東宝|決断の事業ポートフォリオ羅針盤(2025年)

概要

 東宝㈱(東証PRM9602、2025年2月期純資産494,815百万円、総資産653,068百万円、営業収入313,171百万円、営業利益64,684百万円)のセグメント情報を元に、同社の事業ポートフォリオの最適化について検討する。

東宝のセグメント別事業内容
  • 映画事業:映画館への配給、劇場用映画の国内配信、映画館の経営、アニメコンテンツの利用、パッケージの販売、映像作品等に係る美術製作等。
  • 演劇事業:演劇の製作・興行。
  • 不動産事業:不動産の賃貸、道路の維持管理・清掃等、不動産の保守・管理等。
東宝のセグメント別業績
  • 映画事業は、セグメント利益500億円を叩き出す、同社の中核事業。また、映画事業の資産利益率は28.3%、演劇事業同32.2%と、ソフトビジネス中心の映画・演劇事業の資産利益率は総じて高い。不動産事業は、不動産賃貸、道路舗装、清掃等の複数事業を含んでおり、各事業の事業特性に応じて資産利益率は髙安まちまちの状況とみられる。 
注目セグメント①映画事業
  • 映画「ゴジラ-1.0」米国アカデミー賞受賞、アニメ「呪術廻戦」全世界的大ヒット等、業績好調。企画&IPをあらゆる価値の源泉とし、中でもアニメーションを成長ドライバーに据える方針継続。
  • 過去3年間で、デジタルプロモーション企業、アニメ制作会社、映画マーケティング企業、アニメスタジオ、映像制作プロダクション、米国アニメ配給会社等を相次いで買収するなど、M&Aによるグロース加速。
  • 2026年2月期より、映画事業セグメントを、「映画事業」、「IP・アニメ事業」の2セグメントに分割。
  • 今後は、コンテンツ・IP、アニメ、海外、という切り口から、各種施策を強力に推し進めるとみられ、特に、コンテンツ・IP強化のためのM&A・戦略出資等に1,000億円を投入見通し。制作スタジオ、ゲーム等他社との戦略的アライアンス等が大いに注目される。
注目セグメント②不動産事業
  • 持分法適用会社であった㈱東京楽天地を子会社化。映画等の分野で更なる相乗効果を狙う。
  • 今後は、「帝劇ビル」の再開発に加え、物件ポートフォリオの見直し・入れ替え・売却等を進める見通し。
  • 同社子会社で道路事業を手掛けるスバル興業㈱(東証STD9632)の、同社グループ内における存在意義が不透明。スバル興業は、劇場・映画館事業からの多角化の一環として道路事業に進出し、現在に至るが、もはや同社グループ内におけるシナジー効果は限定的とみられる。同社が掲げる、コンテンツ・IP強化や「TOHO-ONEプロジェクト」とも程遠い。今後、スバル興業の他社とのアライアンスについても要注目。
所感

 同社は、「企画&IP をあらゆる価値の源泉として、その中でもアニメーションを成長ドライバーにし、デジタルの力で時間・空間・言語を超え、海外での飛躍的成長を実現する」ことを目指し、特に、現行中計では、「人材」、「コンテンツ・IP」、「デジタル」、「海外」、の4点を重点ポイントに据えている。足元株価は好調に推移しており、同社の経営戦略は市場から高く評価されている。今後、一歩踏み込んだポートフォリオ改革を断行し、世界に向けて更なる飛躍を遂げることができるか、同社の今後の挑戦が大いに注目される。

以上

株価算定・企業価値評価で全国対応の三澤公認会計士事務所

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