センサ業界の戦略的M&Aから読み解くセクタートレンド

キーデバイスの開発競争加速

 センサ業界は、あらゆる産業において活用される「キーデバイス」としての認識から、グローバルマーケットにおいて開発競争が加速、大手企業やベンチャー企業を巻き込んだM&A・アライアンスが頻繁に実行されている。以下、2017年以降に実行された、日本の上場企業が関わる意欲的なM&A・アライアンス事例5例を確認する。

①TDKがセンサソリューションの米国InvenSense, Inc.の株式取得(子会社化)(2017年5月)

概要

 TDK㈱(東証PRM6762、電子部品メーカー)は、米国で慣性センサプラットフォームプロバイダを手掛けるInvenSense, Inc.の株式を取得し子会社化。

狙い

 InvenSenseは、民生機器や産業機器領域をターゲットとし、慣性・音声ソリューション等を提供。InvenSenseのソリューションは、加速度、角速度、磁気コンパス、マイクロフォン等のMEMSセンサを、ファームウェアや、独自のアルゴリズムと組み合わせることができる。TDKは、InvenSenseを買収することで、センサ技術とソフトウェアを組み合わせたセンサフュージョンにより、革新的な次世代製品の創出及び新しいプラットフォームの提供を目指す。

②凸版印刷がイメージセンサの㈱ブルックマンテクノロジの株式取得(子会社化)(2021年3月)

概要

 凸版印刷㈱(現、TOPPANホールディングス㈱)(東証PRM7911、情報コミュニケーション事業、生活・産業事業、エレクトロニクス事業)は、各種カスタムイメージセンサ受託開発、2Dセンサ開発・販売、3Dセンサ(ToFセンサ)開発・販売を手掛ける㈱ブルックマンテクノロジの株式を取得し子会社化。

狙い

 ブルックマンテクノロジは、CMOSイメージセンサの開発・販売を手掛けるベンチャー企業。凸版印刷は、ブルックマンテクノロジを買収することで、ブルックマンテクノロジの持つ独自のToFセンサ設計技術である、高速撮像性、長距離測定性、外乱耐性を活用し、「外で使いにくい」、「残像が発生する」などの、3Dセンサ普及の課題を克服した実用性の高いToFセンサを開発し、3Dイメージセンシング市場へ本格参入を目指す。

③日東電工がフレキシブルセンサの米国Bend Labs, Inc.の株式取得(子会社化)(2022年6月)

概要

 日東電工㈱(東証PRM6988、総合材料メーカー)は、フレキシブルセンサを手掛ける米国Bend Labs, Inc.の株式を取得し子会社化。

狙い

 Bend Labsが開発したフレキシブルセンサは、「曲げ」、「伸縮」、「圧力」、を同時測定でき、優れた柔軟性と耐久性に加え、高い精度を特長としており、自動化が加速する自動車分野や、健康状態のモニタリングニーズが高まる医療分野をはじめ、様々な分野での活用が期待されている。日東電工は、Bend Labsを買収することで、Bend Labsが培ってきたセンサデバイス技術と日東電工の強みを融合、次世代技術や製品を開発すると共に、センサより取得したデータを活用した新規ビジネスなどによる更なる事業成長を目指す。

④サンケン電気がTMRセンサーの米国Crocus Technology International Corporationの株式取得(子会社化)(2023年10月)

概要

 サンケン電気㈱(東証PRM6707)は、産業用、車載用、民生用電子機器の製造・設計者向けに先進的なTMR(トンネル磁気抵抗)センサー技術を提供するCrocus Technology International Corporationの株式を取得し子会社化。

狙い

 Crocus Technology Internationaは、先進的なTMRセンサー技術における世界的なリーディングカンパニー。サンケン電気は、Crocus Technology Internationaを買収することで、e-モビリティ、クリーンエネルギー、オートメーションなど、高成長アプリケーションに適した200を超える特許に基づく革新的な技術と製品の拡充が可能となり、TMRロードマップの強化と磁気センサーにおけるリーダーシップをさらに強化し、より広範で差別化された製品の提供を実現させる。

⑤ミネベアミツミが温度センサの㈱芝浦電子の株式取得(子会社化)(2025年8月)(予定)

概要

 ミネベアミツミ㈱(東証PRM6479)は、サーミスタ、温度・湿度・風速センサ等の製造販売を手掛ける㈱芝浦電子の株式を取得し子会社化(予定)。

狙い

 芝浦電子は、サーミスタ技術を中核とする半導体部品並びに、それらを応用した各種製品(温度センサ、湿度センサ、湿度計、温度制御器、温度記録計、風速計、湿度計測装置)の製造販売を主な事業としている。ミネベアミツミは、芝浦電子を買収することで、芝浦電子の温度センサ技術とミネベアミツミのモーター、半導体、コネクタ等の電子部品技術を融合、製品開発力を強化する。

所感

 センサ業界における、日本の上場企業が関わるM&A・アライアンスは、「技術や開発機能の取り込み」や「長期視点での垂直統合」、を重視する傾向が見られる。また、国内外を問わず、スタートアップ・ベンチャー企業の買収・出資等も積極的に行われているのが特徴的である。センサ業界におけるM&A・アライアンスの成否は、キーデバイスであるが故に、その後の各社の製品競争力に大きな影響を与える可能性がある。また、時に買収金額が跳ね上がることも予想されるため、失敗が許されない投資とも言える。次世代製品・サービス創造のカギを握るセンサ業界のM&A動向から目が離せない。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務

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