概要
HYUGA PRIMARY CARE㈱(東証GRT7133)は、2024年6月26日、事業計画及び成長可能性に関する事項を発表した。
事業内容
- 在宅訪問薬局事業:在宅医療実施医療機関及び門前医療機関の発行する処方箋に基づき患者に医薬品の調剤を行う在宅訪問薬局事業を営んでおり、「きらり薬局」の屋号のもと、主要出店エリアである福岡市近郊を中心にした西日本で29店舗、横浜市近郊及び千葉市近郊を中心とした東日本で15店舗を展開。具体的な業務として、通院の困難な在宅療養患者に対して薬剤師が患者宅を定期訪問し、訪問結果を処方医・ケアマネジャーへ報告、患者の状況に応じて処方医に新たな服薬提案を実施する。「地域包括ケアシステム」の拡大及び在宅医療の推進に着目し、高齢者介護施設の多い地域において「在宅訪問型」の出店に注力しており、特に特定施設、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅及びグループホームとの連携を重視した店舗展開を推進。売上構成は、売上の大半が外来調剤収入である従来の門前薬局と異なり、外来調剤収入が約40%であるのに対し、在宅訪問収入の比率が売上全体の約60%を占める。
- きらりプライム事業:中小薬局事業者に対して在宅訪問薬局運営ノウハウの提供(定期セミナーの開催)、自社開発の在宅訪問支援情報システムの貸与、人材・営業(個人患者、介護施設の開拓)の支援及び実地による教育を提供。全国1,870店舗の事業者が加盟。
- プライマリケアホーム事業:定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを行う住宅型有料老人ホームを福岡県春日市に「プライマリケアホームひゅうが春日ちくし台」及び福岡市に「プライマリケアホームひゅうが博多麦野」を開設し運営。
- その他の事業(タイサポ事業及びICT事業):タイサポ事業は、同社グループが運営する介護施設検索サイト等を通じて、退院患者に介護施設等の施設を紹介するサービスを提供。ICT事業は、入居者の健康状態を自動的に把握するウエアラブルウォッチなどの福祉貸与商品を開発、販売。
強み
- 高い参入障壁:在宅訪問薬局事業において、従来型調剤薬局が在宅薬局事業に新規参⼊する場合に以下の参入障壁がある。ドミナント型多店舗展開によるノウハウ蓄積が必須となる運営障壁、門前店舗資産の稼働率低下リスクを許容する必要がある店舗障壁、門前店舗とは異なるタイプの薬剤師採用が必要となる人材障壁。従来型の調剤薬局から在宅訪問薬局への本格転換には運営面、店舗面、人材面で高い参入障壁が存在し、これらの克服には相応の時間とコストを要する可能性が高い。
- 立地の非制約:外来患者の来店が期待できる医療機関近辺に出店する必要がある門前薬局では競合薬局と立地が近接するケースが多く、立地が重要であるため出店コストが高くなる傾向。対して、同社が展開する在宅訪問薬局では、薬剤師が患者宅を訪問するため、出店要件がない。また、半径3.5kmのドミナント方式追求で高い訪問効率を実現し、通院困難な高齢者施設入居者との⾧期的提携が可能。
- 調剤報酬点数:在宅訪問調剤は従来型に比べて報酬点数はおよそ倍。その分、業務負担はあるがビジネスチャンスは拡大。表裏一体で、患者との人的繋がりは強固となり、⾧期契約締結の可能性は高い。 既存の介護施設と違い:プライマリケアホーム事業において、入居に伴う費用(ホテルコスト)負担を軽減することで、介護度が高くなるとその分費用負担額が増加してもトータルの費用は大きく変化することがない。また、24時間体制の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービス」を提供と、ICTによる業務効率化により従来型の有料老人ホームでは困難であった幅広い医療ニーズへの対応が可能。
中期経営計画
2026年3月期の数値目標は、売上高11,000百万円以上(2024年3月期実績8,285百万円)、経常利益1,300百万円以上(同716百万円)、とした。
リスク
- 同社では業務の特性上、患者の病歴及び薬歴等の個人情報を取り扱っているため、これらの個人情報が漏洩した場合には、一般的な個人情報の漏洩と比較して、より多額の賠償責任が生じる可能性がある。
- 在宅訪問ノウハウを有するきらりプライム事業に類する新規参入事業者の発生により競争が激化した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性がある。
- 想定を超える急激なユーザー数及びアクセス数の増加、情報技術等の急速な進歩に伴い、予定していないハードウエア、ソフトウエアへの投資等が必要となった場合、業績に影響を及ぼす可能性がある。
- 同社は在宅訪問薬局事業における薬剤師、プライマリケアホーム事業における看護師、介護福祉士、ケアプラン事業における介護支援専門員(ケアマネジャー)など専門資格を有した人材を必要としているだけでなく、きらりプライム事業、タイサポ事業の営業人材、ITシステム開発エンジニアなど資格保有者以外の事業を拡大させるための人材を採用、育成していく必要がある。人材の確保が計画どおりに進まなかった場合、又は育成が計画どおりに進まず、あるいは重要な人材が社外に流出した場合には、事業拡大の制約要因が生じ、同社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がある。
所感
同社は、在宅医療介護時代に対応した地域包括ケアの運営・仕組みを提供するプラットフォーマー在宅医療/地域包括ケアの重要なインフラ構築を目指している。同社は、2024年1月に同社運営のプライマリケアホーム2施設を保有するMedical Mind社の株式を取得し完全子会社化している。施設運営と施設保有の一体化により、機動的かつ効率的な事業運営を狙いとしており、企業価値向上のためのM&Aにも取り組んでいる。同社の今後の取り組みが期待される。
- 挑戦度☆☆
- 戦略度☆☆☆
- 期待度☆☆
以上