育メディアとしてのブランドを確立している。
- ハイブリッドモデルにより高い情報伝達力を発揮できること。同社は2022年8月、労働者派遣事業許可証を取得し、さらに、CSO(派遣MR)事業を営むコアヒューマンを買収した。これにより、インターネットだけでなく、人を介した情報提供を事業として行うことが可能となった。インターネットと人を融合した情報提供モデル(ハイブリッドモデル)の推進により、競合企業より優れた情報伝達力を獲得している。
中期経営計画
2025年12月期の数値目標は、売上高300億円(2022年12月期実績93億円)、営業利益100億円(同29億円)、とした。
リスク
- 同社の売上高は、大部分が製薬企業、医師及び医療従事者からの収入となっている。今後、医療費・薬価引き下げ、ジェネリック医薬品の普及、医療制度の変更などにより医療・ヘルスケア市場の停滞、縮小や新たな市場動向に同社が対応できない場合には、それらの事象が同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。また、製薬業界においては、グローバルな企業間競争が展開され、業界再編の動きが加速している。企業間競争は同社が提供する各種サービスの採用を加速する可能性がある一方、再編された既存顧客による取引見直しの可能性もあり、その場合には同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社は、多くの医師の協力を得る必要があり、同社は既に21万人の医師会員を有していることから本サービスにおける同社の優位性は高いものと認識している。しかしながら、サービス実現には多くの医師の協力を得る必要があり、今後新規の参入や、医師会員を保有する他の企業又は製薬企業自らにより類似のサービスが提供される等で競争が激化し、同社の優位性が保てなくなった場合には、同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社の事業は、医師の協力を得ることで成り立っており、事業遂行上、多くの医師等の個人情報を保有している。そのため、同社は2005年3月に、JIS Q15001(個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラムの要求事項)規格に準拠したプライバシーマークの付与認定を受けており、個人情報保護に関する社内規程の整備及び運用状況の監査を行うなど、個人情報管理の徹底を図っている。これらの対策により医師等の個人情報が漏洩する可能性は極めて低いと考えているが、万一医師等の個人情報の漏洩が発生した場合には、医師等からの信用を失うこととなり、医師会員の協力により支えられている同社のほぼ全てのサービスに支障が生じる等、その後の同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社は、医療従事者向けにインターネットや紙媒体などにより医療・医薬情報の提供を行っており、また製薬企業へは広告宣伝に係わる制作請負を行っている。このため、これら媒体等に記載される表示・表現には、医薬品医療機器等法、医療用医薬品プロモーションコード、医療用医薬品製品情報概要記載要領、医療用医薬品専門誌(紙)広告作成要領、及び医薬品等適正広告基準の規制を受ける。これら法規制は、ウェブサイト等に掲載される医療・医薬に係わる名称の使い方、効能・性能・安全性、及び他社製品の取り扱い等の表現や必要記載事項を制限している。仮に、このような法規制に同社が違反した場合には、同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社は、事業拡大の手段の一つとして戦略的提携、M&A及び投融資等を行う可能性がある。戦略的提携、M&A等の投融資の実施に際しては十分な検討をもとに実行に移すが、実施した戦略的提携、M&A及び投融資等が、当初期待した成果をあげられない場合や、投融資先の業績が悪化した場合には、損失が発生することにより、同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性がある。
所感
同社主力の医薬DX事業は、ハイブリッドモデルの構築(CSOの事業に参入し、DX化を推進)、医薬品ステージの上流に進出(スペシャリティ医薬品は治験も販売も中核病院に集中、市販前の臨床試験から市販後の安全性調査まで支援サービスの幅を拡大)、医療データの活用強化(治験支援、販売強化、市販後調査効率化)、と事業ステージを拡大させる見通しであり、同社の今後の展開が注目される。
「事業計画及び成長可能性に関する事項」2023年12月期第2四半期進捗報告
以上
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