ヨンキュウとマルイチ産商|発想の業務提携M&A

概要

 ㈱ヨンキュウ(東証STD9955、2024年3月期純資産37,127百万円、総資産51,380百万円、売上高45,130百万円、営業利益1,944百万円)と、㈱マルイチ産商(名証MN8228、2024年3月期純資産26,192百万円、総資産67,311百万円、売上高254,805百万円、営業利益1,827百万円)の両社が、業務提携したと仮定した場合に想定される具体的な提携効果について検討する。

ヨンキュウの事業内容
  • 鮮魚販売、餌料・飼料販売、養殖用稚魚の生産・販売。
  • 一般貨物運送。
マルイチ産商の事業内容
  • 水産物および水産加工品、デイリー食品および冷凍食品、一般ドライ食品および加工食品、畜産物および畜産加工品の卸売。
  • 物流・冷蔵倉庫。OA機器・通信機器販売。保険代理店。
想定される提携効果
①水産物卸売・加工事業
  • バリューチェーンの強化と効率化:ヨンキュウは国内外で水産物の養殖や卸売に強みを持ち、マルイチ産商は水産加工品の製造・販売および小売との取引に豊富なネットワークを持っている。両社が提携することで、原料調達から加工、流通までの一貫体制を強化し、バリューチェーン全体の効率化が期待できる。
  • 製品の多様化と競争力向上:ヨンキュウの養殖魚や水産物をマルイチ産商の加工技術で製品化することで、付加価値の高い製品を市場に投入する。これにより、両社のブランド力や市場競争力の向上が見込まれる。
  • 物流コスト削減:両社が物流網を統合・共有することで、輸送コストや中間業者の削減が可能になり、利益率の改善につながる。
②養殖事業
  • ヨンキュウの技術力とマルイチ産商の販売力の連携:ヨンキュウは養殖魚の生産や品質管理に強みを持っている。一方、マルイチ産商は加工品や冷凍食品市場へのアクセスが豊富。提携により、高品質な養殖魚を効率的に加工し、消費者市場に届ける体制が整う。
  • 養殖技術と生産管理ノウハウの共有:ヨンキュウは養殖魚の生産における高度な技術を持ち、マルイチ産商の子会社である㈱ダイニチは地元養殖業者との関係性や地域特化型の生産ノウハウを有している。両者が提携することで、より効率的かつ持続可能な養殖体制の確立が期待できる。
  • 養殖魚の安定供給体制の構築:マルイチ産商の販売先や需要動向を活用し、ヨンキュウとダイニチが養殖生産を調整することで、安定供給と在庫リスクの軽減が期待できる。
  • 新たな養殖技術の共同開発:両社が提携し研究開発に資金やリソースを投入することで、持続可能な養殖技術や新たな品種開発を確立し、例えば、ブランド化された養殖魚の開発や、高品質な水産物のプレミアム市場への展開を目指す。
③その他
  • 環境・サステナビリティ分野での協働:サステナブルな水産資源管理が重要視される中、両社が共同で環境保全やトレーサビリティ(生産履歴管理)の取り組みを進めることで、社会的信頼を向上させる。
  • 販路拡大と地域社会への貢献:マルイチ産商の強い小売ネットワークを活用することで、ヨンキュウの製品が国内外の新規市場に進出する可能性があり、地方経済や雇用創出へ貢献する。
  • ブランドイメージの向上:両社の提携により「高品質で信頼性のある水産物を提供する」というブランドイメージをさらに強固にする。
  • 地域ブランドの強化:ヨンキュウとマルイチ産商の子会社であるダイニチの拠点である宇和島市という地域のブランド価値を高める活動(地域特化型製品のPRや観光産業との連携等)を通じて、地元の水産業全体の発展に貢献する。
所感 

 ヨンキュウとマルイチ産商の提携は、両社の事業領域の相互補完性が高いため、非常に大きなシナジー効果を生む可能性がある。特に、水産物の供給から加工、流通、販売に至るまでの垂直統合体制を強化することは、競争が激化する水産業界での競争優位性を確立する重要な一手となる。また、ヨンキュウとマルイチ産商の提携は、養殖事業の発展を一気に推し進めるという点において、極めて戦略的なアライアンスとなる。ヨンキュウとマルイチ産商の今後の戦略的な取り組みが大いに注目される。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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